『羅生門』(1950年、日本)―90点。黒澤×芥川文学 ベネチア受賞作の歴代最高傑作


『羅生門』(1950年、日本)―88min
監督:黒澤明
脚本:黒澤明、橋本忍
音楽:早坂文雄
撮影:宮川一夫
出演者:三船敏郎、森雅之、京マチ子、志村喬 etc

【点数】 ★★★★★★★★★☆/ 9.0点

かつて、2008年にデジタルリマスターが出て劇場へ見に行ったこともある、日本映画屈指の名作。

60年以上前だが、80分弱というフィルムの中に、映画史を変えるようなインパクトのある映像と演出、アイディアを詰め込んだ、ベネチア歴代最高レベルの受賞作であることも納得の一作。

今更ながら歳を重ねてから見返すと、新たな発見や感動があった。

◎あらすじ
芥川龍之介の短編『藪の中』をもとに映像化。都にほど近い山中で、貴族の女性と供回りの侍が山賊に襲われた。そして侍は死亡、事件は検非違使によって吟味される事になった。だが山賊と貴族の女性の言い分は真っ向から対立する。検非違使は霊媒師の口寄せによって侍の霊を呼び出し証言を得るが、その言葉もまた、二人の言い分とは異なっていた……。ヴェネチア国際映画祭でグランプリを受賞した、黒澤明の出世作。

<allcinemaより引用>

ぼろぼろの羅生門と、降りしきる雨。
木片をちぎって火を起こす野暮なシーンもなんだか忘れられない。
雨宿りをしつつ、回想されるその構成も素晴らしい。

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監督の黒澤も素晴らしいが、何と言っても宮川一夫の撮影だ。モノクロで、太陽光を交えて、早坂文雄の音楽で森の中を志村喬が歩いてゆくシーンの迫力、劇場で見たときはさらに圧倒された。

羅生門と藪の中という芥川の傑作2つを旨く入り交ぜた構成も、すごいなと。本当に。2014-05-07_140422

三船の野蛮な盗賊役は、その後の7人の侍の原点とも言える。衣装の肉体の野暮ったさ、しかし鍛えられて男らしいその姿は彼特有の個性だ。

そして京マチ子。この妖艶な演技、そして女の怖さ・・・モノクロでも伝わってくる。2014-05-07_140312

3人の証言から回想し、最後は志村喬・・・もうなんか、ぞっとするものがあった。死後まで引きずる人間のエゴと、視点の違い。この世の伝えるもので、いい加減なものが如何に溢れているのか、この世にはエゴが満ちている。

当たり前な残酷な真実を、単純かつ洗練されたストーリーで90分以内にフィルムに映したのは偉業であろう。

ワンシーンワンシーンがアイディアに満ち、絵画のように完璧な構図になっている。

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映画の技術が進んだ現代、データ量が無数に広がって無限に可能性が広がった。しかし、この羅生門を越える作品が本当の意味で生まれたのか?

テクノロジーの向上は必ずしも芸術性を高めるわけではない。

むしろ現在は機械を使って色々とできるからこそ、逆に手抜きによる映画が増えている。人件費を削減して、CGで代用し、どうも人間特有の「間」であったり「緊張感」がもたらす迫力が足りないなあと。

そんな映画の原点にして真髄に迫れるものが、羅生門にはあるなと思った。

過去の遺作を見ることで、刺激を受けたい人には、羅生門が手軽に見れるしもってこい。とりあえずデジタルリマスターしてくれた角川と米映画芸術科学アカデミーには感謝です。

kojiroh

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