『未来世紀ブラジル』(1985年、アメリカ)―8.5点。近未来ドラマのカルト的金字塔


『未来世紀ブラジル』(1985年、アメリカ)―142min
監督:テリー・ギリアム
脚本:テリー・ギリアム、チャールズ・マッケオン、トム・ストッパード
音楽:マイケル・ケイメン
出演者:ジョナサン・プライス、ロバート・デ・ニーロ、マイケル・ペイリン、キム・グライスト etc

【点数】 ★★★★★★★★☆ / 8.5点

「ラーラアー、ララララララララー」
「Aquarela do Brasil」(ブラジルの水彩画)が鳴り響くブラジルBrazil。 なんだか陽気のノリでダークな作風。不思議なテイストのカルト映画の金字塔、『未来世紀ブラジル』。

近未来を予想して描いた映画では、他にも『時計仕掛けのオレンジ』や『ブレードランナー』も王道であるが、本作はそうした中でも最も異色でブラックユーモアな作品だ。


◎あらすじ
20世紀のどこかの国。情報省はテロの容疑者「タトル」を「バトル」と打ち間違えてしまい、無関係なバトル氏を無理やり連行していく。それを一部始終見ていた上の階に住むトラック運転手のジルが抗議をするも、全く相手にされない。一方、情報局に勤めるサムは、このミスをなんとかするために試行錯誤し、情報省に抗議に来ていたジルが、サムが夢でよく見た美女にそっくりだということに気づき、非合法のダクト修理屋のタトルとの出会いが絡み合い、サムは次第に国家と対立し運命の歯車が狂い始める…。

意味不明なようで痛烈に現代の管理下社会を皮肉った作風が、病み付きになる世界観をぼくらに示してくれる。

ロバート・デ・ニーロの怪演もさることながら、官僚的な管理された閉塞感のある社会の中で、夢を見ることの希望と現実の救いのなさが実にシニカルかつ本質的に描かれている。登場する人物・キャラクター造詣も興味深い。若返りを実践する母親やダクト修理屋の2人etc。

笑いどころだけでなく小道具も面白い。特にタイプライターで書かれてダクトによって通じる情報データーは、現代、PCとEメールによって代替されてしまっていて時代を完全に読み違っているようにも思えるが、

ダクトに溢れて部屋が詰まるような状態は現代の電子データ社会ではありえないが、実際は溢れかえる情報が本作の世界のように見えない形で僕らの空間に溢れているのではないか。

根底にある近代の管理下社会に対するシステム的支配、それに対する反抗精神は普遍的なアンチカルチャーだ。

資本主義が発展しすぎ、テクノロジーも進化しすぎて、管理が行き届きすぎる社会では人間性が崩壊し、常に夢を見ることで救いを求めるようになる……本作には二種類のエンディングが用意されていたようだが、オリジナルの救いのないエンディングが社会の真実を映し出しているようで筆者としては、逆説的に最も救いがある名エンドだと思う。

未来世紀ブラジル――ハッピーな物語ではないのに、この雰囲気を押し通し、ラストでも明るい歌で笑い飛ばしてしまうようなテンションはまさにブラジル的でもあり、それをこの近未来の舞台に持ち込んだセンスは、鬼才テリー・ギリアムだからこそ成せたカルト映画の金字塔であろう。

kojiroh

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