『ホワイトハウス・ダウン』(2013年、アメリカ)―131min
監督:ローランド・エメリッヒ
脚本:ジェームズ・ヴァンダービルト
出演:チャニング・テイタム、ジェイミー・フォックス、マギー・ジレンホール、ジェイソン・クラーク、リチャード・ジェンキンス etc
【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.5点
*リアルタイム映画評
製作費1.5億ドル。クソ映画ラッシュのこの夏、最も注目されている1本。
クソ映画の金字塔・「インデペンデンス・デイ」「2012」のローランド・エメリッヒ監督がテロリストに占拠されたホワイトハウスを舞台に贈る一大スペクタクル。
ホワイトハウステロという政治的なテーマも内包していそうな、陰謀系大スペクタクルかつ150億近い製作費でエメリッヒ監督が作っているのでかなり期待ができるなと、筆者はまたしても劇場に足を運んだ。
◎あらすじ
議会警察官のジョン・ケイルは、娘エミリーが憧れるジェームズ・ソイヤー大統領のシークレットサービスになるべく面接に臨むも不採用に。しかしエミリーの悲しむ顔を見たくないケイルは、一緒にホワイトハウスの見学ツアーに参加する。ところがその時、突然の大爆発とともに謎の武装集団が乱入し、ホワイトハウスを占拠するのだった。この大混乱の中でエミリーと離ればなれとなってしまったケイル。娘を助け出したい一心の彼は、やがてソイヤー大統領の窮地を救うと、2人で協力しながらテロリストたちに立ち向かっていくのだが…。
<allcinema>
さて所管、盛大に笑った。
これぞまさにクソ映画中のクソ映画。主演はそんなイケメンでもなく冴えないが、突然目覚めたように危機を勇敢に乗り越える。さすがエメリッヒ監督。クソ映画を突き抜けることで笑わせてくれる。
主演のチャニング・テイタム。
エメリッヒ監督の作品って絶対に主人公がさえないが、危機的状況になるとき急に目覚める系なキャラが多い気がする。『2012』しかし。最初はダメだなと思うのだが、クソ映画らしい主人公の無敵なベタさが、だんだんと愛らしく思えてくる。
150億円ものカネがかかってるからスペクタクルとしても迫力ある。
ジャンゴのジェイミーフォックスの大統領役もなかなか笑える。エアジョーダンで出陣する場面なんかはシュールで受けた。全般的にサスペンスというかギャグ映画だと思える。てかホワイトハウスが簡単に乗っ取られすぎて、警備がザルすぎだろとか、裏切り者多すぎだろと突っ込みたくもなる。
テロ現場のニュース報道、特に娘のyoutubeシーンなんかも現代っぽいシチュエーションで、「もしもホワイトハウスで人質テロが起きたら?」をリアルな疑似体験できる作りになっている。こういうスタイルはエメリッヒ監督の真骨頂かもしれない。
まあクソ映画にしては130分もあり、やや中だるみもだるいが、個人個人のキャラが立っていて面白い。娘が国旗を振ったりするシーンも爆笑ものでかわいく思えてく来るし、ツアーガイドが最後奮起した場面なんかも爆笑。ハッカーもイカレっぷりが面白いし、最後は謎に爆破しちゃうし、エメリッヒ監督はわき役に感情輸入したくなる映画が多いなと。
ブラックホークダウンのごときヘリ墜落から飛行機墜落。パニック映画の18番をこれでもかと盛り込んでくれる。
*へリの墜落シーン。撃ち落とされるヘリはもろ『ブラックホークダウン』。
それにしてもエメリッヒ監督は、というか本作は、アメリカの陰謀を描きたかったのかもしれない。
ここ2013年に「エンド・オブ・ホワイトハウス」と共に、ホワイトハウス・テロを題材にした作品が相次いで作られたことは、何か意味があったのではないかと思う。
2013年、ボストンテロ事件が起きた。これは犯人が逮捕されたが、陰謀説があり、テロ警戒することで軍事費を調達するための自作自演だったという説もある。テロ事件を起こすことで既得権益を守ろうとする闇の勢力の存在は否定できない。アラブを敵対するとうより、アラブを敵対するアメリカ軍に対する皮肉がこもっているようにも思う。
このホワイトハウステロ事件も、そうした軍需系の利権団体と何かしら関係している気がする。実は表には出てないが、テロ計画が実施されようとした過去があるのかもしれない。表にはでていないが。
そんなわけで、カネをかけた迫力シーンを楽しめ、盛大に笑える場面も多々あり、さらに陰謀をも感じる、クソ映画としては大満足なデキであった。
kojiroh