『ファイトクラブ』(1999年、アメリカ)―9.0点。物質社会からの脱出を掲げる名作


『ファイトクラブ』(1999年、アメリカ)―139min
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:ジム・ウールス
音楽:ザ・ダスト・ブラザーズ
主題歌:ピクシーズ「where is my mind?」etc
出演者:エドワード・ノートン、ブラッド・ピット、ヘレナ・ボナム=カーター、ミート・ローフ ETC

【点数】 ★★★★★★★★★☆ / 9.0点

鬼才、デビッド・フィンチャーによるカルト映画として名高い『ファイトクラブ』は、年をますごとに名声を高め、歴代映画ランキングでも必ず上位に君臨する近年のアメリカ映画の傑作と呼ばれている。

学生の時に一度見たのだが、社会人になってから見直してみると、新しい発見がたくさんある一作だった。特に社会や企業、資本主義への風刺が、年齢を重ねると共に共感性を増していることに驚く。


◎あらすじ
ジャック(エドワード・ノートン)は保険会社に勤めるヤング・エグゼクティブ。ここ数カ月は不眠症に悩み、さまざまな病気を抱える人々が集まる「支援の会」に通い始め、そこで泣くことに快感を覚えるようになる。そんなある時、出張先の飛行機でジャックはタイラー(ブラッド・ピット)と知り合う。フライトから帰ってくるとなぜかアパートの部屋は爆破されており、ジャックは仕方なくタイラーの家に泊めてもらい、殴り合いをすることになるのだが..…(キネマ旬報より引用)

現代社会、資本主義で働き消費を繰り返すだけの奴隷になっている現代人の闘争本能を目覚めさせる、それがファイトクラブ。去勢されたホワイトワーカーが、次第に暴力と狂気に目覚める姿が描かれる。反社会的な組織を結成する物語が、なんとも痛快というか風刺的で、『未来世紀ブラジル』であったり、『時計仕掛けのオレンジ』にも通じるテーマ性がある。


タイラーバーデンの強烈なキャラクター造詣は歴代映画史にも名を残す。物質社会を否定し、人間的自由を求める彼の言葉には哲学がにじみ出る。
「我々は消費者だ、ライフスタイルの奴隷だ!殺人、犯罪、貧困、何の興味も持たない、興味があるのは芸能雑誌やTV、下着のデザイナーの名前、毛生え薬、インポ薬、ダイエット食品、ガーデニング、何がガーデニングだ!タイタニックと一緒に沈んじまえばいいんだ!……」


放浪されるエドワード・ノートン。彼の語り口、ナレーションも言いえて妙で、仕事にライフスタイルが支配され、飛行機の中で一回分の友達を楽しむ遊びに興じるほど、物質的に豊かだが虚しい心を持て余している姿が、ユーモラスでもあるが会社員の悲しさを感じる。

仕事漬け、消費漬けによって支配されたライフスタイルと感受性、そして本能。不眠症に苦しみ、失われた感性を蘇らせるために男は動き出す。まずは「支援の会」に参加、そしてファイトクラブへ。現実にも起こりえそうな物語に、普通じゃないリアリティを感じ、それゆえこの映画が本物の反社会的映画になり得る所以ではないだろうか。ファイトクラブは実在し得る。


最後は女を選び、消費社会の元凶であるカード会社の崩壊を眺める。
ピクシーズの楽曲が流れ続けるラストシーンが忘れられない。

まさに模倣となる映画。
「ファイトクラブ」が本作の影響で生まれてもおかしくない。そう感じるほど現代の矛盾や自由への羨望を心地よく刺激してくれる。

Kojiroh

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