『ドッグヴィル』(2003年、デンマーク)―9.0点。ゼロ年代屈指の実験映画


『ドッグヴィル』(2003年、デンマーク)―178min
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー、クロエ・セヴィニー、ローレン・バコール、ステラン・スカルスガルド、ジェームズ・カーン、パトリシア・クラークソン、ジェレミー・デイヴィス、ベン・ギャザラ、ウド・キア、ジャン=マルク・バール、フィリップ・ベイカー・ホール、ジョン・ハート

【点数】
★★★★★★★★★☆ / 9.0点

『ダンサーインザダーク』の巨匠、ラース・フォン・トリアーとニコール・キッドマン主演というカンヌ映画祭でもコンペ部門でノミネートされた話題作。

小説のようにチャプターをしっかりと定め、ジョン・ハートのナレーションと共に物語が進む。アメリカを舞台にした、のちに『マンダレイ』に続く3部作の第一作とされる。


舞台は、大恐慌時代。ロッキー山脈の廃れた鉱山町ドッグヴィルにて、医者の息子トムは将来は偉大な作家となり、彼自身の道徳を人々に伝えることを夢見ていた。そんなある日、ギャングに追われた美女グレースが逃げ込んでくる。トムは追われている理由をかたくなに口にしないグレースを受け入れようとするが、いつの日か町の住人の態度が次第に身勝手なエゴへと変貌してゆく…。

特に衝撃的なのが、床に白い枠線と説明の文字を描いただけの舞台。そこで撮影され、映画のセットを排除し、舞台劇をそのまま生で移したような映画である点だ。

最初は違和感があるが、慣れてくると、周りの背景にごまかされない俳優の演技をとことん堪能できる意味では、特異な成果を成した実験だったのではないかと思える。とにもかくにも後にも先にもこんな映画は観たことがない。

その実験性と共に、ドグマ95的な自然光と自然録音、手取りに拘った演出が相乗し、生々しいリアルな演技をフィルムに写すことに成功している。



後に『ドッグヴィルの告白』という、本作の制作を追ったドキュメンタリー映画が作られることになるほどに、過酷な現場であり、今後の三部作に全て出演予定だったキッドマンが本作で出演を終えてしまうことになるほど。

ポールベタニーの村人の前での演説での迫り来るカメラワーク、そして息遣い、あとは色々な労働に従事したあげくに最後は疲れ果てた様子になってしまうのだが、それも含めてニコール・キッドマンの美しさがすばらしい。食事や仕事のシーンなどでも実際の実物は用意せずに、全て身振り手ぶりで表現するのだが、それによって周りの風景に邪魔されずに役者が見られる効果を生んでいる。

しかし余談ながら、本作でも特段の悪役を演じる登場人物の名前が「ビル」であることがダンサー・イン・ザ・ダークでも言えることで、この名前に監督自身の何か思い入れがあるのかもしれない。

本作のストーリーを詳細に語りたいところであるが、あまり言うと鑑賞の面白みがなくなるので深くは言及できない。
しかしテーマが何よりも深い。よく練られた脚本の中で、人間と人間が生活して村を成す、その閉鎖性、集団真理がもたらす人間のエゴと残酷な心理描写には息を呑む。そして最後には、「傲慢」について考えさせられる。正しいことが分かっていながら謙虚になりすぎるのは寛容なのか、それこそが傲慢なのか。人類普遍のテーマンガあった。

全9章、178minと3時間近い長い作品であるが、じわじわと牙を向き始めるドッグヴィルには目が離せなかった。ラストの衝撃を考えると、もっと長くてもよかったとさえ思える。

実験性や脚本、演出、全てにおいてもゼロ年代を代表する最も成功した実験映画の一作であることは言うまでもない事実であろう。

Written by kojiroh

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