『アナザープラネット』(2011年、アメリカ)―93min
監督:マイク・ケイヒル
脚本:マイク・ケイヒル、ブリット・マーリング
出演:ブリット・マーリング, ウィリアム・メイポーザー, ロビン・ロード・テイラー etc
【点数】 ★★★★★★★☆☆☆ / 7.5点
サンダス映画祭で特別賞を受賞した話題作。
友人からの推薦で、筆者は出たばかりの準新作でレンタルして鑑賞した。
あらすじは、
ある夜、ローダは見たこともない惑星が空に浮かんでいるのを目撃するが、それに気を取られた彼女は車の運転を誤り、妊婦と幼い子を死なせてしまう……。4年後、刑期を終えたローダは謝罪のために、被害者家族のジョンを訪ねるが、思わず本性を明かせず、本来の関係をよそにジョンとの交流を深めていくのだったが――。
SFチックなイメージガあったが、いい意味で裏切られる。冒頭からセンスのいいDJ音楽とラフなショット、あっという間に物語が動き出す。
青い色彩、青い世界、そこに調和するもう一つの惑星=地球。
それにしてもスピード感があって心地よかった。手持ちでブレて息遣いが伝わってくるようなドグマ95的な現実感があった。制作的には低予算で荒削りなところが目立つが、この設定で押し切ったマイク・ケイヒル監督の才気が漂う異色作である。
「刑務所に入るか、大金持ちになるか」。
SFだと思って観ると騙される。これは罪を懺悔し、過去をリセットしたいという人間の適わぬ願望が「第二の地球」という希望の虚構を生み出しているのだ。この実験性を僕は賞賛したい。
ニュアンスはかなり異なるが、トリアーの『メランコリア』と同じ時期に、似たような設定、もう一つの惑星が登場する物語が生まれたことに、なにやら2011~2012年という世紀末のような空気を醸し出す時代を象徴しているだろうか。
しかし、何で本作”ANOTHER EARTH”の邦題が「アナザープラネット」なのか。
「アナザーアース」でよかったと思うが、SF系の映画として売りつけたかったマーケティングの問題なのかと疑う。
ともかく本作はSFでもなんでもなく、悲しく切ないラブストーリーでもあり、シリアスな人間ドラマだ。
二人の関係が深まってゆく姿は美しくも切ないし、思わず目を背けたくなるような現実の残酷さがある。
救いがあるようで救いがない。
なんともいえない後味を残すラストが個人的には秀逸で本作のベストショットだと思う。
この作品は、ラストの意味、解釈を考えることに真価があるのだ。
もう一つの惑星、もう一人の自分、もう一つの人生。
そうか、すべては儚い虚構だったのか。
人生をリセットしたいと気付いた時点で、時すでに遅しと言わんばかり。
kojiroh