『恋する惑星』(1994年、香港) ―6.5点。スタイリッシュ香港Love


『恋する惑星』(1994年、香港) 100min
監督・脚本:ウォン・カーウァイ
出演:トニーレオン、フェイウォン、金城武、ブリジット・リン、チャウ・カーリン
【点数】
★★★★★★☆☆☆ / 6.5点

フェイウォン、トニーレオン、金城武、ブリジット・リン。今振り返ると超豪華なキャスティング。若き日の彼らの初期の時代の出世作といえば、香港のウォン・カーウェイ監督が送る本作『恋する惑星』である。クエンティン・タランティーノが絶賛して、アメリカでの配給権を確保したという有名作でもある。

原題は重慶森林、Chungking Express。香港の安宿街、九龍、尖沙咀にある雑居ビル・重慶大厦(チョンキンマンション)を舞台に、4人の男女の恋愛模様を描いた香港独自のラブストーリー。


“雑踏ですれ違う見知らぬ人々の中に、将来の恋人がいるかもしれない”
センスのいいキザなナレーションで始まる。2つのエピソードから成り立ち、男性側の語り口によって、失恋した男性の切なさや淋しさ、そこから恋愛を再開する青春のほろ苦さをも感じさせるストーリーだ。時にそれが、あまりにも幼稚で漫画のような展開もあるのだが、まあこのスタイリッシュなカメラワークと俳優人の魅力を映し出したセンスに免じて許してしまえる。

ラフなドキュメンタリーのようなタッチな映像で切り貼りされた本作は、脚本的にも決して完成度が高いとは言えない映画ではある。しかし、なぜか中毒性がある。幼稚な失恋と恋、それを彩るステキなシーンが満載なのだ。

パイナップルを食べる金城武、「Do you like Pinapple?」と英語、日本語、広東語、北京語の四ヶ国語で話しかけるシーンはユーモラスでもあり印象深い。フェイウォンが自身が歌う曲『夢中人』と共にトニーレオンの部屋を改装するシーンのスピーディーなカットも若々しさが溢れて素晴らしい。無邪気なフェイウォンの笑顔も美しい。

特に、食事のシーンが可笑しいぐらいにどこか不思議だ。金城武の警官の役は、失恋を境に缶詰を買い込み、恋を忘れるためにバカ食いする。そしてホテルに泊まっても彼女の分まで食べる。とにかくよく食べる。無邪気に暴食する姿は滑稽でもあった。

その他でも、ドラックディーラーを演じるブリジット・リンの役どころでも、香港の犯罪模様が垣間見えたり、人間模様が香港独自であり、フェイウォンの輝くように明るさ、バカっぽさ、「夢のカリフォルニア」が繰り返し流れる光景も、本作への中毒性を高める一員なのだろう。

当時の香港の現代人を描いた秀逸でハイセンスな作品であることは間違いない。香港からカリフォルニアへ、か。夢のある物語ではあった。

Written by Kojiroh

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