『ヒューゴの不思議な発明』(2011年、アメリカ)―7.5点。匠の歴史ファンタジーアドベンチャー


『ヒューゴの不思議な発明』(2011年、アメリカ=イギリス)―126min
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ジョン・ローガン
原作:ブライアン・ セルズニック『ユゴーの不思議な発明』
製作:グレアム・キング、ティム・ヘディントン、マーティン・スコセッシ、ジョニー・デップ
出演:ベン・キングズレー、ジュード・ロウ、エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、レイ・ウィンストン、エミリー・モーティマー、ヘレン・マックロリー、クリストファー・リー、マイケル・スタールバーグ、フランシス・デ・ラ・トゥーア、リチャード・グリフィス、サシャ・バロン・コーエン

【点数】 ★★★★★★★☆☆ / 7.5点
※リアルタイム映画評

『HUGO』。題名的にも内容的にもスコセッシらしくない。
暴力描写とその背後に鳴り響くポップな音楽、孤独な主人公の苦悩と葛藤―。そんな題材が多かった巨匠マーティンスコセッシの最新作は、過去のどの作品にも当てはまらない新作だった。

アカデミー賞でも最多の11部門ノミネートの5部門受賞。そのスコセッシのヒューゴとは一体どんな映画なのか、胸をときめかせる思いで映画館へ足を運んだ。

舞台はなぜかパリ。1930年代。

CGで再現されたかのようなかつての町並みがエッフェル塔を中心に美しく描かれている。

あらすじは、時計修理職人である父を亡くした少年ヒューゴは、駅の時計の整備をしながら孤独な毎日を送っていたが、彼は父が残した壊れた不思議な“機械人形”をよりどころにする。その修理のためにヒューゴは、おもちゃ屋で万引きを働いて店主の老人ジョルジュに捕まり、大切な父のノートも取り上げられる。そんな中、ヒューゴは老人の養女イザベルと仲良くなり、一緒に機械人形の秘密を探ってゆくのだが…。

ミステリー要素もありのファンタジー・アドベンチャー超大作。
で感想、やはりスコセッシらしくない、過去の映画業界の栄光を美化するような節があるが、ヒューゴの世界は素晴らしい美術、演出力。

まずオープニングから、街からずっとノーカットでカメラが動き、駅から時計の文字盤から覗くヒューゴへ至るまでのあの最初のカットだけでも度肝を抜かれる。

そして時計台の中を走るヒューゴをノンカットで追い続けるカメラワークなんてマニアが見たらたまらないでしょう。細かい描写もよくて、泥棒をしようとパンとミルクを上手いこと盗む様や、公安官から捕まりそうになって逃げる様なんかも緊張感あって楽しめる。

「人間には果たさなきゃいけない役割がある。目的を失ったら人は生きてゆけない」


小道具にも非常に拘りを感じる。細部まで作りこまれたこの映画の美術レベルには本当に圧倒される。

ともかく、表現力はすごい。さらにそれだけでなく、人間もいい。

この世界には多様な世界観がある。主人公ヒューゴの持つ物語だけでなく、パパ・ジョルジュの物語、公安官を演じるサシャ・バロン・コーエンの存在感もいい。

まるで秀逸な絵本を集めて一つの映画にしたかのような、そうだな、人助けをテーマに色んな人物の物語を見せてくれる『アメリ』的な手法とも言える。

正直ヒューゴのようなファンタジックな世界は趣味ではないが、家族向けの3D映画としては最高峰なのかなとは思える。(3D嫌いな筆者は2Dで鑑賞したのだが…) それでいて映画マニアが見ても唸らせるようなカメラワークも必見。ヒッチコック的なトリッキーなスコセッシ流な演出、そして彼自身の映画愛に溢れている。

かつての映画の巨匠であるジョルジュ・メリエスが実在する人物である部分なども、この世界観が奇抜なファンタジーであるようで、妙に現実的な、単なるファンタジーを越えた歴史映画要素が含まれている。

テーマとしては現代ではなく過去の栄光を追っている部分があり、今である必要があったかというとクエスチョンがある。さらに個人的に子供向けファンタジーは趣味ではない。

がしかし、そんな筆者であっても、この不思議なヒューゴの世界には涙腺が緩くなったのであった。

Written by kojiroh

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