『ラン・ローラ・ラン』(1998年、ドイツ)―8.0点。ドイツ流、ニュー・ヒロイン


『ラン・ローラ・ラン』(1998年、ドイツ)―81min
監督:トム・ティクヴァ
脚本:トム・ティクヴァ
音楽:ジョニー・クリメック、ラインホルト・ハイル、トム・ティクヴァ
出演:フランカ・ポテンテ、モーリッツ・ブライプトロイ、モニカ・ブライプトロイetc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆ / 8.0点

赤髪のローラが走る。コミカルな展開、実験的な構成、アニメーションを交えたとにかく不思議な実験映画だった。

さて、ドイツで歴代記録に残るヒットを飛ばし、近年、世界で有名なドイツ映画の1本になったのが本作『Rola rennt』。ドイツらしからぬ何やら陽気なテーマとスタイリッシュなカラー。ただ単にローラが走るという内容のようだがどんな映画なのか気になっていた。

さて、そんな本作のあらすじであるが、
ローラの家に、裏金の運び屋をしている恋人のマニから電話がかかってくる。マニはボスの10万マルクをなくしてしまい、12時までに金を作らないと大変なことになると言う。残された時間は、わずか20分。ローラは受話器を投げ出し、マニを救うために街へ飛び出す…!

さて、馬鹿みたいに単純な話だが、監督自身が製作に参加しているノリのいいクラブ風のテクノ・ミュージックと共にアニメーションが流れて物語が動き出す。

「Zwanzig minuten!」(あと20分!?)
と言ってローラは走る。走る。走る。

まずはこの映像センス。真っ赤なローラがドイツの町を走るシーンの爽快感。さらにはお馬鹿なノリもありで、随所で笑える。堅苦しい響きのドイツ語がなんだかユーモラスに聞こえたのは初めてかもしれない。

―20分じゃどう考えても無理だろ!www
と思うようなことを次々とやっていくローラの姿はなかなか愉快。さらには街中で出くわす人々やシーンが一つ一つ非常によくできていて、ちょっとした展開の違いで運命ががらりと変わってしまう。ネタばれになるのであまり言わないが、父親、その愛人、消防車とガラスを運ぶ業者、ホームレスから自転車売りまで、町中の人々の関係の因果がとにかくアイディア満載。何度か観て色々と違いを見比べてみたくなる。

スピード感がありつつも時間も80分とさくっと気軽に見られて、3つのオチになっているのでなんだか体感時間はもっと長く感じる。とにかく新鮮な気持ちになれる実験映画の秀作だ。

まあストーリーは、なんでローラがマニのようなダメな男が好きなのか?父と娘の関係は?など色々と突っ込みたくところがあるが、それはそれはでコメディだと割り切った方がいい映画かなと。最後のルーレットの20のシーンなどはもう別世界の出来事が展開されている…。

しかし90年代のこの時期にこうした挑戦は画期的だったのではないか。ミニシアター系のような規模にも関わらず、当時の最新技術を駆使してローラを描いたと言える。こうした強烈な個性キャラの女性主人公がコミカルに町中を駆け回るというようなストーリーは、その後の女性主役の『アメリ』のような作品に多少なりともキャラクター造形などの点で影響を及ぼしているんじゃないかと思えた。

kojiroh

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