『珈琲時光』(2003年、台湾=日本) 103min
監督:侯孝賢
出演:一青窈、浅野忠信、小林稔侍、余貴美子、萩原聖人
【点数】
★★★★★★☆☆☆☆ / 6.0点
一青窈、浅野忠信、主演。台湾の名匠、侯孝賢(ホウ・シャウシェン)監督が贈るあまりにも豪華に思える日本を舞台にした台湾合作映画。監督自信がリスペクトを贈る小津安二郎へのオマージュを込めたコアな作品が本作『珈琲時光』である。
『東京物語』を意識したローアングル、そしてワンシーンをほとんどカットせずに長回しする映像感覚が印象的で、さらに御茶ノ水や有楽町など日本の都内を舞台にしてJR山手線など東京の電車を美しく描いている点は圧巻。
台湾人でもある一青窈の初主演でもあり、東京のわびしいアパートで生活しているシーンや、フリーライターとして仕事っぷりなど、生活を感じられて親しみを持てて、いい味を出している。浅野忠信とのコラボレーションもいい。古本屋での淡々としている日常的な会話や、マックブックでイラストを見せるシーン、そして珈琲を飲む。東京の都会人の洗練された日常、とでも呼べるモノを醸し出している。長くて単調で退屈とも言えるが、構図や会話の間など、即興的なようでよく練られていて興味深いシーンの連続である。
ワンシーンが10分にも及び、会話の間や無言のシーンでもカットせずに長回しする映像感覚は、独自の緊張感があり、退屈でもあるのだが病み付きになるような温度がある。創意工夫の見られる電車のシーンの演出などは、監督の技巧であり、ここまで日本の電車を芸術的に描いた作品はなかなかないのではないかと思う。
決して一般受けはするような作品ではないが、カルト的な中毒性のある作品である。このラインナップはかなり豪華なので、ファンの人なら一見の価値ありだろう。また、台湾と日本との繋がりや親しみさえも感じられる。そう、日本と台湾との距離感のようなものを描いているとも言える。それの近さがなんだか心地いい。
しかし、それ以外の人には、見るのは辛いかもしれない。物語として見るにはなかなか難解な映画でもあるので、雰囲気や世界観、映像美を楽しむ、映画というよりある種の映像作品として見るべきなのかもしれない。
(Written by kojiroh)