『ツリー・オブ・ライフ』(2011年、アメリカ)―6.0点。ショーン・ペンが苦悩するほど難解な(理解に苦しむ)映画

『ツリー・オブ・ライフ』(2011年、アメリカ) 138min
監督・脚本: テレンス・マリック
出演: ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステイン、フィオナ・ショウ、ハンター・マクラケン、ララミー・エップラー、タイ・シェリダン

【点数】
★★★★★★☆☆☆☆ / 6.0点

※リアルタイム映画批評

「現代、人々は強欲になるばかりだ。すぐに他人を支配しようとする」
ニューヨークの高層ビル郡の無機質なオフィスで、痩せほつれて苦悩の表情を浮かべるショーン・ペンの顔が忘れられない。この表情こそ、本作『ツリー・オブ・ライフ』の全てを物語っているのではないか。

2011年、今年のカンヌ映画祭グランプリを受賞した、寡作で知られるテレンス・マリック監督の久しぶりの作品なので傑作だと期待が高まっていた。

しかし、実際は絶賛とブーイングが巻き起こるような賛否両論の内容だった。ベールに包まれたその映画は一体、どのような作品なのかと筆者は期待を胸に新宿のミラノ座へと足を運んだ。

マリック監督自身が哲学者でもあるように、その思想と表現の真髄、集大成でもあるような本作は難解な映画としか言いようがない。映画批評を多くこなしてきた筆者でさえも、本作はあまりにも難解、というより実はデキの悪い映画なんじゃないかと疑うほど難しい。

そのテーマ性としてはSFの金字塔『2001年宇宙の旅』にも近い。『2001年』が宇宙旅と人類誕生の哲学的テーマを結びつけたように、マリック監督は人類誕生から至る広大な哲学的テーマを、普遍的な家族のストーリーで表現しようとするという試みが本作『ツリー・オブ・ライフ』なのだろうか。混ざるはずのないと思われた二つのテーマの融合を目指したその突拍子もない挑戦心には驚愕したが、嫌いじゃない。


ブラットピット扮する厳格な父の狂気的なしつけによる家族物語と、地球創成を示すようなCGによる隕石や恐竜の映像世界が、なぜか一つの映画の中で共存している。しかも地球創成シーンが30分にも及んだのではないかと思うほどに長い。この長さは一体、何を意味したのか。

この両者の関連性は一体、なんなのか。
詩的にナレーションが語られて、地球創造と神、信仰、家族、へと結びついているように思えるが、実際は何を表しているのかよく分からない。

確かに、部分的に観るとよくできている。ドキュメンタリータッチのような、ラース・フォン・トリアーのドグマ95的な手持ちカメラで追ってカットの激しい映像で一家庭に迫る。特に迫真の演技を見せるが淡々とした視点で描く手法は見事だ。子供の誕生、自我の目覚め、反抗期など、子供という存在に迫ろうとして、残酷な部分を含めて部分的にはよく描かれている。

そしてメッセージ性も強い。典型的なアメリカ人家庭で、勤めていながらもお金持ちを夢見て成功法則・自己啓発を学び、子供に金持ちになる方法を教え込むが空回りする父親・ブラットピットの姿は、現代の成功主義に溺れるアメリカ社会そのものへの皮肉であろう。

心に強く訴えかけてくる感情がある。社会的なメッセージ、強欲に溺れるアメリカそのものへの批判がある。

しかしそれでも筆者は、本作は失敗だと思う。
この映画は根本的な構成を間違えている。だからあまりにも分かりにくい。

―ツリー・オブ・ライフ、か。
人生の樹木。子と親、各々の人生は別物であるが、どんなにいがみ合ったり憎みあったりしていても、根本的な部分で木のように繋がっている、ということが言いたかったのだろうか。それにしても分からない。

CGのシーンなどの抽象的な概念を表す場面を排除して、普通の構成にナレーションを入れるぐらいにして100分ぐらいの映画に仕上げていれば、8点ぐらいは出せたと思うが、本作は監督の世界をあまりにもワガママな自己満足で完成させてしまっている。

メッセージ性のある作品なのだが、マリック監督自身が自分の表現衝動に強欲になりすぎてしまったんじゃないかな。

だが、こんなに考えさせられる映画は、前年度の『ブンミおじさんの森』以来、いや、それをも超える難解な映画だったかもしれない。

Written by kojiroh

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