『悪い男 』(2001年、韓国)―8.0点。悪すぎる韓国男の純愛物語


『悪い男 』(2001年、韓国)―100min
監督:キム・ギドク
脚本:キム・ギドク
出演:チョ・ジェヒョン、 ソ・ウォン、チェ・ドンムン. etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

悪い男。
つーかもうひどい男。残酷で凶暴すぎる男。
憎悪が愛に変わる瞬間を描いた、究極の純愛物語。
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チョ・ジェヒョンの狂気的な暴力と愛がスクリーンに映し出される。

ベルリン国際映画祭に出品され物議を醸したキムギドグ初期~中期の傑作。

●あらすじ
売春街を取り仕切るヤクザの頭ハンギが、昼下がりの繁華街を彷徨っていた。やがて彼は一人の女性に眼を奪われる。しかし、その女子大生ソナはハンギに侮蔑の視線を向けると、待ち合わせていた彼氏のもとへと駆け寄る。その時、ハンギは強引にソナの唇を奪う。周囲は騒然となり、取り押さえられたハンギは男たちから袋だたきにあう。ソナにも唾を吐かれて罵られ、深い屈辱を味わう。抑えがたい復讐心と所有欲に駆られたハンギは、その後ソナを策略に嵌め、売春宿へと売り飛ばしてしまう。そして、見ず知らずの男に抱かれるソナを毎日マジックミラー越しに見守るのだった…。

韓国の置屋。はめられて売春させられる女子大生ソナ。
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とにかく生々しいの一言。
ひどい話であり、初体験で犯されるように売春するソウォンの演技は圧巻というべきか、とにかく舌を巻くほど迫力があり、性の生々しさを感じる。
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この妖艶な悲劇に、どう反応していいか困るほど。
『サマリア』でも同様だが、韓国の売春の社会問題を風刺しているようで、ヤクザ世界の底辺に落ちることで垣間見える人間の本質に迫ろうとしているように思える。

マジックミラー越しに覗き見る、女の変化。
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最後はそれを叩き割る。
モチーフとすべき小道具などが周到に用意され、登場人物の感情を指し示す。ページを破り取った美術本から曲がった釘、顔のない写真から、すべてが伏線のように用意周到にキムギドクワールドを完結させる。

相変わらず主人公は罰ゲームであるかのごとく喋らない。
キムギドク節だ。自分が喋らず回りの子分に喋らせることで、べらべら喋る以上に強烈な感情表現を成すとでも言おうか。清原みたいな顔をしたヤクザそのもののチョ・ジェヒョンの表情が悪いが深みがある。ペラペラ喋り捲る子分と、冷徹な暴力で応えるハンギ。

冒頭からソーセージ串をくわえながら一目ぼれし、暴力的に口付けするシーンなんかは常識では考えられないような展開で意表を突かれる。圧巻だ。

そして唾をはきかけるソ・ウォン。韓国女の気の強さを象徴するかのような韓国独自のリテラシーが爆発し、えげつないが引き込まれる。

暴力もガラスを切ったもので刺されたり、すぐに殴る蹴る、拉致監禁まがい。『息もできない』に並ぶ暴力描写が痛々しくも生々しい。

さて本作は純愛物語といわれる。
しかし筆者は、むしろ女性を洗脳する自己啓発的映画とも読み取れる。つまり不安定な心を持つ女性の不安や依存心を逆手に取り利用し、最後は自分のモノにする、そんな利己的な悪い男たちをあたかも愛であるかのように描く、そんな洗脳肯定的な映画であるのではないか。

しかし世の中というのはそうした洗脳的な愛が多く語られ、実存している。
洗脳であっても、幸福を感じられればそれでいいのではないだろうか。
ヤクザと売春に巻き込まれたソナのハッピーエンドというかバッドエンド。

ま、そうした解釈は色々あるが、とりえず無数のアイディアが散りばめられ、一言しか喋らない主演のチョ・ジェヒョンが迫真の貫禄を見せる、とにかく素晴らしい映画だ。

酷い物語で好きではないが、何故か魅了されていた。

kojiroh

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