『Mishima: A Life In Four Chapters』(1985年、アメリカ=日本) ―8.5点。伝説の三島自伝映画


『Mishima: A Life In Four Chapters』(1985年、アメリカ=日本) ―120min
監督・脚本:ポール・シュレイダー
原作:三島由紀夫
音楽:フィリップ・グラス
美術:石岡瑛子
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス
出演者:緒形拳、坂東八十助、佐藤浩市、沢田研二、永島敏行 etc

【点数】
★★★★★★★★☆ / 8.5点

緒方拳主演、世紀の大作家・三島由紀夫の人生を四つのチャプターで描いた、『タクシードライバー』の脚本家、ポールシュレイダーによる伝説の作品。

出演者がみんな日本人にも関わらず、三島婦人の圧力のため日本での公開、さらにはDVD化がされることがなかった伝説的な一作。(三島が同性愛である描写が含まれるため猛反発された)

そんな作品であるが、実は海外ではポピュラーな作品で、カンヌ映画祭でも特別賞を受賞している。そのため、youtubeでも実は鑑賞することのできる作品であり、筆者は暇を見つけてネット動画で鑑賞した。


1970年11月25日に壮絶な最後を迎えた三島由紀夫の生涯を、『美』、『芸術』、『行動』、そして『文武両道』の4部構成で描く。彼の作品の映像化と共に、三島の幼少期などの生涯のドキュメンタリーのような映像、そして25日の一日の動きを途中で交錯させながら物語が進む構成が凝っている。


また一行、また一行と筆が進む。
しかし彼の衝動は筆だけでは収まらなかった。ペンが剣に変わった、最後の11月25日。

世界的作家の三島がなぜあのような最後を迎えたのか、彼の内面を過去の『金閣寺』、『鏡子の家』、『奔馬』という文学作品を映像化して辿ることで明らかにしてゆく。それをアメリカ人監督のポール・シュレイダーが撮っているから驚きだ。日本映画マニアの監督、そして三島作品を敬愛するコッポラなどの巨匠がバックを支えることで実現した奇跡的な作品だと今でも思える。

俳優も、佐藤浩一から三上博史まで出演していて豪華な実力派が出揃っている。

それにしても、緒形拳が熱演する三島の姿が力強く素晴らしい。現在では二人ともこの世を去ってしまったが、その偉人を演じた偉人ともいえる奇跡的なコラボだ。

作家として売れ始めた中でも、同性愛的な性癖、そして肉体的コンプレックスを抱えて、肉体改造に励み、自己を変革し、後期には活動家として右翼活動に没頭し、映画も監督し、自らの思想を具現化してゆく三島の姿が詳細に描かれる。

金閣寺で美しさにとらわれた主人公、そして性的なコンプレックス、抑圧されてきた衝動が革命への意思に昇華されてゆく。

決死の場面、豪邸を捨て去り、同志の若者と自衛隊へ向うこの緊張感と迫力には息を呑む。


本当に見事な最後を描きっていて、さらには常人では理解しがたい三島を非常に肯定的に、描いていて、この三島へのリスペクトがシュレイダー監督が過去に描いたタクシードライバーのトラビスの人物像ともかさなって見える。

それにしても、かつて70年代に実際にこのような事件が起きたことの意味を再考させられた。

三島の人生を深く知れて、肯定的に描くとともに、今の日本人が忘れてしまった侍の武士道のような美学を思い出させてくれる情熱的な傑作だった。

Written by kojiroh

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