『シックスティ・ナイン 6ixtynin9』(1999年、タイ)―114min
監督:ペンエーグ・ラッタナルアーン
脚本:ペンエーグ・ラッタナルアーン
出演:ラリター・パンヨーパート、タッサナー・ワライ・オンアーティットティシャイ etc
【点数】 ★★★★★★☆☆☆☆/ 6.5点
6が、9になる。
よくネタになる世界共通の数字遊び。If 6 was 9.こんな曲もあったなと思い出すような、6と9を間違えたことによるタイのサスペンス映画が本作。鬼才、ペンエーグ・ラッタナルアーンの長編第二作にして、タイのタランティーノと形容され、国際的にも評価を得た出世作。
カルト映画な本作を、筆者は渋谷のツタヤで発見して早速鑑賞。
◎あらすじ
ファイナンス会社の秘書として働くトゥムは、ある朝突然リストラされる。ショックから自殺まで考える始末。その翌朝、彼女のアパートのドアの前に段ボール箱が置かれていた。中にはなんと100万バーツの大金。その金はヤクザの運び屋が9号室に届けるハズの金で、たまたま彼女の部屋の番号札のクギが外れて6が9になっていたための間違いだった。そうとは知らずに喜ぶトゥムだったが……。(All cinemaより引用)
『エルマリアッチ』を思い出すような、低予算かつ自主制作の臭いがする映画だが、よくできたサスペンスだった。
ドアの前のショットがこれほど印象的な映画はなかなかない。奇抜なアイディアと現実感のない、現実と幻想・妄想が入り混じるシーンが、何が本当なのか観客を惑わす。
漫画のような展開で次々と死体の山が築かれる。明るい物語でないが妙に笑えるのが、タイ人の「マイペンライ」なノリなのだろうか。タイ王国が好きな筆者としては非常に楽しめる映画であった。
タランティーノ的なユーモアと爽快なタッチ、入り組む複数の人物とエピソード。
タイの文化を取り入れつつヒッチコックやデ・パルマ、タランティーノ的な映画に挑戦したことは評価できる。カギや足、電話など、極端なズームアップのショットはなかなか。黒電話のベルが鳴り、リボルバーを口に入れるシーンなんかは一級だ。
この作品全体の空気観なんかはいいのだが、しかしやはり脚本があまりにも漫画すぎるというか現実感なさすぎて、登場人物もアホすぎる。ギャグのようなレベルなのだが人が死にすぎるし、なーんかどっぷりこの世界にはまる事はできないサスペンスだったか。
といっても印象的な場面も多く、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督の才気を十分に感じる傑作であることは疑いようが無い。最後のこの一文の挿入なんかはセンスを感じた。
“神様が贈り物をくださる時は、同時にムチもお与えになるものだ”
――トルーマン・カポーティー(小説家)
※参考 インタビュー@『ヘッドショット』東京国際映画祭
http://2011.tiff-jp.net/news/ja/?p=4597
kojiroh