『キック・アス』(2010年、米・英) ―8.5点。今、問われる新しいヒーローの姿。

キック・アス DVD
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『キック・アス』(2010年、アメリカ、イギリス)
監督: マシュー・ヴォーン
出演: アーロン・ジョンソン, クロエ・グレース・モレッツ, クリストファー・ミンツ=プラッセ, ニコラス・ケイジ

【点数】
★★★★★★★★☆ / 8.5点

ブラッドピット製作、マシュー・ヴォーン監督で、全米No.1で話題のバイオレンス・アクション・コメディ。なるほど、「キックアス?」なんだそれ?聞いたことないぞ。

最初は一体どんな映画なのかと思ったが、突如現れた謎のヒーロー映画として、コアな映画マニアを唸らせている様子。マニアのみならず各方面でも絶賛され初めている傑作映画とのことで、自称シネフィルの僕も見ないわけにはいかん。

というわけで見に行った。一時間前に会場に行ったが、満席で立ち見の可能性があると告げられる。なるほど、この映画はシネコンなどでは上映されてないが、口コミなどでかなり人気出てきているようだった。前売り券は売り切れていたようにも記憶している。そんなに面白いのかと期待が高まる。

さて、前置きが色々と長くなったが、2時間のこの映画、結論から言うと、冒頭から超ハイスピードで、終わりまでテンションMaxな『キックアス』ワールドに釘付けになった。

「なんだ、この映画!?」という衝撃があった。よく出来た映画というだけでなく、エキサイティングなアクションも楽しんだし、盛大に笑ったし、強烈にギャクが利いた映画でもある。それにしても劇場映画でこんなに笑ったのは個人的にも久しぶりだったが、単に笑っただけではない。この映画の世界に、冒頭からものすごいテンションで激しく深く引きずり込まれて、見終わった後には、何かが胸に突き刺さり、感慨深い気分にもさせられた。この感覚は一体なんだろう。

「正義の心で悪をKILL」という、日本ではやたらと単純明快でくだらないキャッチコピーがつけられて宣伝されているが、この映画はそんなに単純な映画ではない。何か頭の深い部分に引っかかる、この映画とこの物語。

ちなみに『キックアス』を簡単にストーリーテラーすると、モテなくてダサいアメリカの青年が日常を変える為に、ネットで奮起してコスチュームを買ってヒーローを目指すという話。Amazonで90$ぐらいのコスチュームをカートに入れて買うという単純明快、くだらなさ満載なシーンまで忠実に再現していて笑えてしまう。ふざけたネタなんだけど、そこにネット上とリアルのやりとりを現実感たっぷりに描くことで、自分でもできそうな、誰か本当にやってそうな、そう感じさせるリアリティがある。そこにリアリティがあることが、笑えるんだ。ブラックなんだけどね。コミック的だが、そうしたネット世界のリアルを交えている。きっとそこが通常のヒーローファンタジーとは一線を脱している点だ。

偶然的に生まれるヒーロー物語、その内面、背後にいる人物の描写が、実は『キック・アス』が強く訴えかけていることだ。現実のヒーロー像の形成とその背景の描き方が、非常にメッセージ性が強くて、それをブラックユーモアとバイオレンスで盛り上げている異質なコミックヒーロームービーなわけです。簡単に一言でいうと、ヒーローがヒーローになれるのは、たまたま、そしてそのたまたまに乗っかって政治的に利用した人物や、自らの利害のために持ち上げた人々がいるという皮肉なのだ。

そんなテーマをファンタジーチックな映画に輸入しようという壮大な挑戦、それが『キックアス』だったのだろう。だからなのか、本映画の随所にマシュー・ヴォーン監督の強い拘りを感じる。この監督のことはコマーシャルな宣伝では取り上げていないが、分かるヒトには、監督の作品にかける想いがビンビン伝わるだろう。

例えば、映像感覚も少し白飛びしていて、ハリウッドぽさがない。後々調べてみると、カナダとイギリスで撮影されている。作家性や拘りを重視するためにハリウッドスタイルから抜けて、暴力描写を規制したがるスポンサーにも頼らず自主制作の形式を取っているようだ。そのため、子供向けに作られていそうで、残酷描写が多かったり、くだらないシモネタが多かったり、ワンシーンワンシーンに遊びがある。決戦前に、『続・夕陽のガンマン』のエンニヤモリコーネの曲が流れたり、マトリックス顔負けの激しいアクション、ゲーム感覚的な演出、スローモーション多様したド派手なシーンを見せたり、いや盛り沢山です。下らなくも、作品全般に作家性が素晴らしいよ。

さて、『キック・アス』はバカな映画だ。しかし、胸に刺さるものがある。シュールでブラックなユーモアと、妙な現実感。SFやファンタジーの世界から、突如、日常の現実に引き戻す。それが通常のエンタメファンタジーとの違いであり、本作が『ダークナイト』と比較されるのもそれが所以。善悪の視点や、典型的なベタな善悪構造の展開を破壊してしまうヒーローの姿、本当に面白い視点で描かれている。iphoneを利用したりyoutubeを利用したり、現在、今でも誰かがこの映画の主人公と同じような行動を取れば実現するんじゃないか。そんな現実との近い距離感、そして残酷さを感じさせる作品なんだ。

ベタで、くだらなくて、馬鹿馬鹿してくも、心の深い部分に突き刺さってくる。不思議な映画だ。

新しい時代の新しい形のヒーロー像。

デビットフュンチャーの『ソーシャルネットワーク』といい、オタクが英雄になる構造の映画が流行るのかもしれない。「どういう人物が今の時代のヒーローになるのか?」この問いかけが、もしかすると、今の時代の問われているテーマなのかもしれない。自分は実力がなくても時代の流れやトレンド、新しいテクノロジーをうまく利用して、最後は運で勝つ。漫画の『ラッキーマン』にも似ているね。それが今の時代、ヒーローになる人間で、それ以上でも以下でもない。なんだろう、世の中なんて、その程度のもんなのさ。

(Written by kojiroh)
引用:『キック・アス』、新しいヒーロー像の解釈

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2 thoughts on “『キック・アス』(2010年、米・英) ―8.5点。今、問われる新しいヒーローの姿。

  1. こんばんは 奥深い洞察感服いたします 作品を支配してる暗さありますよね
    不謹慎ながら笑ったのはヒーローにコスプレした兄ちゃんを殺害シーン
    コスプレも考えてしないとね

    1. お返事遅れてごめんなさい。。
      いえいえ、しかし笑える映画ながら通常とは違う空気観が新鮮な傑作でした。
      あ、僕もコスプレ殺害シーンは爆笑しましたw
      あと最初にナイフで刺されたあとに車にはねらるシーンなども、笑のアイディア満載でしたね。

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