『メメント』(2000年、アメリカ) ―9.0点。ゼロ年代屈指のサスペンス


『メメント』(2000年、アメリカ) ―113min
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
出演:ガイ・ピアース、ジョー・パントリアーノ、キャリー=アン・モスetc

【点数】
★★★★★★★★★☆ / 9.0点

製作費900万ドルで作られた低予算な映画ながらも、口コミでどんどん広まり、インディペンデント系で圧倒的な人気を誇った『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督による初期の代表作。ノーラン31歳という若さで作り上げたのが『メメント』だ。

斬新な構成ながらも完成度の高い本作は、インディペンデント・スピリット賞にて、作品賞、監督賞を受賞、さらにアカデミー賞ではオリジナル脚本賞、編集賞にノミネートされた。

ということで、筆者はそんなにクリストファー・ノーランの作品を見ているわけではないが、近年のサスペンスの傑作として名高い本作は一見の価値ありかなと思い、さっそくレンタルで見ることに。


本作のあらすじは、
ある日、主人公・レナードの妻が、自宅に押し入った何者かに殺害される。レナードは現場にいた犯人の一人を銃で撃ち殺すが、そのときの外傷で、10分間しか記憶が保てない病気になってしまう―。復讐の為、犯人探しを始めたレナードは、自身の体にメモをする事によって記憶を保つよう注力する。しかし、それでも目まぐるしく変化する周囲の環境に困惑し、疑心暗鬼にかられてゆきつつも、謎の男、ジョン・Gを追うのだが―。

ポラロイド写真と、写真だけでなく体中に書かれたメモ。謎が謎を呼ぶような展開で、冒頭から驚くほどのスピード感で物語が進み始める。

最初は謎な構成の物語に違和感を覚えるが、だんだんと物語が時空とは逆方向に流れて行くことしり、10分で記憶がなくなる男が織り成すメメントの世界に入り込んでゆけた。

この緊張感、だれが信じられるのか?スリル満点で物語の謎が明らかになってゆく手法は圧巻である。

小道具の使い方も面白く、つばの入ったビールや、ポラロイド、タトゥー、ベンツ、服、などなど、作り手のヒントのアイディアが満載。ノンストップで迫ってくる迫力もいい。

一体、何が真実で何が嘘なのか?
人はメモだけで生きて行けるのか?
さらには僕らが生きている記憶の本質とは何か?
現実と虚構が行き違うつつも、しっかりと筋に沿って、論理的に構築されたその世界観は完全オリジナルだと思った。『インセプション』などの近年の傑作へも通じるノーランの原点がしっかりと凝縮された世界だ。

どことなく、近年のヒット作の『バタフライ・エフェクト』も、本作に影響を受けているように思える。記憶と、それによって物語が変動してゆくような、ゲーム感覚にも近い虚構世界を舞台にした物語の最高峰であろう。

物語の謎をもっと明確にするために、もう一度、さらにもう一度と見たくなる傑作であった。

Written by kojiroh

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