『六月の蛇』(2002年 日本) ―8.0点。青いモノクロが映す官能・塚本ワールド

『六月の蛇』(2002年 日本) 77min
監督・製作・脚本・美術・撮影・編集: 塚本晋也
音楽: 石川忠
出演: 黒沢あすか、塚本晋也、神足裕司、寺島進、田口トモロヲ

【点数】
★★★★★★★★☆☆ / 8.0点

2002年の第59回ベネチア国際映画祭で審査員特別大賞を受賞した塚本晋也監督作・「六月の蛇」。
ブルー基調のモノトーンで撮影されたこの作品は低予算で作られた安っぽさを感じなくもないが、独特な映像感覚と細部に至る拘りを感じ、塚本ワールド全快、という印象。77分と比較的、短い作品なのだが、冒頭からぐいぐい引き込まれてしまった。

さて、監督・製作・脚本・美術・撮影・編集までもをすべて自分でこなすことによって生まれる塚本晋也の世界観は素晴らしい。俳優としても三池監督の『殺し屋1』などで見せたような個性的な演技がこれまた渋い。世界的にもタランティーノやギャスパー・ノエなど名だたる有名監督が塚本フリークを公言しているほど、国際的な評価の高い日本人監督の一人である。

日本でも北野武など、自分で監督と脚本、さらに編集も自分でするワンマンな監督が多いが、その自分で全部やるという非ハリウッド的なスタイルは独自の映像世界を作り上げる。ロバートロドリゲスもそうだが、監督も編集も自分でやる多才な監督の生み出す世界はやはり味わいがある。

それはさておき、本作のあらすじは、心の電話相談室に務める主人公・りん子(黒沢あすか)は、かつて自殺予告の電話をしてきた男(塚本晋也)に隠し撮りされ、それをネタに性的な脅迫を受けるが、それを機に自らの性の内面に目覚め、やがては潔癖症の夫・重彦(神足裕司)をも巻き込んでいく…。

現代人の希薄な人間関係をあらわにし、それを性的な衝動を駆り立てることで、理性的な都会人の本性をむきだしにするような内容だ。盗撮、オナニー、大人のおもちゃなど、性的な内容を多く含むが、いやらしさというよりも人間の本質を描いているように思えた。都会の淡々とた毎日とデザイナーズマンションでの生活ですっかり希薄になった欲望、コミュニケーション。それを塚本晋也の電話がむきだしにする。その様子は見ていて爽快感もあり、最後にはユーモアさえも感じられる。


そして、黒沢あすかの個性的な演技がまたよい。ショートヘアーでメガネの地味な容貌での出演であるが、次第に妖艶になってゆき、最後には女に化ける。特に、声が美しい。電話での塚本晋也とのやりとりは圧巻のデキだと思った。

「修道女に乳がんが多い理由がわかるか?原因は禁欲なんだよ」
塚本晋也の熱のこもった台詞が妙に頭に残っている。

6月の蛇、か。梅雨の時期の雨とも絡めて、モヤモヤ、ムラムラする気持ちを繊細に描き、塚本晋也が暴力的な愛情で破壊してゆくのだ。SFチックなファンタジーな演出を一部交えて、無機質ながらも幻想的に描く。

黒いオイルを使った演出など、低予算ながらもアイディアが満載で見所のある映画だった。国際的にも塚本フリークを公言する有名監督が多い理由も頷ける一本だった。

Written by kojiroh

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