『アウトレイジビヨンド』(2012年、日本)―8.0点&7.0点。平成の「仁義なき戦い」、新領域ヤクザ映画


『アウトレイジビヨンド』(2012年、日本)―112min
監督:北野武
脚本:北野武
音楽:鈴木慶一
出演:ビートたけし、西田敏行、三浦友和、加瀬亮、中野英雄、松重豊、小日向文世、高橋克典、桐谷健太、新井浩文、塩見三省、中尾彬、神山繁 etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点
※リアルタイム映画評

今年、最も公開を楽しみにしていた『アウトレイジ』の続編。
2年を経て、丁寧に豪華キャストで作られ、さらにエンタメ寄りな作品ながらもベネチア映画祭に出品し、たけしらしからぬほど宣伝し、初登場一位を記録し、オフィス北野としては異例なヒット。前評判のよさなどに期待を胸にしていた筆者は新宿のピカデリーで鑑賞した。


黒塗りの車、赤いタイトル、黒いスーツのヤクザたちと罵倒。静に鳴り響く鈴木慶一のサウンド。冒頭から圧巻のテンション!

◎あらすじ
関東最大の暴力団組織・山王会の抗争から5年。関東の頂点を極め、政治の世界に進出するなど過剰に勢力拡大を進める山王会に対し、組織の壊滅を図る警察が動き始める。関西の雄ともいえる花菱会に目をつけた警察は、表向きは友好関係を保っている東西の巨大暴力団組織を対立させようと陰謀を企てる。そんななか、以前の抗争中に獄中死したはずのヤクザ・大友が生きていたという事実が持ち出され、突然出所を告げられるのだが……。(映画.comより引用)

所感、前作よりもシリアスに、ハードボイルドになった。
女っけなし、笑いなしの男たちの生き様にしびれる。
大友と木村。二人の熱い絆による復讐劇でもある。前作以上の冴えた演技を見せる中野英雄はたけしよりも本作では中心にいる。

そしてジェームズ・エルロイ的な悪徳警官っぷりに拍車がかかる、小日向こそが本作の最重要なキーマン。

前作で関内会長が担っていた黒幕的な役割を、本作では片岡刑事が担うかのごとく、動き回り、部下を罵倒し、シナリオを練る。情や仁義などみじんもない、金と権力で動く悪徳っぷりは前作以上に冴えている。

前作の路線と似ているようでまた違った新領域に、色々と意表を突かれる映画であった。とりあえず2時間ハイテンションでアウトレイジの世界に引き込まれて、エンディングで驚愕というか唖然、という鑑賞。

新井や西田など、豪華なキャストが、各々情のあるやくざと経済やくざの悪役たちを演じて対峙し、罵倒と暴力、そして死体の山が築き上げられる。前作以上のスピード感で疾走する。


西田と塩野の関西ヤクザのコンビが特に秀逸な罵倒劇を見せてくれた。

反面、前作のキャストで目立った三浦と加瀬は、本作では追われる役になるので少し失速気味で、前作のような裏で陰謀を企てる黒さと怖さが役柄的にもパワーダウン。加瀬が本作では常にキレているので、唐突にキレる前作のような怖さがなく、少し残念。

どうも全体的に登場人物が多すぎて、詰め込みすぎで喋りすぎの印象もあった。
本来の北野映画が持つ作家性や映像や構図の美しさ、または独自のユーモアやギャグなど、前作ではうまく調和が取れていた要素は、「ビヨンド」ではすっかり影を潜めてしまった。

よりシリアスな本格ヤクザ映画になったと喜ぶべきか、しかしこの男臭さと悪い陰謀を潜ませつつ怒鳴り、罵倒し、とにかく唯一無二と思えるテンションには前作のファンとしては興奮。冒頭からボルテージマックス。(むしろ冒頭が最もテンション高かったかもしれない…)

