『四川のうた』(2008年 中国・日本) ―5.0点。子守うた的長回し

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『四川のうた』2008年 中国・日本
監督・脚本・プロデューサー:ジャ・ジャンクー
出演:ジョアン・チェン、リュイ・リービン、チャン・タオ 他

【点数】
★★★★★☆☆☆☆☆ / 5.0点

「するべきことがあれば、老けるのも遅い」と、四川省・成都に位置する巨大国営工場「420工場」の元女性労働者は語る。工場は2007年に閉鎖され、働く人々は散りゆき、栄光の時代の思い出が反芻される。

ベネチア金獅子賞受賞作『長江哀歌』(06年)で名高いジャ・ジャンクー監督による中国歴史ドキュメンタリー映画である。50年に渡る中国の国営工場の繁栄と衰退の過程を、過去~現在に渡る重要人物のインタビューと共に鮮明に描いた。

オープニングでは燃える鉄を機械で打ちつける人々の姿を鮮明に映す。当時の活気と栄光を語る初老の老人、老婆、職場での恋模様を淡々と語る420工場のアイドル、人々の憧れであった過去、そして思い出が蘇る。その活気とは対極に、現在の廃墟と化したがらんどうの工場と近代化した中国、そして老いた労働者の姿を、「うた」を交え、時代の激動を呼び起こす。本物のインタビューかと思わせる出演人も主要4人の人物は実は俳優と女優だ。演じている者と本当の生き証人を交えて歴史を再現する凝った作りである。特に初老の労働者たちの表情に刻まれた皺は、その歴史を物語っているように映る。

さらに、本作を一番引き立てているのは、「うた」も含めた音楽の起用であろう。高度成長した中国の構造ビル群と共に台湾のDJ・林強(Lim Giong)によるハウス~ラウンジ系の電子音楽が流れ、現代の近代化を代弁する。見所満載、歴史も勉強、林強の音楽が流れるラストはクラブにいるような気分に。さすがカルト映画の雄・オフィス北野配給作だ。

と言いつつも、やはり、ちょっと長すぎる。2時間もいらない。監督の自国の問題に対する熱意はわかるが、1時間半で十分。おばちゃんが淡々延々と過去を語るシーンで、まぶたがどんどん重くなってしまった。歴史は深く偉大なのだろう。でも、眠く、観客の眠りの方が深くもなりうる。

今振り返ってみても、実際に自分の目で中国大陸の成長性を感じた人間ではないと、いまいち深みがなく共感性の低い次元の作品になってしまうのだろうな。中国の市場の現在を知らないと、おそらく子守うたにしかならない映画でしょう。そう、過去の自分を含めてね。

(Written by Kojiroh)
※過去、2009年春に執筆したものを加筆修正

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