『オアシス スーパーソニック』(2016年、イギリス)――75点。Oasisの歴史と未来への警告ドキュメンタリー


『オアシス スーパーソニック』(2016年、イギリス)――128min
監督:マット・ホワイトクロス
製作総指揮:リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー、アシフ・カパディア、ジュリアン・バード、ジョセフ・バリー・Jr.
出演:リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー・・・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

2009年に解散したイギリスのロックバンド「オアシス」のドキュメンタリー。

2017-01-18_210434

リアム&ノエル・ギャラガー兄弟への新たなインタビュー、バンドメンバーや関係者の証言、名曲の数々をとらえた貴重なライブ映像、膨大なアーカイブ資料・・・オアシスファンにはたまらないドキュメンタリー映画で話題を呼んでいて劇場に見に行きました。

◎あらすじ
1991年に兄ノエルが弟リアムのバンドに加入して「オアシス」が結成されてから、2日間で25万人を動員した96年の英ネブワースでの公演までの軌跡を追った。ギャラガー兄弟と、「AMY エイミー」でアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞したアシフ・カパディアが製作総指揮に名を連ね、「グアンタナモ、僕達が見た真実」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したマット・ホワイトクロスが監督を務めた。
<映画.com>

すごいスピード展開でオアシスのスーパーソニックのようなデビューの軌跡をたどってくれて、興奮しました。

野暮でワイルドな口調のリアムのインタビューと、言葉は汚いが知的な側面をも見せるノエルの、対照的な兄弟のインタビューを交えて繰り広げられる音楽ストーリーにはファンではなくても音楽好きなら楽しめるでしょう。

2017-01-18_210249

2017-01-18_210145

2017-01-18_210211

ともかく、この仲が悪くて、育ちが悪い、労働者階級層の公団に住んでためちゃくちゃな兄弟が一緒になって3年以上下積みして、一気に爆発したんだろうなと、オアシスがなぜ最速でデビューできたのか十分納得できる映画になっていた。

ノエルは猫型、リアムは犬のように一人ではいられずと、ノエル自身が語っていたシーンがこの兄弟の特徴を最も表してるなと、ノエルの知的なインタビューにはたびたび関心。ソングライティングだけではない、彼こそキーマン。みんな重要ではあるが。

個人的には成功ストーリーで終わってしまったが、その後の解散の話までストーリーを伸ばしてほしかった。

今後もおそらく再結成はなさそうだが、
ノエルの最後の方の、
「自分たちがインターネット登場後の最後の世代で、それゆえ公共団地出身のバンドマンになれた、今後、そういう労働者階層から自分たちのようなバンドがでないだろう」

と、危機感を持った警告をかましており、
ノエルはインターネットによって誰でも評価される時代なんかなく、逆に格差が広がっているとも言いたそうな口ぶりであり、インターネット全盛期の音楽シーンを否定的に語っている部分が最も本作のメッセージだった。

それを伝えるために、彼らはこの映画を作ったのだろうと感じる。

ともかく、ロック音楽好きな人は間違いなく楽しめる映画です。

PS Live foreverが、本作で素晴らしさが一番伝わってきたナンバー。

kojiroh

広告

『127時間 』(2010年、アメリカ=イギリス)―80点。サバイバル登山映画の最高傑作


『127時間 』(2010年、アメリカ=イギリス)―94min
監督:ダニー・ボイル
脚本:ダニー・ボイル、サイモン・ボーファイ
原作:アーロン・ラルストン
出演:メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ライアン・メリマン、クリス・レムシュ etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

『スラムドッグミリオネア』の天才、ダニー・ボイルの最新作であり、彼自身が4年越しで熱望していたクライマー、アーロン・ラルストンの実話を映画化した力作。レンタルにて鑑賞。

所感、ボイルらしいスピーディースタイリッシュなカットと音楽もいいが、それ以上に危機的な状況下で何も動けない男の心理的なアクション映画であることに意表を付かれ、とにかくビックリした。
2013-02-20_150047

◎あらすじ
ある日、27歳の青年アーロンは一人でロッククライミングを楽しむため、庭のように慣れ親しんだブルー・ジョン・キャニオンへと向かった。美しい景観の中で様々な遊びに興じて大自然を満喫するアーロン。ところが、ふとしたアクシデントから、大きな落石に右腕を挟まれ、谷底で身動きがとれなくなってしまう。そこは誰も寄りつかない荒野の真ん中。おまけに彼は行き先を誰にも告げずに出てきてしまった。絶望的な状況と自覚しながらも冷静さを失わず、ここから抜け出す方法を懸命に模索するが・・・。<allcinema>

冒頭からマルチ画面を駆使し、スタイリッシュに旅立ちを描く。
とにかくパワフル。超人的な旅人のアーロンに惹きつけられる。
音楽のセンスもよく、大自然の美しさには息を呑む。この空の青さがいい。
2013-02-20_150103

