『殺人の追憶』(2003年、韓国)―7.0点。元祖・韓国本場サスペンス


『殺人の追憶』(2003年、韓国)―130min
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ、シム・ソンボ
出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイルetc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

韓国の巨匠、ポンジュノ監督によるサスペンスの名作と名高い『殺人の追憶』。国際的にも評価が高く、韓国映画の代表的一作である本作を鑑賞。

軍事政権下で比較的治安のよかった80年代に発生し、10人の犠牲者を出した華城連続殺人事件を元に映画化した作品。『チェイサー』にも並ぶ、韓国の秀逸なサスペンスの元祖とも呼べるかもしれない。


◎あらすじ
1986年10月23日、ソウル南部の農村で手足を縛られた若い女性の無惨な変死体が発見される。また数日後には、同様の手口で2人目の犠牲者が出た。さっそく地元の刑事パク・トゥマンら捜査班が出動。だが、懸命な捜査も空しく、一向に有力な手掛かりが掴めず、捜査陣は苛立ちを募らせる。その上パクと、ソウル市警から派遣されたソ・テユン刑事は性格も捜査手法もことごとく対称的で、2人はたびたび衝突してしまう…。(ALLcinemaより引用)

緊張感溢れる捜査線上。
陰湿で暴力的な韓国人を象徴するかのような荒っぽい取調べ。ソンガンホの荒っぽい野暮な醜態がユーモラスにも思えてくる。

警察という権力組織が腐敗していると言える古いやり方と、新しいアメリカ的な知的な刑事の二人で事件を追うことになる。

「アメリカは広いから頭を使う。しかし韓国は狭い。だから足を使う」
捜査の謎を追う以上に、こうした細かい韓国の特性を浮かび上がらせるやり取りが面白い。それは、どこか韓国という国の異常性や問題をえぐっているように思えるのだ。

暴力的で猟奇的な民度、よくも悪くも特徴的な民族で、酒を飲んでは暴れ狂う姿が次第に滑稽にさえ思えてくる。『チェイサー』でも同様のことが言えるが、猟奇的事件を猟奇的に追う主人公たちが何より印象的なのだ。

容疑者は浮上しては消えてゆく……。
分かりそうで分からない犯人、捜査陣が警察という組織の中でもまれて、解決を断念せざるを得なくなり、狂わされる人生。つまり本作は犯人を追っているというよりも、その犯人を追う捜査官自身を追っている。

追われる人間ではなく、追う人間にスポットを照らす。
派手なドンパチやスリルある追いかけっこをするではなく、容疑者が次々と変わってゆくだけで物語は幕を閉じる。

こうしたスタイルは、後にハリウッドの『ゾディアック』に影響しているのではないかと思える。

後味の悪さがいかにも韓国映画らしい。

黄色い麦に囲まれた田舎で呆然とするソンガンホ。
なんだか北野映画の『3-4×10月』での沖縄でたけしが草冠をかぶって遊ぶシーンを思いだすような。畑の中で呆然とする表情がなんとも絵画のような芸術性がある。

映画のテーマ性や構成的にも、韓国風サスペンスの代表作なんだろう。

kojiroh

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