レッドクリフ PART1(2008年、中国) ―4.0点。巨匠の大作と駄作

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『レッドクリフPART1』
監督 呉宇森(ジョン・ウー)
出演 梁朝偉(トニー・レオン)、金城武、
張豊毅(チャン・フォンイー)、張震(チャン・チェン)
趙薇(ヴィッキー・チャオ)、胡軍(フー・ジュン)
中村獅童、林志玲(リン・チーリン)

【点数】
★★★★☆☆☆☆☆☆ / 4.0点

巨匠とは、年を重ねると、
自分の国の歴史を描きたくなるものなのか。

黒澤明の『乱』(85年)、マイケル・チミノの『天国の門』(80年)、マーティン・スコセッシの『ギャングオブニューヨーク』(2002年)など、いずれも巨額の制作費と長期の撮影期間を費やし作り上げた、作家人生をかけた歴史大作である。

今作もまさにその領分か、アクション映画の巨匠ジョン・ウー監督の『レッドクリフ』ねえ。制作費100億をかけて三国志の歴史的大戦を描く大作である。二丁拳銃や銃を投げ捨てるガンアクションで名高いウー監督がついに中国の歴史に足を踏み入れることになったという展開のようだ。豪華な舞台、争い、陰謀、愛憎など大作には欠かせないキーをちりばめ、大スペクタクル歴史アクションが展開される。飛び交う弓、緻密な戦略による罠、確かに迫力満載で、とってもエキサイティングな作品だ。

でも、なんだろう、どこか過剰にゲーム的に感じてしまう。暴力シーンも中途半端で当たり障りよく、槍で刺される兵士はグロテスクには死んでいかない。キレイな形でしか死なず、リアリズムの排除による暴力のエンタメでしかないように思える。

そして男女関係やストーリー展開もB級で単なる一般的歴史叙述にしか過ぎず、そこに独自的解釈を感じられない。その反面、セットやCGに一流演技陣と豪華贅沢三昧。弓での戦闘シーンなど圧巻であるが、ウー監督が多大な影響を受けている黒澤作品の中国版CG版焼直し観が否めず。

とてもではないが、金城武を初めとした演技陣に、ロケ撮影で資金に苦しみ作り上げた『乱』の仲代達也のような凄みはなく、それは配給会社を破綻に追い込んだ『天国の門』や、興商収入に苦しんだ『ギャングオブニューヨーク』と比べても同様である。それは背景として、『レッドクリフ』は過酷なバックグラウンドを持った作品でないからか。危機感や緊張感を含んだ映像的凄みはない。どこか浅いのだ。

これで国内総員100万人突破とは、まさに、スポンサーであるエイベックス(Avex)の宣伝の巧みさか。一作品5時間だから、PART1とPART2の二つに分かれているなんて、なんだか二度手間に感じてしまう。作家性を貫いたベルイマンの5時間の大作『ファニーとアレクサンデル』(84年)のような類の映画に失礼だよね。商業主義臭がぷんぷん。

そして個人的にも中国の歴史ものにはまったく興味がないのです。

ということで、私はPART1でおなか一杯。

(Written by Kojiroh)
※過去、2008年秋に執筆したものを加筆修正

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