『インビジブル・ウェーブ』(2006年、タイ)―70点。浅野×雰囲気系ロードムービー


『インビジブル・ウェーブ』(2006年、タイ)―115min
監督:ペンエーグ・ラッタナルアーン
脚本:プラープダー・ユン
撮影:クリストファー・ドイル
出演:浅野忠信、カン・ヘジョン、エリック・ツァン、光石研、マリア・コルデーロ 、トゥーン・ヒランヤサップ、久我朋乃etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

タイ映画のニューウェーブ、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督が、『地球で最後のふたり』に続き、浅野忠信とタッグを組んだ作品。日本ではほとんど話題にもなっていないが、国際的にも独自の評価を持つ一作だ。

普通のレンタル屋にはないが、渋谷ツタヤに並んでいたので筆者は早速鑑賞。


◎あらすじ
香港のレストランで料理人として働くキョウジは、店主であるボスの妻と秘密の情事に溺れていた。しかし、ボスから彼女の殺害を命じられ、やむなく毒殺を実行する。任務を果たしたキョウジは、ボスから休暇を言い渡され、タイのプーケット島へと向かう船に乗り込む。船上で彼は、ミステリアスな女性ノイと出会うが…。<ALL cinemaより引用>

香港とタイを舞台に、国際色豊かな映像美を見せる。
『インファナル~』のエリック・ツォンも出演しているあたりが思わずにやり。

冒頭からとにかく独自の薄暗い撮影・色彩、静寂な音楽でムードを引き立てる。『地球で最後のふたり』と同様のテイスト、同様の主人公で、アナザーストーリーのような印象を受けた。

ストーリーはあるようでない。特に前半のくだりは映像遊びというか、ほとんど意味のない冗長さが目立つ。マニアには嬉しい遊びだが、ほとんど退屈なシーンの連続には少し疲れるかもしれない。

本作は完全なる雰囲気系の映画だが、ロン毛の浅野忠信の存在感と、フォーカスを巧みに動かすクリストファードイルの撮影、そしてラッタナルアーンの遊びがきいた演出には、正直、ファンにはたまらない。

そして人生の本質に迫るような格言が散りばめられていて、なんだか記憶に残るシーンがある。

プーケットのロケもいい。タイ王国好きな筆者にはたまらない。
カラオケを歌う光石研も怪演であるがハマッている。後半、ストーリーが加速し始めて収束に向かい始め、ようやく面白くなってくる。

それにしても、
ラッタナルアーンの作品には全般、仏教的観念が深く結びついている。罪はいつ許されるのか?「悪い事をしてきたから、いかに退屈なであろうと、罪滅ぼしとして辛い仕事をしている」と淡々と語る船上のバーのマスター。仏教的なカルマの観念を感じる。

シリアスなようで、寡黙なようで、しゃれたおしゃべりや南国っぽいユーモアがある。やるかやられるかのシーンでも、奇妙な間と、人生に対する悟りのようなおかしさで、独特のテンションを作品全体に漂わせる。

一般受けはしないカルト映画であるが、浅野と光石など日本勢を始め、アジア異国の才能が集結して生まれた一つの異色なロードムービーとして意味のある一本だと思う。

『地球で最後のふたり』でもそうだが、この監督の作品にはなぜかもう一度見たくなるシーンがあるのです。

kojiroh

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