そんな自然との戯れを楽しんでいたアーロン
2013-02-20_150320
がしかし、突然の試練のごとく、自然の驚異に巻き込まれる場面から127時間が始まる。

まったく動かないが、様々な脱出のための試行錯誤や、自分へのインタビュー、ビデオの回想、さらには走馬灯のように蘇る過去の思い出、最愛の人、そして妄想や幻想が交じり、観客を飽きさせない。
2013-02-20_150420
とにかく本作の構成に驚いた。よくこんなネタで一時間半も引き込んだなと。
陽気でハッピーな冒頭以降は、ひたすらサバイバルの残酷さが胸に刺さる。
岩が挟まる右手を想像するだけでも痛いし、水がなくなった状態の飢餓感、絶望、そして最後は……とにかくリアルすぎてショック度高い。まあこのオチを知らない方が楽しめますね。

特に筆者はネタバレを知らず、まったく事前知識なく鑑賞したので、手に汗握るような展開が非常に楽しかったです。

映画を観終えた後は、このアーロン・ラルストンという人物のことを検索せずにはいられなくなったほど。興味深い実話だ。

とりあえず、この手の自然での遭難というか生死をかけた危機を越えてゆく系のサバイバル映画の中では最高峰に部類される映画であることは疑いようがないであろう。

kojiroh

『ホテル・ルワンダ』(2004年、英=伊=南アフリカ)―8.0点。南アフリカから国際社会への風刺


『ホテル・ルワンダ』(2004年、イギリス・イタリア・南アフリカ)―122min
監督:テリー・ジョージ
脚本:テリー・ジョージ、ケア・ピアソン
出演:ドン・チードル、ソフィー・オコネドー、ニック・ノルティ、ホアキン・フェニックス、ジャン・レノ、ファナ・モコエナ etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

実話の映画化。魂を揺さぶられ、あなたも当事者になる物語……
こんなコピーと評判のいい名作と話題の映画。アカデミー賞でも外国映画賞ノミネート、トロントでの受賞など、最も有名で世界的にも成功した南アフリカを舞台にした映画だと言えよう。


●あらすじ
1994年、ルワンダの首都キガリ。多数派のフツ族と少数派のツチ族の内戦はようやく和平交渉がまとまるかに見えたが、街では依然としてフツ族派ラジオ局が煽動的なプロパガンダを繰り返し不穏な空気に包まれていた。ベルギー系の高級ホテル“ミル・コリン”で働く有能な支配人ポール。ある晩帰宅した彼は、暗闇に妻子や近所の人たちが身を潜めていのるを目にする。フツ族大統領が何者かに殺され、これを契機にフツ族の人々がツチ族の市民を襲撃し始めたのだ。ポール自身はフツ族だったが、妻がツチ族だったことから一行はフツ族の襲撃を逃れミル・コリンに緊急避難するのだが……<allcinemaから引用>

南アフリカ、民族紛争、そして外資系のホテル。
日ごろ触れることのない世界が垣間見れてまず興味深かった。アフリカなまり?の英語が色々と喋り、外資の文化をしっかりと受け継ぎ、白人を客として招き、ホテルを運営するその光景がまず一興。

品格を高めるためのコイーバの葉巻。中国から仕入れたナタなど、いろんな国からのモノが入りつつ発展してゆく様相を見せるルワンダも、国際社会が止めようとしない紛争が巻き起こる展開がスピーディーに描かれる。

なんと言っても、本作はドン・チードルの名演。国連と将軍、さらにはホテルの従業員、難を逃れた人々との必死の非暴力の駆け引きが緊張がありつつクライマックスへと盛り上がる。追い詰められてからが本番であったかのように、状況が二転三転。

と、紛争の中で国際社会の中を切磋琢磨し生き延びた人々の物語なのであるが、個人的には本作での虐殺の現実を伝えるという主旨以上に、アフリカの黒人が国際社会の中でどのような生き様をできうるのか?……この観点を探ることに意義を感じた。


「君は黒人であり、ニガーにすらなれない……」
国際社会で見捨てられた黒人たち。守ってくれることが当たり前だ、人権だと信じていた日常が、脆くも崩れ去る。白人的な社会、国際的な舞台で活躍するために高めていた「品格」が、意味を成さなくなりうる。

ネクタイを締めてスーツを着て、品格を得た気がしていた簡単な人生は幻想的で、背負っている十字架と向き合うことを忘れてしまった現代人へのメッセージなのかもしれない。

消せないアイデンティティ。人種。民族。
そうしたものと向き合い、戦ってこそ、真の「品格」を得られるのか。

とにかく、紛争の現実を知る以上に、それを他人行儀で見守るだけの国際社会に対する皮肉もあり、ジャンレノもちょい役で出演している、今の時代に見るべき映画であることは疑いようが無い一作であった。

kojiroh

『スラムドッグ・ミリオネア』(2008年、イギリス)―8.5点。インドの現在を描いた傑作


『スラムドッグ・ミリオネア』(2008年、イギリス)―120min
監督:ダニー・ボイル
脚本:サイモン・ビューフォイ
原作:ヴィカス・スワラップ『ぼくと1ルピーの神様』
出演者:デーヴ・パテール、マドゥル・ミッタル、フリーダ・ピントー、アニル・カプール、イルファーン・カーンetc