Vシネでしか再現できない類の暗黒映画のような内容を、スクリーンで全国に上映して見れることは、新しい時代の何かを感じる。そして笑ってしまうぐらい大物がすぐに死んだりして、こんなのはきっと北野武にしかできないであろう。

ネタバレになるが、最後は唐突で、何やら次回作を彷彿させる。たけしが編集中に次のアイディアを思いついてあえてあのラストにしたんじゃないかと思えるほど。

また次も、最後に死んだ彼が、実は何かしらのカタチで生きていた、という内容ではないかと色々と想像が広がる。とにかくアウトレイジの世界はまだまだ続くことに期待したくなる世界のキタノの新領域だった。

kojiroh

◎クロスレビュー(編集員マルクス氏)
【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

その日、腹をナイフで刺される夢を見た。
その後思いっきり切り裂かれ、救急車で運ばれてから無麻酔で縫合されるという荒療治を受けたところで目が覚めたのだが、最早その時点でアウトレイジビヨンドなんざ怖かねえという気分に満ち満ちていた。鑑賞のコンディションとしては最良に近い。という覚悟と期待を込めて見に行ったアウトレイジビヨンドではあるが、実際観てみれば前作で言う歯医者やラーメンのような露悪的なシーン(ただしここで言うのは、悪趣味とか俗悪とかの「悪」だ)はなりを潜め、ひたすらヤクザ同士の殺しに傾注する映画に変化しており肩透かしを食わされた。

死んでも構わんとばかりに痛めつけた結果死亡ではなく、はじめから殺すつもりでやっているシーンばかりなのである。独創的な殺し方はあって楽しめたのだが、殺しシーンの総数が多すぎて全体では埋もれてしまう。ヤクザの抗争を淡々とドキュメンタリー的に撮った映画にすら見えてくるくらいだ。

が、そうなって来ると違和感を感じるのが主人公の大友だ。組をほぼ皆殺しにされてすっかり隠居気分になった大友の言動は、前作では匂わせる程度にとどめていた古き任侠道を強く推しており、はっきり言ってこのシナリオにはそぐわない人物となってしまっている。

「ヤクザにも守んなきゃいけない道理ってのがあるんだよ」
これは言わせてはいけなかったはずだったのだ。そうでなくても大友を無理にかっこ良く描きすぎだったのだが、この台詞で大友は完全に、なにかのコピーキャットに堕してしまった。

ただ、大友自身がヤクザとしてのモチベーションを完全に失っている描写も多く、であれば逆に意図的に「かくあらん」という意思を込めていたのだとすれば、逆にその齟齬は埋まり、綺麗に収まるのだが……だとしたら、そこはもう少しとっかかりが欲しかったところではある。

ある意味見所なのは前作に引き続き、石原だろう。前作では美人局の女は用意しても男を用意し忘れるなど絶妙に気が利かないながらも、こんな小さな組で金庫番をやっているのが不思議なインテリぶり(英語が喋れるとか)を見せつつ、経済ヤクザとして暗躍し、数少ない生き残りとなった。

一方今作では、哀れすっかりおかしくなってしまい、スポットが当たるシーンの9割ではひたすら部下に喚き散らし、無茶苦茶な罵声を浴びせるだけの存在と化している。役者に「若頭の器ではなかったんでしょう」とまでコメントされる様には思わず涙を禁じ得ない。

あんなに美味しいキャラだった石原もこのような大雑把なキャラ付けをされ、主人公の大友はやる気を失い、前作では大友と対立し、序盤で事実上退場した木村は大友を慕い今作ではタッグを組むが、はっきり言って説明不足と言わざるをえない。刑事の片岡は相変わらず小物で良かった。

前作の時点で「大物は死に小物が生き残る」という形をとった以上必然かもしれないが、本作の登場人物は皆、器ではなかったのだ。あるいはアウトレイジも、続編の器ではなかったのかもしれない。
※グバナン大使は出ません。

by マルクス氏

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