『ノーカントリー』(2007年、アメリカ)―122min
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
原作:コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』
出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルドetc
【点数】 ★★★★★★★★☆☆ / 8.5点
カルト系の映画で名高いコーエン兄弟の作品で最も暴力的な作品でありつつアカデミー賞受賞作品、その他でも合計4部門受賞。それが本作、ノーカントリーだ。
近年のアカデミー受賞作の中でも傑作と絶賛され、偉大な歴代受賞作ランキングでも上位に入るのが作品で、オスカーだけでなく様々な国際映画祭で受賞を果たした。
そんなノーカントリーの舞台は80年代アメリカ。
人里離れたテキサスの荒野、銃撃戦が行われたと思われる麻薬取引現場に出くわしたベトナム帰還兵モスは、複数の死体が横たわるその現場で、200万ドルの大金を発見してしまう。危険と知りつつ彼は大金を持ち帰ってしまい、その後、冷血非情な殺人者シガーに追われる身となってしまうのだが…。
冒頭から異様な雰囲気。狂気の殺戮シーンが靴のかかとの擦れ後が床に残るその様は、本作が普通ではないことを象徴していた。
とにかく、第一の感想は、バビエル・バルデム!
こんなすごい俳優がいたのを知らなかったのが恥ずかしくなるほどの歴史的な怪演。オスカー助演男優賞受賞も納得。コインの表裏の描写であったりと、圧倒的な貫禄。ヒール役の最高峰の演技の1つであろう。『イングロリアスバスターズ』のヴァルツにも並ぶ迫力だ。
ジョシュ・ブローウィンとの鬼気迫る追っかけあいを繰り広げつつも、色々な小道具や伏線を敷いた王道ではないストーリー展開には冒頭から終始くぎづけになった。
物語の面白さだけでなく、脇役から小道具、小さいエピソードまでよくできているのだ。
モーテルでの逃亡生活と、金を隠すトリック、ガスの空気銃の異様な威力であったり、銃痕を自己治療するバルデムのワザであったり、細かいシーンがなんとも巧妙でそれがこの奇妙な物語を現実に引き戻してくれるというか。
ともかく、完璧な映画だといえる。無駄がなく細部まで完成されている。
だがどう考えてバルデムの演じるシガーがあまりにも無敵すぎてなんだかちょっと違和感さえ覚えてしまうが―。
しかし、こうしたちょっと意味深な結末を迎える映画がオスカーを取ったということはなかなか珍しくも誇らしいことだ。
Kojiroh