『戦争のはらわた』(1977年 アメリカ=西ドイツ) ―8.0点。哲学的戦争映画の最高傑作



『戦争のはらわた Cross of Iron』(1977年 アメリカ=西ドイツ) 133min
監督:サム・ペキンパー
脚本:ジュリアス・エプシュタイン、ジェームス・ハミルトン、ウォルター・ケリー
原作:ウィリー・ハインリッヒ
出演: ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェル、ジェームズ・メイソン、デビッド・ワーナー、センタ・バーガー

【点数】
★★★★★★★★☆☆ / 8.0点

「戦争は最高のバイオレンスだ」。
『ワイルドバンチ』の巨匠、サム・ペキンパーによる戦争大作。一般的なヒットはなかったが、戦争映画の最高傑作という批評家もいるほどのカルト映画である。ツタヤの「本当に面白い映画100本」のキャンペーンで見つけて筆者も早速本作を借りた。


舞台は第二次大戦中、ドイツの敗色が見え始めた1943年、ロシア戦線でのドイツ軍の一中隊。人間味ある伍長シュタイナーと冷徹な中隊長との確執、最高の名誉とされた“鉄十字章”をめぐるドロドロの人間模様が前線での戦いを交えて描かれる大作。

アメリカ出身の監督ながらも、ナチスドイツ側の視点から描かれる異色の本作であるが、連合国VSナチスというような単純な二元論に立たず、「戦争」そのものに迫った作品とも言える。両軍で芽生えた絆のようなものが、ジェームス・コバーン演じるシュタイナーとロシア軍捕虜の少年から痛いほど伝わってくる。

ただ言語がドイツ語ではなく英語な点には多少違和感があるが、ペキンパー監督がこっち側の視点から戦争映画を撮ったという点に注目すべきだなと思った。

しかし私のベスト映画の一つ『夕陽のギャングたち』でも有名なジェームズ・コバーンの演技が本作でも渋い。男を語らせると彼ほど美学を感じる人物を演じる役者はいない。

古臭いフィルムながらも、砲弾の飛び交う中、泥と血にまみれた人間たちが激しく戦う様は狂気さえも感じる。スローモーションやジャンプカットのような激しく感性的なカットによって、まるで幻想にも思える映像が素晴らしい。

オープニングのドキュメンタリーのような映像と、妙に楽観的な音楽共に始まり終わる。
実写フィルムを利用したヒトラーユーゲントの登山シーン、そのバックに流れる童謡 「Hänschen Klein(幼いハンス)」、その対比が印象深く胸に残る。その感覚は、『フルメタルジャケット』で試されたミッキーマウスの曲と同時に行われる過酷な軍事訓練のシーンと同様なレベルでインパクトがあった。

しかし、最後にまとめると、『戦争のはらわた』は非常に哲学的な戦争映画である。戦争中毒者となってしまっているシュタイナーとその仲間たちの絆、出世に溺れる愚かな指揮官など、戦争にアイデンティティを求める人間、社会風刺を臭わせる。


それでいてどこかシュールで戦争をからかっているような批判精神がある。

そのペキンパー風の独自のテイストが合うか合わないか、好き嫌いは分かれそうな映画だが、『フルメタルジャケット』や『プラトーン』や『ブラックホークダウン』などに盛り込まれている実験的に思えた要素が全て濃縮されたような、元祖・最高の戦争映画であろう。

Written by Kojiroh

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