『ブレス 』(2007年、韓国)―85min
監督:キム・ギドク
脚本:キム・ギドク
出演者:チャン・チェン、チア、ハ・ジョンウ etc
【点数】 ★★★★★☆☆☆☆☆/ 5.0点
韓国の鬼才・キムギドクがこのたび『ピエタ』でベネチア映画祭グランプリという快挙を成したので、このたび筆者はギドク監督の作品を齧ってみようと適当にレンタル屋で見つけた作品を手にした。
◎あらすじ
死刑囚のチャンは、キリで喉を突いて自殺未遂を図り、声を失った。彼は残されたわずかな時間にまったく未練はなかった。夫と幼い娘と優福に暮らす主婦のヨンは、ある日夫の浮気を知る。まったく悪びれる様子のない夫に怒りを覚えた彼女は、偶然テレビのニュースで知った、死刑囚チャンの自殺未遂に不思議な同情を覚え、彼に会うために刑務所に向かった。チャンの昔の恋人だと偽り面会を果たしたヨンは、次第に彼に惹かれていき…。(Goo映画より)
春夏秋冬。韓国風の季節の移ろいと愛情の揺れ動きが美しくもある。
チャン・チェンはカッコイイ。渋い。同性愛者からもてる理由もよく分かる。
しかし、どうもチアが日本人の感覚からするとブスだと見えてしまう。それはいいんだけども、彼女が彼のために劇をするシーンが、個人的にはかなり寒い。しかもチアがやっても全然可愛らしくなく、なんともいえない気持ち悪さを覚えてしまった。さらに同性愛の男の気持ち悪さと陰湿さも群を抜いている。グロテスクと呼べる。
なんというか芸術性は認められる。独創性も、ゲイの愛の描き方も。さらに監視カメラ越しの映像を眺める謎の監視の視点が入ってくるあたりに、今まだになかったアイディアを感じる。この視点の置き方がなんともいい。
だがしかし、やはり気持ち悪すぎる。シチュエーションもさることながら、人間の愛情と利己的な家庭の描き方も、とにかくえぐい。暴力シーンが激しいわけではないが、残酷で救いようのない映画だ。
『アンチクライスト』の残酷さと救いのなさ、それと『スプリングフィーバー』の同性愛的表現がさらに気持ち悪さを増して描かれるといえば分かりやすいかも。好きな人は好きだとは思うが、賛否両論であろう。残念ながら、わたしは無理だった…。
キム・ギドク監督の才気は感じられるが、あまりにも暗く、グロテスクとも言える愛憎劇はメンタルにこたえる作品にしかならなかった。寡黙で美しく頭に残る映像もあるんだけれど……。
kojiroh