『キッズリターン』(1996年、日本)―10.0点。キタノブルー、色褪せない不朽の青春映画


『キッズリターン』(1996年、日本)―108min
監督:北野武
脚本:北野武
音楽:久石譲
出演者: 金子賢、安藤政信、森本レオ、石橋凌、山谷初男、寺島進、モロ師岡 etc

【点数】 ★★★★★★★★★★/ 10.0点

青い色彩、自転車二人乗りが久石譲の音楽に揺れる。

94年の北野武のバイク事故から復帰したリハビリのような意味で作られた『キッズ・リターン』。レイジング・ブルのような映画を作りたいと言及していた武が何年も前から構想していた作品であり、自身がボクシングを志したこともあり、自伝的な一作にもなっている。カンヌ映画祭にも招待され、19カ国でも上映された名作。

あらすじは、
落ちこぼれの高校生マサルとシンジは悪戯やカツアゲなどをして勝手気ままに過ごしていた。ある日、カツアゲの仕返しに連れて来られたボクサーに一発で悶絶したマサルは、自分もボクシングを始め舎弟のシンジを誘うが、皮肉にもボクサーとしての才能があったのはシンジであり、各々は別の道を歩んでゆくのだが…。

本作を初めて見たのは筆者が高校1年生ぐらいのときだったであろうか。
北野映画の中でも最も丁寧に作られたシンプルなストーリーが若い時に見ても面白くて感銘を受けた。その感想は10年経っても全く変わらず、逆に細かい部分でさらに共感できるようになっていた。特に社会の過酷さや残酷さが感じられる描写が実は多くて、社会人になってから見る方が感じるものが深い。

特に、高校で同じクラスだった同級生が何組ものストーリーがお互いに交錯し合っているところがすごい。漫才を目指す二人組み、サラリーマンになるが挫折してタクシーを回すおとなしい高校生、はんぱな不良3人組など、何人もの人生が凝縮されている映画なのだ。

やくざの親分を演じる石橋凌も貫禄ある名わき役だ。

いつも一万円のチップを貰ってタバコを買いに行くカズオの末路であったり、親分が撃たれても呑気にゴルフの話に従事する会長など、細かい部分でもそれぞれの現実を描いている。若者が苦い思いをして苦労している中でも年配の上にいる人々はゴルフのハンディのことで呑気な会話をする。

さらには高校の教諭を演じる森本レオなどの配役にも味がある。職員室では受験の指導のことがもっぱら話題になりながらも、不良学生は切り捨ててゆく―、しかしそこに躊躇いもある。だが所詮は何も変わらないという社会の教育の残酷さを象徴しているとも言える。

シリアスな面が多いが、それでいて屋上から授業中にするいたずらや、成人映画を見に行くために会社員のフリをするシーンなど笑えるシーンも無数に散りばめている部分にも監督のアイディアの力を感じる。

つまり『キッズリターン』は、ボクシング映画であるようで本作におけるボクシングとはあくまでモチーフでしかなく、結局は各々の人生を歩まざるをえなくなる若者たちの青春物語である。

人生とは何か?成功とは?
成功者であるはずの監督自身が社会に対して投げつけている強烈な想いを感じる。「世の中そんなに甘くない」という北野武のメッセージであるようにも思える。ボクシングを志して才能を発揮したシンジも、結局は若さゆえの孤独、そして変な先輩にたぶらかされては堕ちてゆく。しかしそこで終わりではないのだ。

いつの時代でも普遍的なメッセージが、何度見ても絶妙な角度で胸を打つ。
やっぱり自転車の相乗りシーンは個人的には『明日に向かって撃て』のそれよりも名シーンじゃないかな。
「馬鹿ヤロウ、まだ始まっちゃいねーよ」

Kojiroh

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