『殺し屋1』(2001年、日本) 128min
監督:三池崇史
脚本:佐藤佐吉
撮影:山本英夫
原作:山本英夫
出演者:浅野忠信、大森南朋、SABU、塚本晋也、松尾スズキ、菅田俊、寺島進、KEE、國村隼、手塚とおる、Alien Sun (en)、モロ師岡、風祭ゆき
【点数】
★★★★★★★★★☆ / 9.0点
日本映画史において最も暴力的かつ残酷、それでいてこんなに哲学的な映画は過去にもその後においてもなかったと思う。
それが本作、国際的にも評価が高く有名な日本のカルトと映画『殺し屋1』。コミック原作ながらも、クエンティン・タランティーノやイーライ・ロスにも大きなな影響を与えた作品。『キルビル』や『ホステル』などの人気シリーズからも本作の影響がうかがえるほど。
さてあらすじは、SM偏狂の安生組の若頭・垣原(浅野忠信)が、失踪した親分の行方を追う。そしてどの組にも属さないアウトローのジジイ(塚本晋也)率いる殺し屋に消されたことを知り、殺し屋「イチ」を追い始めるのだが…。
謎めいたようで筋の通ったよくできたストーリーだ。原作がいいこともあるが、この原作を見事に映像化した三池監督の感性にも驚かされる。
オープニングからの歌舞伎町、ヤクザ、音楽と共に疾走するアドレナリンマックスの映像。『デッド・オア・アライブ』を越える緊張感と迫力。
CGなどを駆使して「1」を映像化しているのだが、技術的な古さはありつつも、残酷なスプラッターでありながら金髪顔面ピアスの垣原メイクのスタイリッシュな色合いで疾走する本作は10年前に作られたとは思えないほど、今見ても新しさがある。
強烈な暴力の嵐で、誰もかつて映像化を試みなかったような、舌切りのシーンの迫力は映画史に残るほどだと思える。
また役者もいい。主演の浅野忠信はもちろん、イチを演じる大森、ジジイの塚本晋也、金子のSABU、またクエンティンタランティーノの『キルビル』出演のきっかけにもなった、菅田俊と国村隼。脇の脇を固める役者も三池映画の常連組が揃っていて素晴らしい。個性的な顔ぶれが揃っていて、よくこの顔ぶれで一本取ったと思うほど。
「人に痛みを与える時は、もっと愛をこめなきゃ」
ぶっちぎりのR-18で見るものを圧倒する痛みのオンパレード。
殺し屋を追うヤクザの物語というだけだが、その本質は変態同士の戦いを描く話なのだが、それが人間の本質を突いている。ただ痛いだけではない、「なぜ人間は暴力を求めるのか?」という哲学がある。
SとMの男同士のラブストーリー、という未だかつて描かれなかった物語ではないだろうか。それは欲望がうごめく歌舞伎町の裏社会を舞台にすることで初めて描くことができた話なのかもしれない。
ストーリーのよさでいうならコミックの影響であるが、映像化された本作では、ラストシーンが原作とは違い、難解で意味がよく分からないものになっている。この物語の解釈を観客に委ねているような終わり方が、後で考えさせられる内容だ。
しかし青空の高層マンションの屋上での決闘、というラストは実験的でもあり、素晴らしい。青空の元で対峙するど派手な服装の垣原とイチのコントラスト、原作に忠実でありながらも、三池監督は完全にオリジナルな殺し屋1の映像化に成功したといえる。
イーライ・ロスの『ホステル』シリーズなど本作から影響受けた映画が世界中にあるが、日本でこのような超残酷ながらも哲学的な映画が生まれたことは、カルト映画の歴史に永遠に刻まれ続ける偉大な功績のひとつだと思う。
本作を越える衝撃の暴力映画は、後にも先にも出てこないだろう。
Written by kojiroh
究極という感じがします
奥が深いですよね・・・・・
映像化よくできたな~と・・・・出演した役者さんも好演でこのイメージで
役者人生終わったかもぐらいの衝撃でした
この役でイメージされたらあとの仕事に影響が・・・・・
たびたびコメントありがとうございます。
究極の残酷さだが奥が深い…。
奇跡の映画のひとつだと思いますね。あまり人にはお勧めできないですがw 大森さんなんかはもうイチのイメージが付いてしまって他でみると違和感ありますね。やくざの国村と菅田は他でも似たようなキャストで色々出ていて誇らしいですが