『エレクション -黒社会-』二部作 ―7.0点。香港黒社会の仁義なき戦い

『エレクション 黒社会』(2005年、香港) 85min
監督:ジョニー・トー
脚本:ヤウ・ナイホイ、イップ・ティンシン
出演:レオン・カーフェイ、サイモン・ヤム、ルイス・クー、 ニック・チョン, ラム・カートン, ラム・シュー

【点数】(二作合計)
★★★★★★★☆☆☆ / 7.0点

クエンティン・タランティーノも絶賛する香港の巨匠、ジョニー・トーによる香港版『グッド・フェローズ』、いや『仁義なき戦い』とも呼べるマフィア映画の傑作シリーズ。第一作目はカンヌ映画祭コンペ正式出展作品であり、返還により変わりゆく香港社会の裏社会での権力闘争を描くアクション・サスペンス。香港電影金像奨でも最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演男優賞(レオン・カーフェイ)を受賞。


2年ごとに変わる黒社会の会長を決める選挙(エレクション)によって泥沼化する抗争が描かれる。冷静なロク(サイモンヤム)と乱暴者のディー(レオン・カーフェイ)の二つの権力者による選挙劇というだけの単純な話であり、上映時間も85分と非常に短くまとまっている。

しかしながら登場人物も多く、香港映画の観たことのある面子が勢ぞろいしている点がファンとしては興味深い。サイモン・ヤムを始め、ニック・チョンやラム・カートン、ラム・シューまでジョニー・トー・ファミリー大集結といえるキャスティングだ。

『エレクション』ではジョニー・トーお得意のガンアクションかと思いきや、本作では十八番の銃撃戦は封じて、香港マフィア伝統の刃物での戦いが中心。しかしアクションシーンよりも暴力の中心は拷問や暗殺シーンが中心であり、その本作の全体に漂う異様な緊張感には息を呑む。

拉致されて木箱に入れられて崖から落とされるシーンなど、誰が敵になるのか、味方になるのか分からない展開には息を呑む。激しいアクションは息を潜めつつも、個人の抱く野望と殺意には目が離せない。『アウトレイジ』の元ネタにもなっていると思えるほど、人物が豊かで先が読めないヤクザたちの生き残り合戦だ。

ドンパチは息を潜め、動の映画ではなく、静の映画なのだが、だからこその緊張感と、人物の読めない行動による言動の迫力は素晴らしい。


特に一作目では、レオンカーウェイの怒鳴りっぷりは圧倒的迫力、ルイス・クーの知的なのだが残酷な暴力をものともしない冷酷さ、忠誠心の強いニック・チョンがレンゲを食べるシーンなど、見応えのある名シーンが多いのも見所だ。

さて、その『エレクション』の2年後の世界を描くのが、『エレクション 死の報復』であるが、劇場未公開になっていたりと、一般的な評価は、カンヌ映画祭の出品もあり、第一作の方が高い。

『エレクション 死の報復』(2006年、香港) 92min
監督:ジョニー・トー
脚本:ヤウ・ナイホイ、イップ・ティンシン
出演:ルイス・クー、サイモン・ヤム、マーク・チェン、ニック・チョン、チョン・シウファイ、ラム・シュー、ラム・カートン、ウォン・ティンラム、ヨウ・ヨン、タム・ビンマン、アンディ・オン、パン・ユートン

あらすじは、ロクが会長の座を手にしてから早くも2年の時が過ぎ、再び会長選挙の時期がやって来る。長老たちの本命はビジネスでの才覚を発揮し、みるみる頭角を現わしてきたジミー(ルイス・クー)。しかしジミーは大陸での事業拡大に関心が向いており、選挙には無頓着、その一方、すっかり権力の虜になったロクは、任期満了にもかかわらず会長の座に居座り続けようとするだが…。

ジョニー・トー本人も、本作の方が描きたい香港マフィア象があると述べているように、メッセージ性の強い作品になっている。香港と大陸の深センが舞台に描かれていたりと、現代の複雑な本土との事情を描いており、その土地柄が分かる人には興味深い描写が出てくる。

私は先にこちらの方を見てしまったので少しチンプンカンプンになってしまったが、前作よりもよりダークで残酷な拷問シーンが登場したりと、香港マフィアの変化を絶望的に描いているようにも感じる。


特にルイス・クーの人物描写が素晴らしい。クールでヤクザ業を引退してビジネス路線に移りたいと考え、子供は医者か弁護士にしたいと願うインテリヤクザであるが、変化に翻弄されてゆく姿は印象深い。

2作とも1時間半程度の作品なので、これはゴッドファーザーのように二つで一つとしてみるべき内容だなと思った。(私は2作目から見たので少し後悔している…)

2つとも同じテイストで楽しめるが、しかし個人的にはエレクション一作目の方が完成度が高く好きである。実験的で印象的なジョニー・トーらしい食事のシーンであったりと、いつもの娯楽作とは違うが、香港マフィアの歴史など、なかなか見所の多い傑作映画であることは間違いない。

派手なドンパチはなく、エンタメ性には乏しいカルト映画の要素が多い作品であるが、第三弾が出ることを期待したい香港ノワールの新領域とも呼べるシリーズである。

Written by kojiroh

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