『用心棒』(1961年、日本)―ウェスタン的、痛快娯楽時代劇の元祖


『用心棒』(1961年、日本)―110min
監督:黒澤明
脚本:黒澤明、菊島隆三
音楽 佐藤勝
撮影:宮川一夫
出演者:三船敏郎、仲代達矢、山田五十鈴・・・etc

【点数】 ★★★★★★★★★☆/ 9.0点

セルジオレオーネとイーストウッドによるマカロニウェスタンの元祖・『荒野の用心棒』の元ネタとして有名な、黒澤と三船の黄金コンビが作った痛快娯楽時代劇、『用心j棒』。

久しぶりにDVDで見て、今の時代でも色あせることないこの作品のレビューを書こうと思い立つ。

●あらすじ
やくざと元締めが対立するさびれた宿場町。そこへ一人の浪人者がやってくる。立ち寄った居酒屋のあるじに、早くこの町を出ていった方がいいと言われるが、その男は自分を用心棒として売り込み始める。やがて男をめぐって、二つの勢力は対立を深めていく……。ハメットの『血の収穫』を大胆に翻案、時代劇に西部劇の要素を取り込んだ娯楽活劇。後にマカロニウェスタン「荒野の用心棒」としてパクられた逸話はあまりにも有名である。桑畑三十郎が名前を変えて活躍する姉妹篇「椿三十郎」も製作されている。
<allcinema>

流れ者、桑畑三十朗。このキャラクター設定は多くの映画に影響を与えたのではないかとも思う。

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北野映画の『座等市』にも、もろこの設定の影響を感じる。
北野監督が言っていたが「黒澤の映画は完璧だ、ミスショットが1枚もない」と。すべてが絵画のようで、フィルム1枚1枚を見ても、完璧らしい。

確かにそううなずけるほど、羅生門もそうだが、本作『用心棒』の宮川一夫の撮影はすばらしい。

墓屋がハイエナのようにつきまとっておべっかする、カメラワークと躍動感、そして犬が手をくわえて走ってくる画面の泥臭さとユーモラスな雰囲気なんて特にすばらしいと思う。

流れものと野暮な男たち。まったく女っけのない映画だが、その泥臭い重厚感と、時にユーモアが飛び交う本作のセンスは、マカロニウェスタン的である。それはレオーオが引用したかどうかは分からないが、無口で強い男が野暮でおしゃべりな男たちを翻弄するように戦いを仕掛けるスタイルは、マカロニウェスタンで演じるイーストウッドにも影響を与えたのだろう。

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仲代の演技も、典型的なカタナVsピストルという二元論な戦いだけで落としていない点がいい。単純明快なのだが、この映画の流れは1つ、フォーマットとして多くの模倣を生んだと思う。

ジョンフォードの西部劇ウェスタンを日本へ輸入して時代劇風に加工して、さらにそれがまたマカロニウェスタンみたいな模倣を生んだのかもしれないと思えるほど。

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ラクビーの戦術を模倣して考えられたらしい最後の決闘シーン。
戦いそのものはじれったくなく、どちらかというと一瞬で終わる形の決闘シーンが、単なる単純なチャンバラで終わらない深みがあると思った。

三船の笑いながらピストルに向かってゆくあの表情、すばらしい演技もあり、色んなところでアイディアの宝庫のようなフィルムだなと感じる。テーマとして有名な音楽もすばらしい。

個人的には本作があまりにもすばらしいので、続編の椿三十朗はあまり評価する気にはなりませんねえ。森田監督が織田とリメイクしてたが、相当な駄作らしくて見てませんが、なぜこっちの用心棒をリメイクしなかったのか不思議。

ともかく白黒ながらも完璧なカメラワークで記録された「羅生門」と並び、100年先も名作というか手本として残っていそうな映画だなと思いました。

kojiroh

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