『LIE LIE LIE』(1997年、日本)―9.0点。VHSしかない豪華制作陣のカルト映画


『LIE LIE LIE』(1997年、日本)―123min
監督:中原俊
原作:中島らも
脚本:伊丹あき、猿渡學
出演:鈴木保奈美、豊川悦司、佐藤浩市、中村梅雀 etc

【点数】 ★★★★★★★★★☆/ 9.0点

中島らもの直木賞候補作、『永遠も半ばを過ぎて』の映画化。
監督は『12人の優しい日本字人』『桜の園』でおなじみの中原俊。
主演の3つ巴は日本の一時代を代表できるお三方。今では有り得ない豪華キャスト。大きな受賞やヒットにはならなかった、実に不遇な一作であるが、筆者にとっては、なぜか心引かれる大好きな作品。

一部でカルト的な人気はあるが、あまりにマイナーなために未だDVD化されていない不思議な一作である。(*ネットでもほとんど画像や動画がなく、映画人としても画像収集が困難でした…)

◎あらすじ
不眠症の電算写植オペレーター・波多野は、昼も夜も黙々と写植を打つ日々を送っている。その彼のもとに高校時代の同級生・相川が現われ、生鮮食品買い付け会社の代表取締役をしていると説明し、商売の種である珍種の貝を預けていった。その貝を腐らせてしまって以後、相川は何となく波多野の所に居つくようになる……<Goo映画より引用>

何はともあれ、キャストが素晴らしい。
主演から脇役まで、上田 耕一、大河内浩、山下容莉枝、『12人の優しい日本人』に登場していた名わき役が揃ってい、活き活きとした演技を見せてくれる。今や表に出ることが無い鈴木保奈美を始め、大御所俳優になったトヨエツ&佐藤浩一。このメンツが集まったことがすごい。

気だるく流れるBONNIE PINKの楽曲がまた秀逸。
色々とごちゃごちゃに豪華キャスト、制作陣を集め、秀逸な原作の映画化を試みた。まとまりには少し欠けるが、十分面白い中島らもワールドの再現映画になっていると思う。

詐欺の手法はなかなかリアル。豊川悦司にしてはコミカルでメガネの地味な役柄だが、怪演とも呼べるレアなハマリ役だ。

とは言っても、ヒットするにはあまりにアングラな世界を描いた作品か。
詐欺師の手口と、面白おかしい展開にはポップさがあり、かなり笑えるのだが、やはり映画マニア向けの一作か。構成も一回見ると、時空が交錯していて少し分かりにくい。そしてキキのシーンはあまりに冗長で長すぎて蛇足感があるのが唯一残念なところ。

しかし中原俊監督の演出力も地味に遊びが効いていて面白い。
イカ墨パスタで「どろどろ」になる食事シーンのインパクト、写植屋の事務所で紙ヒコーキで遊びながら打ち合わせをしたり、インスタントコーヒーを美味しく作る方法を語ったり、好きな人は本当にハマる。遊び演出を発見する楽しさがある。

VHSしかないカルト映画になっている残念な本作『Lie Lie Lie』。何より、個人的にタイトルがいけないと思う。やはり中島らもの原作のチカラが大きな原作に忠実な作品なので、素直に『永遠も半ばを過ぎて』でよかったんじゃないだろうか。

写植屋の単調な仕事に抑圧された本能が薬によって語り出す。
不眠症によって感度を増す脳みそ。

うーん、なんて面白い世界観、奇抜なストーリー。原作の中島らもの世界観と哲学、あとは主演三人の輝きは、何度見ても面白い。

最後に、鈴木保奈美は奥さんにとどまるには勿体無い、癖のあるいい女優だったなとつくづく感じることのできる貴重な一本です。

kojiroh

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