『ラストデイズ』(2005年、アメリカ) ―5.5点。カート・コバーンオマージュの映像作品

『ラストデイズ』(2005年、アメリカ) 97min
監督・脚本・編集:ガス・ヴァン・サント
出演者:マイケル・ピット、ルーカス・ハース、アーシア・アルジェント、ニコール・ヴィシャス、スコット・グリーン、ハーモニー・コリン、キム・ゴードン

【点数】
★★★★★☆☆☆☆ / 5.5点

90年代の伝説のバンド・ニルバーナ。
そのバンドで、27歳の若さででショットガン自殺したフロントマン、カート・コバーンの実話に基づいたオマージュのような作品。

さて、カートコバーンをカリスマ視して進行している筆者としては、この映像化は非常に喜ばしいことだった。しかも監督はカンヌ映画祭グランプリの『エレファント』の巨匠、ガス・ヴァン・サント。

アメリカの映像作家のニューウェーブともいえるサント監督の一作であるということで、期待を高めていた。

さて物語は、あるロックミュージシャンの死の直前の2日間が舞台。カート・コバーンではないミュージシャン・ブレイクという設定で、若いミュージシャンからも信仰されているが、彼は内面に深い悩みを抱え、森の中をさまよい続ける…。


容姿的にも完全にカートになりきっているマイケル・ピットには驚きがある。そっくりにもほどがある、というかカートの魂が降りているんじゃないかと思うほど、表情であったり、欝っぽい神経質な雰囲気がいい。自作している曲を引っさげているので、彼の音楽世界に触れるには見ごたえがある。

だがストーリーはあるようでないような、ゴダール的なもの。台詞もほとんどなく、ひたすら精神世界をさまようような後ろ姿を追うサント監督特有の長回しのシーンの連続。

(相変わらず絶妙なアングルでの後ろ姿シーンが雰囲気を醸し出しているのだが)

他にも朝食のシリアルをキッチンで食べ漁るようなシーンも印象的だが、どのシーン一つとっても長回しが多く、タルコフスキー的な映像。美しいシーンが多いが、難解な映画になってしまっている。印象的な絵は多いのだが…。

結論、物語はあるようでない完全なる雰囲気映画。
もはや映像作品というかPVなんじゃないかとも思えるような内容である。

有名な実話に基づいているにも関わらず、主演がなりきっているにも関わらず、こんなに映像作品のような映画にしてしまっては、どうも釣り合わない。特に実話には真実があるわけでもなく、カートファンにしては何も目新しい真実もない。

ストーリーに展開があったりすればまた違ったのだが、または実は暗殺されたというような陰謀の話にしてしまえばもっと観客は楽しめたのかもしれないが、カートっぽいポスターに騙されて見に行ったファンがあまりにも可愛そうな映画であったことは誰の目にも明らかな一作だ。

Written by kojiroh

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中