『続・夕陽のガンマン』(1967年、イタリア=アメリカ)―9.0点。マカロニウェスタンを越えた名作


『続・夕陽のガンマン』(1967年、イタリア=アメリカ)―161min
監督:セルジオ・レオーネ
脚本:ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ。フリオ・スカルペッリ、セルジオ・レオーネ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演者:クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、イーライ・ウォラックetc

【点数】 ★★★★★★★★★☆/ 9.0点

「The good, the bad, and the ugly」
クエンティンタランティーノ監督が自信が選ぶ最高の映画として選ぶ不動のカルトムービーが本作『続・夕陽のガンマン』。

イタリアのマカロニウェスタンの巨匠、セルジオ・レオーネが過去の『荒野の用心棒』などイーストウッドとのヒット作をバネに過去最高の制作費を投じて作り上げた二時間半以上に渡るスペクタクル。


舞台は、南北戦争末期の西部。
ブロンディ(イーストウッド)とトゥッコ(ウォラック)の二人はコンビを組んでお訪ね物と絞首刑から救い出す茶番を繰り返して賞金をかせいでいたが、この商売も次第にあぶなくなってきて、ブロンディはトゥッコを裏切る。復讐に燃えるトゥッコ。その裏側で南北戦争の埋蔵金を巡るエンジェル(クリーフ)の野望が交錯し、三つ巴の地獄の決死が始まる…。

冒頭、『イングロリアスバスターズ』のオープニングに影響を与えたかのようなシーン。会食をするかと思いきや、残酷なエンジェルの仕打ち。草原と荒野、馬、そして銃撃。エンニア・モリコーネの口笛のようなテーマ曲が鳴りひびき、物語が回りだす。

ちなみに「続」とタイトルに付いているが、前作『夕陽のガンマン』とはまったく関係ない。出演陣が似ているだけで、前作とは何の関係もない。

キャスティングは似ているが、『夕陽のガンマン』よりも暴力的で、さらに男たちの友情を徹底的に皮肉り否定するようなダーティーな作風。さらに南北戦争が舞台になることで、まさしく西部劇と戦争映画が融合した究極のバイオレンスアクション・エンターテイメントにまで本作は上り詰めることに成功したのではないか。

本作の最大のキモは、三つ巴の対立構造を見事に描ききった映画であることだ。「善玉・悪玉・卑劣漢」。
この手法はのちのちタランティーノの『レザボアドッグス』や『トゥルーロマンス』に大きな影響を与えることになる。

しかし観れば観るほど味が出る。顔面のアップと広大な自然や舞台を引きで絵画のように撮影して対比する手法や、特にキャラクター設定の巧み。レオーネ監督の集大成とも言える様々な要素が複合されている。

「人間の顔とは地図のようなものだ」
と語るような、しつこいまでの顔面のアップが迫力大。


そして南北戦争を背景とすることで、戦争に死に行く大佐と、橋を爆破することで道を開くシーン。そして戦争の吹奏楽隊が音を鳴らしながら、裏側で拷問を行うバイオレンスなど、とにかく戦争の風刺を交えた西部劇を超えるウェスタンだ。


しゃべりまくるイーライ・ウォラックとクールで寡黙なイーストウッド。
この二人の私欲にまみれた腐れ縁がかつて観たこともないようなシュールな名コンビを作り出した。ビルカーソンを名乗らせてチュッコをはめるブロンディなど、二人の醜悪な騙しあいがシュールで笑える。そして二人を傍観するかのような冷酷なリーヴァンクリーフ。

最後に迫り、モリコーネの音楽と共に墓地を走り抜けるトゥッコ。疾走間と高揚感が入り混じるラストへの道筋は鳥肌もの。


本作ではイーストウッドが善玉であるが、彼自身も卑劣なところがあり、実力者の正義面であるが、結局はこの作品に「善」など存在していない。戦争とは、争いとは、善によって決着が決まるものではなく、勝った者が善なのだと言わんばかりの普遍的なメッセージを感じる。

男と銃と金、そして裏切り卑劣。
汚いテーマで、ただひたすら泥臭い。
絞首刑になりそうなトゥッコ、砂漠から生還してガンショップで強盗をするときの店主とのやりとり、砂漠の中を水を奪われて死に掛けるブロンディ、拷問されて目を潰されそうになるシーンや、トイレと見せかけて列車から飛び降り、暴力的でありつつも無数のアイディアが散りばめられた名シーンの数々。

恐ろしいほど女ッ気がなく男だらけのむさくるしい映画であるが、それがまたハードボイルド。シビれるぜ、セルジオ・レオーネ。

コアな映画ファンを魅了して止まないエッセンスが満載の、マカロニ・ウェスタン屈指の名作であり続けるであろう。

kojiroh

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