『ワン・テイク・オンリー』(2001年、タイ) ―6.5点。オキサイド・パンの描く裏バンコク


『ワン・テイク・オンリー』(2001年、タイ) 90min
監督・原案・脚本・編集::オキサイド・パン
出演:パワリット・モングコンピシット、ワナチャダ・シワポーンチャイ

【点数】
★★★★★★☆☆☆ / 6.5点

サブタイトル、Bangkok for sale.

『レイン』と『the EYE【アイ】』で有名な香港出身ながらもタイを舞台に映画を作るオキサイド・パン監督の長編第二作。本作は兄弟ではなくオキサイドパン一人で手がけているためか作家性がよく現れている。

タイのストリートを舞台にした青春ドラマ。麻薬の売人と売春婦になった少女、彼らの悲劇をスタイリッシュな映像で鮮烈に描き出す。

本作は2002年のロッテルダム国際映画祭などに出展されたが、タイの犯罪事情をリアルに描きすぎた影響で、バンコクではしばらく2003年まで封印されていたというある意味、伝説の作品である。


『レイン』でも主演だったパワリット君が本作でも活躍。個人的に彼の演技はかなりクールで、ペラペラと喋る三枚目な役柄がなかなか見ごたえがあった。まだ幼いが母のために体を売るソムとの絡みもユーモアある演技を見せる。

安っぽいクラブミュージックが流れたり、妙にギクシャクしたストーリー進行、というより編集スタイルには、自主制作の匂いがぷんぷんするような作り。前作『レイン』ほど完成度が高くなく、編集で色々とごまかしているような素人っぽさも感じられる。


低所得者として売春や麻薬の売人などグレーな仕事をしてきた二人であったが、経済的自由を求めて大きな山に飛び込む羽目に…。

そんなにいい話ではないが、独自のユーモアのセンスが聞いていて、個人的には笑える物語だ。実験映画的なスタイルをとっており、主人公の妄想と現実が交錯する構成ながらも、そんなにしつこくないのがよいところだと思った。

一般的に評価されている作品ではないが、主役の二人のコンビがなかなか馬が合っていて、タイの文化を象徴するかのようなクラブミュージックが陽気に流れ、幼女売春、麻薬密売などの社会問題を映し出しつつも明るく楽観的な、これこそまさにタイ社会を象徴する映画ではないかと思い、楽しめる一本だった。

香港の『恋する惑星』をタイヴァージョンにしたかのような、香港出身のオキサイド・パンが本作が撮った意味を考えるにも見る価値のある映画であった。完成度が高くないが、なぜか愛着が持てる。

本作が再評価される日が来ると期待しよう。

Written by kojiroh

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