『ツィゴイネルワイゼン』(1980年、日本)―8.5点。幻想的な清順映画の集大成


『ツィゴイネルワイゼン』(1980年、日本)―144min
監督:鈴木清順
脚本:田中陽造
出演者: 原田芳雄、藤田敏八、大谷直子、大楠道代 etc

【点数】 ★★★★★★★★☆ / 8.5点

ベネチア映画祭特別賞受賞を始め、キネマ旬報など国内外で様々な賞を受賞した本作。カルト的な映画の名手であった鈴木清順の国際的評価を高めることになった、彼の中でもっとも代表的な一作だ。


◎あらすじ
大学教授の青地(藤田)と元同僚の友人中砂(原田)は旅先で、芸者・小稲(大谷)に会う。一年後、結婚したという中砂の家を訪ねた青地は、その妻・園が小稲に瓜二つであることに驚く……。

内田百閒の『サラサーテの盤』を原作(モチーフ)にした作品。

鎌倉あたりでロケが行われたという本作。とにかく映像美がすごい。
舞台は古風な昭和初期――和と西洋が入り混じろうとする時代の4人の男女の幻想的ロマンス。現実か、虚構か? メクラの芸人、鳴り響く三味線、日本の伝統芸とレコードのツゴイネルワイゼンが頭に残る。

和と洋、両者のつりあいがまだ発展途上である時代の文化、食事、古風な日本を描いている様がとにかくいい。

「鬼は外、福は内!」
日本古来の言語、食事、表現、妥協なしで写される世界観。
唐突にカットし切り貼りされる散文的な映像が見るものを惑わす。
幻想的な雰囲気、夢か現実か? 霊的な世界が交錯しつつ、独特な回しとカットで観るものを困惑させつつも惹き付ける。


特に有名な「眼球なめ」のシーン。腐りかけたももをむさぼるように食べる大楠道代。こうした場面は気味が悪くも、妖艶なグロテスクさに釘付けになる。

何といっても今はなき原田芳雄のジプシーな男臭さ。この時代でも抜きん出た男らしさと容姿端麗の男前。旅ばかりしては女を、刺激を求め、さ迷い歩く。

そんな自由な旅と、肉欲の先に見据える何か。肉を求めれば求めるほど、その内なる骨を求める――藤田敏八と共に私は生の本質を追ったが、分からずに終わる。

ただ魅了されていた己がいたこと以外。
ラストシーンの意味は一体、何か?
レコードに吹き込まれた呟きは?

霊的世界をこうした手法で80年代に描いたこと、さらに一歩間違うと単なるカルト映画でしかない本作が世間的に評価を得られたことに、一つの時代を感じる名作『ツィゴイネルワイゼン』だった。

kojiroh

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