アキレスと亀(2008年、日本) ―7.0点。かくして、アキレスは亀を追い越した。

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アキレスと亀(2008年)
監督・脚本・編集 北野武
主演 ビートたけし/樋口可南子/柳 憂怜/麻生久美子
中尾 彬/伊武雅刀/大杉 漣/筒井真理子/吉岡澪皇(子役)/円城寺あや/徳永えり/大森南朋…

【点数】
★★★★★★★☆☆☆ / 7.0点

―俺たち、終わっちゃったのかな?
―バカヤロウ、まだ、始まってねえよ。

この名台詞を思い出してしまった。そう、世界のキタノ最新作『アキレスと亀』。言わずとしれたベネチア映画祭コンペティション部門出品作。グランプリを受賞した『HANA-BI』(98年)から10年、世界から数々の絶賛と受賞を受けてきたキタノが、満を持して送り出した期待作。コアなキタニストである私は、公開するや否や、テアトル新宿に足を運んだ。

アートの世界に生きる人間の生き様を、リアルでシュールなユーモアを交えて描いた傑作。売れない絵描きの波乱万丈の人生を、日本の古典映画のフォーマットに沿って展開する。無駄なシーンはあまりなく、ストーリーはトントン拍子に進む。無駄な遊びを入れるキタノにしては、かなりガチで作った印象あり。完成度はかなり高い。

しかし、これ、本当に残酷な映画だ。アーティストとしての才能をとことん認められなかった男の挫折だらけの物語。暴力描写は陰を潜めているものの、過酷な現実に直面した人間がトントン拍子に死んでいく。彼の周りの人物は、誰もハッピーになっていない。

「飢えたアフリカの貧民に、ピカソとおにぎりを差し出したとしよう。一体、だれがピカソを選ぶのか」。こんなことを、主人公・マチスが通う美術学校の学生が問いかけていた。アートの先にあるものは、死か、芸術か。

「アートとはなんなのか。」

その問いに、アートで成功した人間も答えることができない。そうとも、これは、一部の批評家だけの評価を受けるだけの売れない監督だった北野武の物語なのである。

『ソナチネ』(93年)のような突然の死、『みんな~やってるか!』(95年)ばりの即興的なユーモア、そして、『HANA-BI』が描く夫婦の姿と『キッズ・リターン』(96年)にある、希望。

北野武は終わってしまったのだろうか。否、まだ始まっていない。残酷な現実を一周した後の希望がこの作品にはある。

かくして、アキレスは亀を追い越した。

Written by Kojiroh

※引用:アキレスと亀 北野武|世界の始まりとハードボイルド

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