『花様年華』(2000年、香港=フランス) 98min
製作・監督・脚本:ウォン・カーウァイ
美術・編集・衣装:ウィリアム・チャン
音楽:マイケル・ガラッソ
撮影:クリストファー・ドイル、リー・ビンビン
出演: トニー・レオン, マギー・チャン, レベッカ・パン, ライ・チン
【点数】
★★★★★★★★☆☆ / 8.5点
英語のタイトルは、In the mood For Love。
『花様年華』(かようねんが)という、なんと読めばいいのか分からない本作は、カンヌ映画祭でトニーレオンが男優賞を受賞した『恋する惑星』のウォン・カーファイ監督による香港映画・不朽の名作。
さて舞台は1962年の香港。ジャーナリストのチャウは妻と共にあるアパートに引っ越してくる。その同じ日、隣の部屋にはチャン夫妻が引っ越して来た。チャウの妻とチャンの夫はであまり家におらず、二人はそれぞれの部屋に一人でいることが多く、お互いの妻と夫が浮気していることを察し、そこから二人の関係が始まってしまう…。
名作だと噂には聞いていた作品だったが、その世界観には圧倒された。香港だけの物語かと思えば、日本の貿易業の夫妻やシンガポール、さらにはカンボジア、アンコールへ。奇想天外にも思える不思議な世界が広がっていく様には魅了される。
「どちらが誘ったのかわからない。でも もう始まっている」
詩的でキザな台詞とジャンプカットのような早いカット回しでストーリーがポンポン進む。
特にすばらしいのは、『地球で最後のふたり』のクリストファー・ドイルの撮影による圧倒的映像美であろう。とにかくすごい小技の嵐。天井に上るタバコの煙のスローモーションだったり、食事のときのマスタードのズームであったり、実験的な映像美が凝縮されている。
その映像と共に流れるマイケル・ガラッソの音楽がまた素晴らしく、不思議な世界へ誘うかのように鳴り響く。ナット・キング・コールによる「キサス・キサス・キサス」など、意外な選曲が映像に溶け込み、しつこいぐらい同じ音楽を流すのは『恋する惑星』の「カリフォルニア」でも同様、しかし今回もまた中毒になるような使い方だ。香港なのになぜかラテンな曲調であり、アジアと西洋のテイストが融合している。本当に美しい作品だ。
特徴的な演出も冴えていて、トニーレオンの表情が渋い。美術も素晴らしく、とにもかくにも、本作はウォン・カーファイの世界観が爆発しているかのようだ。
特に動きがある作品ではなく、主役の二人の日常と生活、徐々に深まる関係とその末路を描いただけの作品である静かな作品なのだが、その表現手法がとにかくすごい。見終わった後にも、その映像が脳裏に迫ってくるような芸術的な傑作だった。
この世界に再び入りたいので、木村拓哉も出演している続編『2046』も見なければいけないな。
Written by kojiroh