『ザ・ミッション 非情の掟』(1999年、香港)―8.0点。香港ノワール火種の傑作

『ザ・ミッション 非情の掟』(1999年、香港)―81min
監督:ジョニー・トー
脚本:ジョニー・トー&ヤウ・ナイホイ
音楽:チュン・チーウィン
出演:アンソニー・ウォン、フランシス・ン、コウ・ホン、ラム・シュー、ロイ・チョン、ジャッキー・ロイetc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

香港ノワールブームの火種にもなったといえる熱狂的なカルトファンを持つ名作、『ザ・ミッション(槍火)』。

オープニングからジョニー・トー監督が敬愛して止まない黒澤明風の習字フォントによるロールがなんとも誇らしい。オープニングテーマ曲も冴えている。トー監督流の『用心棒』のような作品だ。


◎あらすじ
黒社会のボス、ブンは何者かに命を狙われてしまう。そのため護衛として組織の精鋭を招集する。集められたのはそれぞれ境遇のまるでちがう5人。彼らは衝突を重ねながらも、与えられた任務――ブンを守り犯人を割り出す――を遂行するため行動を共にするのだが…。

冒頭からダンスダンスレボリューションでの汗臭いダンスを見せつつピーナツをぼりぼり食べるラムシューの姿にも思わずニヤリ。

基本的に男だらけの男臭い作品で、近年の『エグザイル』と『冷たい雨に撃て~』と並んで三部作と呼ばれる。アンソニー・ウォンの主演が渋い。香港の男の美学を感じる。そしてフランシス・ン。『インファナルアフェア2』でも貫禄の演技を見せた彼の原点とも呼べる渋いアニキ分を演じる。そしてガンマニアの匂いを感じさせるロイ・チョンもカッコイイ。

男と銃と放課後の友情、みたいな映画。ストーリーはあるようでないようなもの。ほとんどが即興的な遊びのシーンと銃撃からボスを守る任務に従事する男たちの姿が描かれている。それだけっちゃそれだけだが、北野映画の『ソナチネ』的な遊びシーンが多く、特に紙くずサッカーのシーンなどのアイディアが冴えている。


一番の見所は、やはり香港ノワール史上で歴史的な名シーンとも言えるジャスコでの銃撃戦。
5人がフォーメーションを組んで繰り広げられるシーンは即興で撮ったとは思えぬほど構図が美しく、そしてカッコイイ。

そして食卓を囲って対峙する男たちの緊張感溢れるシーンもしびれるね。ジョニー・トー監督は食卓に登場人物の人間性を投影するのがホントにうまい。食べる姿もまた美味しそうなのだ。

本作はトー監督の原点であり最高傑作であると思うが、以後の作品は同じようなパターンで描いているので、彼の作品は最初に見たものの方がなぜか印象に残ってしまう。私の場合は『冷たい雨~』→『エグザイル』→『ザミッション』という順番で鑑賞したので、一番初めに『冷たい雨~』を見たときほどの衝撃や驚きは残念ながらなかった。

終わり方が少し呆気ない印象もあるが、しかし80分程度のフィルムにこれだけ色々と盛り込んだ技量に、トー監督の才気の源泉を感じる傑作であることは間違いないだろう。

その後、トー作品の常連になる俳優陣たちを輝かせたことも、監督の力量の1つであろう。

kojiroh

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