『桐島、部活やめるってよ』(2012年、日本)―102min
監督:吉田大八
脚本:喜安浩平、吉田大八
原作:朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』
出演:神木隆之介、橋本愛、東出昌大、清水くるみ、山本美月、松岡茉優、落合モトキ・・・etc
【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.5点
ベストセラー小説を吉田大八監督で映画化した青春群像ドラマ。
その印象的なタイトルから様々な模倣を生んで話題になった小説&映画。
どうも安っぽい印象で、原作を読んだことがなく、多分あまり好きじゃないだろうなと思い敬遠していた。だが小説よりも映画が高い評価を得ていたので、重い腰を上げてレンタル鑑賞。
ずばり、非常によくできた邦画で驚いた。
陳腐な予算が多くてもしょぼい完成度の邦画が多い中で、この作品は郡を抜いている。
◎あらすじ
金曜日の放課後。バレー部ではキャプテンを務め、成績も優秀な学園の“スター”桐島が、突然退部したらしいとの噂が校内を駆け巡る。学内ヒエラルキーの頂点に君臨する桐島を巡って、バレー部の部員はもちろん、同じように“上”に属する生徒たち――いつもバスケをしながら親友である桐島の帰りを待つ菊池宏樹たち帰宅部のイケメン・グループ、桐島の恋人で校内一の美人・梨沙率いる美女グループ――にも動揺が拡がる。さらにその影響は、菊池への秘めたる想いに苦しむ吹奏楽部の沢島亜矢や、コンクールのための作品製作に奮闘する映画部の前田涼也ら、桐島とは無縁だった“下”の生徒たちにも及んでいくのだが…。
<allcinema>
ずばり、これはこのときこの瞬間しか撮れない映画を撮っている。
出演している少年少女たちの演技がどれもキレがあり、みんな独自の存在感を放っており、素晴らしいなと。
特に橋本愛の存在感と透明な美女っぷりが冴えている。
ベタベタな青春映画を想像していたから、意表を突かれた。
ポップな青春系エンタメ映画ではなく、しっかりとした力のある演出と演技、そして随時に見られるマニアックな演出・・・鉄男の映画鑑賞であったり、まさかのゾンビ映画マニアな前田君。
前田君を中心とした脚色が、この映画のすべての成功だなと、本当によくできている。
ディティールまでこだわっているんすよねえ、みんあ携帯電話を持っているが、ガラケー中心。だが、冒頭の方で美女・リサだけスマホを使っていたり、演出が細かい。
音がないからこそ、演技と演出の力を問われる・・・純文芸的映画の要素と、マニアックな要素がミックスして調和していて、邦画の最高傑作と絶賛する人がいるのも分かる。だからこそ、吹奏楽部の演出が活きたり、よくできすぎ。
音楽がまったくない演出――日本では家族ゲームを思い出す雰囲気。だが、最後で激しい弾き語りの感情的な音楽が流れ、打ちのめされます。青春を叩き切るような歌声で高橋優「陽はまた昇る」・・・驚きのクライマックスシーンから、この展開は予想できませんでした。
目標や情熱がない帰宅部と部活。こうした学校の縮図は、ある意味で社会人でも同じなんだよなあと思わされたり、メッセージが強いです。原作はどうか分からないが。
青春の苦さを感じさせつつ、日本の高校って本当に閉鎖的で嫌な場所だなと感じつつ、高校時代をイヤでも思いださされる。
ともかく、原作の小説よりもはるかに評判もよく、絶賛の声をきく理由が分かりました。
これはなかなか映画に精通している人ではないと作れない映画であり、邦画の中では10年に1本ぐらいの傑作青春映画でしょう。(この手の映画は全然筆者の趣味ではないが)
kojiroh