『うつせみ』(2004年、韓国=日本)―70点。寓話的な韓国愛物語

『うつせみ』(2004年、韓国=日本)―88min
監督:キム・ギドク
脚本・編集:キム・ギドク
出演:イ・スンヨン、ジェヒ、クォン・ヒョコ、チュ・ジンモ、チェ・ジョンホ etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

韓国の鬼才、キムギドグが第61回ヴェネチア国際映画祭で監督賞を受賞した『サマリア』に並ぶ傑作『うつせみ』。

空蝉(うつせみ)とは、なんぞやと思って調べると、”この世に生きている人間。古語の「現人(うつしおみ)」が訛ったもの。転じて、生きている人間の世界、現世。うつそみ。” とある。意味深で伏線のようなタイトルであることは鑑賞して知ることになる。


◎あらすじ
留守宅に侵入してはシャワーを浴びたり食事をしたりという行為を繰り返しながら転々と放浪生活を続けるミステリアスな青年テソク。ある時、いつものように空き家だと思い込み忍び込んだ豪邸で、テソクはその家の住人ソナに遭遇する。彼女は独占欲の強い夫によって自宅で監禁状態にあったのだった。生気がなく抜け殻のようなソナ。やがてテソクは夫に虐げられたソナの悲惨な結婚生活を目の当たりにすると、彼女を屋敷から連れ出してしまい、ソナと2人で留守宅を転々とするようになるのだったが…。<allcinemaより引用>

ユニークかつ絵画のような構図で見せるギドクの作家性が溢れる。
とにかく寡黙で美しい作品。まるで童話のようであり、寓話的でもある。


主人公はアダムとイブのようにも思えるほど神秘的で、一切会話を交わさないのに分かり合える。北野映画も寡黙であるが、『HANA-BI』の夫婦以上に会話を交わさず、見ていてじれったいが、感情の動きが見事に映像とシーンによって分かる。まさにギドク監督の映画手法の匠。現実離れしたあまりに突拍子な設定には違和感があるけれども、とにかく表現としては圧巻である。


ジェヒの美少年っぷりと、高貴で知的な純粋さには惹かれる。だが高学歴でなぜこのような放浪生活をしているのか、何で食っているのかなど、現実的な根本は一切明かされない。後味が悪いようで、彼こそが「うつせみ」の幻想でもあるかのように思える。

それにしてもギドク監督は驚くほど繊細で、几帳面で神経質な映像を生み出す。それは彼自身がそうなのだろうか、洗濯を手洗いでするシーンや、植物に水をかけ、ドライバーなどで器用にモノを改造するシーンなど、何を見ても几帳面すぎるほど几帳面で印象深い。

『ソマリア』など他の作品でもそうだが、何かしらの図画工作や作業のシーンが神経質なほど几帳面なのだ。

またゴルフボールが凶器になるシーンなど、そのアイディアの奇抜さと、それを見事に物語に導入して重要なツールにしてしまうなど、常人離れした作家性だ。


『ブレス』でもそうだったが、醜い夫、冷め切った韓国の家庭を描くのが皮肉なほどうまい。最終的には醜い夫、男をぼこぼこにするかのように、意外な結末を迎えることになる。

90分とない尺で、ギドク監督は不思議な夢を見せてくれるかのような作品を作り続けるが、本作は最も寡黙で奇抜で、この世の何が幻想と現実なのか問いかける。あまりに現実離れしたラブストーリーであるが、この奇妙な夢のような世界観にはただただ才気を感じる。

kojiroh

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