『アウトレイジ』(2010年、日本)、―9.0点。新しい時代に送る映画


『アウトレイジ』(2010年、日本) 130min
監督・脚本・編集: 北野武
音楽:鈴木慶一
出演: ビートたけし、三浦友和、椎名桔平、加瀬 亮、國村 隼、杉本哲太、塚本高史、中野英雄、石橋蓮司、小日向文世、北村総一朗

【点数】
★★★★★★★★★☆ / 9.0点

冒頭から典型的な黒い車のヤクザ軍団。鈴木慶一の音楽、迫真の表情のアップ、黒い車と赤いランプが4台重なる独創的なシーン、渋い声の会話で始まるヤクザなバイオレンスエンターテイメント、そして怒涛の罵声と暴力。

北野武の最新作『アウトレイジ』はかつてないほどカッコよく、怒鳴りあいの役者合戦が展開されるエンタメ暴力劇だった。かつてこんなドキツイ暴力で、笑えるような楽しさを見せてくれる映画があっただろうか。それでいて北野武らしい遊びの映像アイディアも随所で見られる。キタニストにとってはお腹一杯の一作だ。

あらすじは単純で、巨大暴力団組織・山王会組長の関内(北村総一朗)が若頭の加藤(三浦友和)に、池元組の組長・池元(國村隼)に苦言を申し、村瀬(石橋蓮司)組と池元の関係が悪化し、配下である大友組の組長・大友(ビートたけし)にその厄介な仕事が任される。こうして、ヤクザ界の生き残りを賭けた戦争始まる…。

寡黙なたけし映画にしては珍しく、本作は会話も多く、一瞬のアクションシーンで、パッパと展開が進む。分かり安いベタな展開で紛争が起こり、広がり、黒幕の陰謀に翻弄されつつ破滅に向かう。

過去の名作『ソナチネ』にも似た展開だ。しかし、激しく、残酷で、逆に笑える展開の速いバイオレンスは、過去にはないエンタメ要素を感じる。花村萬月さんの『笑う山崎』にも通じる残酷で奇抜な殺し方がある。

出演者も今までの大杉蓮や寺島進などの常連・武軍団は息をひそめ、三浦友和、椎名桔平、加瀬亮、國村隼、石橋蓮司、小日向文世、杉本哲太、北村総一朗、塚本高史、中野英雄など、日本の超名脇役・準主役クラスの俳優たちが脇の脇まで集っている。こんなに個性的な顔ぶれが罵倒合戦をするファンにはたまらないラインナップだ。

「ぶち殺すぞコラ!」
「なめてんのかコラ!」
「俺たちはコケにされてんだぞ、お前らわかってんのかぁ!」

この罵倒の演技は病みつきになる中毒性がある。特に、椎名桔平と加瀬亮のキレのある演技には、なかなかシビれる。北村総一郎の会長役としての貫禄ある演技も悪い奴ながら圧巻。どこかカッコいい。

「指つめるのはいいから、金持ってこい」
「今の時代はね、金より、出世ですよ」

というような主張が誇張されていたのだが、その点が「ソナチネ」の時代の価値観とは変わっている。「3-4×10月」でもケジメとか仁義とか男の美学を主張していたのだが、今回登場するヤクザは仁や美学よりも、金や出世など合理的に悪さをしている。そして悪い奴が上にのし上がっている。この辺の描写が時代に移り変わりを表しているように筆者は感じた。

その他も、途上国の日本大使館ビジネスを展開したり、グローバル化の歪みを利用してヤクザな金儲けをするのだ。シャブよりカジノと株で金儲けする合理的で知的なインテリヤクザの登場など、ヤクザでも古い価値観は死んでいっているのかと思わされる。

しかし、これはもしかして、変わりゆく現代ヤクザだけではなく、たけし自身が深く関わる芸能界の現状を示唆しているのかもしれない。

たけしがデビュー作『その男、凶暴につき』から、ヤクザを描き続けている理由は、もしかするとその構造自体が、自信の属する芸能界と似ていることを訴えたかったのではないか。

だからこそ、この年齢になっても、これだけエネルギッシュで、暴力的で破壊的な映画を創れたのかもしれない。芸能界への不満の衝動が、たけしの創作活動の根源にあるのかもしれない。

特に近年、引退した島田紳助の事件に対して、たけしは苦言を吐いていた。新しい人をもっと起用して、古株を引退させないといけないと主張していた。しかし未だに古株がのさばっている現状の芸能界に呆れていたのだと思う。視聴率も下がって、質も下がって、にもかかわらず、ヤクザ体質は変わらない。

本作、『アウトレイジ』はそんな古い体制に対する強烈なメッセージなのだ。

古い人間、古い構造は死ぬべきだ。見ろよ、やくざの世界もこんなに変わってるぞ。芸能界よ、目を覚ませ。

そんなメッセージを、北野監督は、『アウトレイジ』を通じて訴えたかったのではないだろうか。だから、Outrage(侮辱・非道などに対する激怒)なのではないか。

非情なまでに古いタイプの人間が死に、古い構造が崩壊する。創造的破壊的現象を示唆する。

芸能会に蔓延るドン(老害)をぶっ殺せ!!
そして若者よ、新しい時代を築くのだ!!

Written by kojiroh

※引用元
アウトレイジ、新時代へ送る映画|世界の始まりとハードボイルド
http://blog.livedoor.jp/koji_roh/archives/4979821.html

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