『新宿インシデント』(2009年、香港・日本)―8.0点。ジャッキー・チェン×日本黒社会の黄金タッグ

『新宿インシデント』(2009年、香港・日本)119min
監督:イー・トンシン
脚本:イー・トンシン、チュン・ティンナム
出演者:ジャッキー・チェン、竹中直人、ダニエル・ウー、シュー・ジンレイ、加藤雅也、ファン・ビンビン、峰岸徹、澤田拳也、ジャック・カオ、ポール・チョン、ラム・シュ、長門裕之 etc

【点数】
★★★★★★★★☆☆ / 8.0点

『ワンナイト・イン・モンコック』の鬼才、イー・トンシン監督が構想に長年掛けて作り上げた傑作、『新宿インシデント』。ジャッキーチェンがシリアスな演技を見せる異色のジャッキー映画だ。文字通り、アジア1の歓楽街・新宿、歌舞伎町が舞台である。


1990年代初頭の日本。座礁した貨物船から逃亡する密入国者、鉄頭(ティエトウ)は、日本で消息を断った恋人の秀秀(シュシュ)を追いかけてきた。そして新宿・歌舞伎町へ赴き、弟分の阿傑(アージェ)と再会する。鉄頭と同様に密入国をした中国人たちで、小さな貸家で暮らし始める。違法な日払い労働や偽造カードの売買といった裏仕事をこなしていき、日本での身分を手に入れるべく生計を立てていく。日々警察沙汰と隣り合わせの裏仕事を積み重ね、鉄頭らは次第に歌舞伎町の中で勢力を拡大していくのだが…。

闇の権力が犯罪を呼び、そして暴力を呼ぶ。ジャッキーチェン主演ながらも異色なほど黒いシリアスなマフィア映画であった。パッケージの印象とは随分かけ離れた黒社会のやくざ映画でもある。

中国系の違法入国民がどのようにして日本で生きてゆくのか。その暮らしぶりがリアルに描かれていて興味深かった。中国マフィアの栄枯盛衰の物語であり、今までにあまり描かれることがなかった世界かもしれない。

甘栗屋をやりたい弟のためにやくざな仕事をして金を作り、安定した身分を得ようとする姿には、外国人マフィアに溢れる新宿歌舞伎町の現実の状況を鋭く描いているように思える。


出演陣も個性豊かで、竹中直人の中国語など、コアなファンにはたまらないシーンが満載。他にも北野武の『ブラザー』でもいい味を出していた加藤雅也が本作でも冴えている。関西弁のヤクザっぷりが妙に貫禄がありハマり役だ。

香港からもダニエル・ウーや、脇にもファン・ビンビンやラム・シューなど、個性溢れる顔ぶれである。香港系の大物映画人が日本とタッグを組んで作られているだけに熱を感じる。

メジャーな映画なように見えるが、腕の切断であったり、激しい暴力描写を含み、まったく明るい話ではない点が『ワンナイト・イン・モンコック』にも通じるものがある、どちらかというとアンダーグラウンドな作品ではあるが、魅力的な俳優人のまさかのコラボも観れる上に、物語としてもあまりスポットに当たらないような面白い内容であり、見所の多い一作であった。

今後もこうした日本に入ってくるチャイニーズ・マフィアの映画に期待したい。

Written by kojiroh

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