『イディオッツ』(1998年、デンマーク)―117min
監督:ラース・フォン・トリアー
脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:ボディル・ヨルゲンセン、イェンス・アルビヌス、アンヌ・ルイーセ・ハシング、トレルス・ルビュー、ニコライ・リー・コース、ヘンリク・プリップ、ルイス・メソネオ etc
【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.5点
ニンフォマニアックを見る前に、トリアー監督の問題作であるイディオッツをレンタルで鑑賞した。
●あらすじ
「奇跡の海」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー監督作品。本作は、すべてロケのみで行われ、カメラは手持ち、人工的な照明は禁止といった条件で撮影する“ドグマ95”という映画監督集団による実験的プロジェクトの第2弾作品として作られた。カレンは立ち寄ったレストランで奇妙な一団と出会う。口からよだれを垂らし、訳のわからない事を叫ぶ人々。レストランから追い出されそうになる彼らをかばうカレンだが、これはすべて白痴を真似たデモンストレーションだった……。
<Allcinemaより>
もうあれです、「障碍者のふりをした健常者のサークル」ってプロットだけで惹かれました。
トリアー監督特有の、いやらしいもの、描きたくないいやらしいものを露骨に描いてしまうセンスがもっとも凝縮されている映画かもしれない。彼のエッセンスがある。
ドグマ95に則った、自然光ロケ撮影、すべて手取り。
この手取りでゆれる映像っていうのはやはりドキュメンタリーを描くようですばらしいなと思う反面、強引にカットで乗り切るシーンもあったり、諸刃だなとは感じる。
だが全般的にドキュメンタリーを思わせるような構成は、完成度が低く荒削りなようでよくできているなと。(とは言ってもドグマ95を徹底したがゆえにぐだぐだな部分もあるけど)
それにしてもイデオッツ――愚であることは素晴らしいと思わせ自らを正当化する、サイコパスのような健常者の擬似家族っぷりはめちゃくちゃだが、メッセージ性はすごく感じる。
ものすごく不謹慎な障碍者ごっこによって人間の偽善を暴く――そんな建前はあるにしても、結局は心を病んだメンヘラ集団が自己満足と快楽のためにめちゃくちゃ不謹慎なことをやりまくる映画というだけ。
そんなことを描いちゃダメだよ!!とモラルある人ならツッコみたくなる出来事を容赦なく描いて、不快感は感じつつもやはり引き込まれる。マジキチですけどね。
だがある種、本作品はブラックコメディとして成立している。この映画の人々のマジキチっぷりは呆れたを通り越して笑えた。
精神病の少女と内気な彼とのベットシーンなんかは舌を巻くほど生々しくて、この迫力はドグマ95の撮影手法ならではだなと。
それにしてもパッケージになっているこの3つの全裸ケツ画像が印象的であるが、トリアー監督の男の裸ケツのカットはフェチなのかと思うほど秀逸である。
こんな映画作っちゃいけないと思いつつも、あの独特な音楽とドグマ95のゆれる映像は中毒性がある、実験的だがすごい衝動ある映画でした。
kojiroh