『そして父になる』(2013年、日本)―120min
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
出演者:福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー etc
【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点
Like Father, Like Son・・・英語のタイトル。
「誰も知らない」の是枝裕和監督が、福山雅治を主演に迎えて贈る感動の家族ドラマ。共演は尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー。カンヌ国際映画祭でみごと審査委員賞を受賞し、国際的な舞台でも大きな話題となる。
スティーブン・スピルバーグも感動し、リメイクが決定した。日本においてもヒットを記録、是枝作品としては最高レベルの一作といえるかなと思った。
●あらすじ
これまで順調に勝ち組人生を歩んできた大手建設会社のエリート社員、野々宮良多。妻みどりと6歳になる息子・慶多との3人で何不自由ない生活を送っていた。しかしこの頃、慶多の優しい性格に漠然とした違和感を覚え、不満を感じ始める。そんなある日、病院から連絡があり、その慶多が赤ん坊の時に取り違えられた他人の子だと告げられる。相手は群馬で小さな電器店を営む貧乏でがさつな夫婦、斎木雄大とゆかりの息子、琉晴。両夫婦は戸惑いつつも顔を合わせ、今後について話し合うことに。病院側の説明では、過去の取り違え事件では必ず血のつながりを優先していたという。みどりや斎木夫婦はためらいを見せるも、早ければ早いほうがいいという良多の意見により、両家族はお互いの息子を交換する方向で動き出すのだが…。
<allcinema>
うーん、しまったな。
これを去年見てたら、パシフィックリムに並ぶかちょっと超える、2013年の個人的なベスト映画だったなと思います。
しかしすごくいやらしい映画、というか人間の闇というか嫌な部分、さらけ出したくない部分をさらけだす映画でもある。
オープニングのめでたい受験合格シーンから一気に問題が勃発してドロドロの家族崩壊ストーリーになるその落差がすごくえぐい。
「いいか、血だ。人間もウマと一緒で、血が大事なんだ」
子供は反発しつつも親に似てくるもの。
子供の成長に重要なのは、教育環境か、DNAか、という議論で、これは人種差別にもなりうる難しい話、かつ普遍的な議論である。
個人的にも、監督自身も、道徳的には教育環境を信じたいが、「血」の宿命というのは年を重ねるごとに重要性を実感してくるものであろう。
子供の純粋さや無垢さを描く事が多い是枝監督だが、その技が最高レベルまで達したのが本作かもしれない。
ある意味で、暴力的な映画ではないが、極めて残酷な映画だ。
残酷映画をみるよりも残酷なのだ。このドロドロとした人間関係模様が。エリートと底辺な家庭の対比が特に残酷で感受性に響く。
福山の家の一家の黒いレクサスと、リリーフランキーの家の軽自動車。この対比がなんとも皮肉でブラック。レクサスが妙にかっこよく見える。もはや大スポンサー?
しかしこの家族2人組の奇妙な関係というか、人間模様も現代的な神経質な感じもあっていい。小道具もこじゃれていて、100均一のようなみすぼらしい財布を使う、リリーフランキーの卑しくも明るいいわゆる底辺なかんじの家族がすごくリアル。
リリーフランキーの奥さんにしては、真木は美人過ぎるけれども・・・。まあ細かい突っ込みは面白いし、日本アカデミー賞取ったレベルで忘れられない怪演をしてくれたので一見の価値ありだと思います。
「こども」と「おとな」の難しい世界の表現に昔から挑み続ける、
世界の是枝の集大成でもあり最高傑作かなと思いました。
_追記
あ、忘れていたが、脇役どころでも、国村隼人の演技が貫禄でした。
福山の上司役で、ところどころのコメントが時代を表していた。
「あなただって僕みたいに突っ走ってきてきたんでしょ?」
「今はそんな時代じゃねえだろ。時代が違うよ、時代が」
そんな成長鈍化の先進国的なやりとりも、また一つ本作が先進国受けする一因かなと思った。
kojiroh