【点数】 ★★★★★★★★☆ / 8.5点

いわずと知れたアカデミー賞8部門を総なめにした作品賞受賞作であり、他にも各国の映画祭で数々の受賞をなしたゼロ年代を代表する傑作のひとつ。

まずはその巧妙に脚色されたストーリー構成に衝撃。予備知識はほとんどない状態で鑑賞開始したが、冒頭からぐいぐい引き込まれる。ミリオネアに出演している現在と、その設問に関して時空を交錯させて主人公ジャマールの物語が語られる構成は見事だと思った。


あらすじであるが、舞台はインドの大都市ムンバイ。そこにある世界最大規模のスラムで生まれ育った少年ジャマールは、コールセンターのお茶くみをしている底辺層の人間であるが、テレビの人気クイズ番組『フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア』に出演する。そこでジャマールは数々の問題を正解してゆき、なんと最後の1問にまで到達。しかし、無学の彼がクイズに勝ち進んでいったために、不正の疑いがかけられてしまうのだが…。

ダニー・ボイル監督特有のスピーディーなカット、逃走したり疾走する際の早いコマ回しが緊張感がありハラハラする。それは『28日後』から変わらずで、楽しめる。インドの溢れんばかりの人口、列車、自然、インドへ行く前に見るべき映画の一本であろう。ミステリーサスペンスからアクション映画の要素まで盛りだくさん、様々なアイディアが盛り込まれていて圧巻の完成度だ。



さらにインドの現実をリアルに映し出していると思えた希少な映画だ。
特に筆者自身もインドへ行ったことがあるので、その絶望的な格差と、インド人同士の壮絶な足の引っ張り合いであったり、インド強欲的な負の部分をえぐっていると思えた。

金、金、金。貧困や格差の中で金の亡者になっている人々により、さらに絶望的な格差が生まれている、それがインドのスラムの現実なのだと。しかしそんなこの世の果てのような場所でも、一握りの希望は残されている―。そんな思いになれる清々しい物語だった。


それにしてもインド人による出演陣によって構成されるキャストも魅力的。フリーダ・ピントーなどの美しさも際立つ。本当のインド系の人々によって純正に作られているのでうそ臭くない。

イギリス人監督がこのような形でインドを描いて世界中に伝えたことは、映画史的にも大きな意義があったと思える傑作であろう。

Written by kojiroh

『ジョニーイングリッシュ 気休めの報酬』(2011年、イギリス)―6.0点。Mr.ビーン流007


『ジョニーイングリッシュ 気休めの報酬』(2011年、イギリス)―101min
監督:オリヴァー・パーカー
脚本:ハーミッシュ・マッコール
原案:ウィリアム・デイヴィス
出演:ローワン・アトキンソン、ジリアン・アンダーソン、ドミニク・ウェスト、ロザムンド・パイク、ダニエル・カルーヤetc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆☆ / 6.0点

このバカッぷりがいい!
さて、Mr.Beenがさりげなく昔好きだった筆者であるが、香港行きのデルタ航空の飛行機の中で、香港~マカオが舞台として登場する話題の『ジョニーイングリッシュ』の最新作を見た。(飛行機の中は日本よりも映画の流通が早いのである)

さて、前作『ジョニーイングリッシュ』から8年の歳月を経て復活した本作のあらすじであるが、一度は諜報機関のエースとして活躍したジョニーイングリッシュであるが、大きなヘマをしでかし、チベットでの修行に励む日々を送っている。そんな彼に、古巣からお呼びがかかり、MI7に舞い戻ったイングリッシュは、新たな上司ペガサスから、中国首相の暗殺計画を阻止せよとのミッションを告げられ、香港へ向かうのだったが…。

さて、予想はつきましたが、案の定、馬鹿映画&クソ映画。
しかしそこがお決まりのパターンで笑いを生み出している007のパロディ感満載なこのテンションがなかなかツボ。むしろ、よくできていると思う。


ローワント・アトキンソンのこの無能で馬鹿で間抜けな捜査官っぷりが笑える。なんでこんな使えない捜査官が任務に抜擢されたのか本当に謎だが、そこ突っ込むと元も子もないが、ともかく突っ込みどころ満載の笑いをかましてくれます。シュールなようで、体を張ってくれる彼のキャラは相変わらず愛らしい。


脇役もベタベタなかんじなのだが、それはそれでいいコンビっぷりを見せてくれて安心できる。

香港人のおばちゃんの暗殺者であったり、SUSANという名前の中国人スパイであったりと、アジア系のネタを色々と盛り込んでくれて、マカオの夜景やカジノも舞台として登場するので、個人的にはかなり楽しめた。

チベットの修行のネタや、香港のおばちゃんなど、伏線が色々と散りばめられていて最後にはオチるとこなど、よくできた脚本だなとも思える内容。

飛行機の中でさくっと見て笑うにはこのぐらいの映画が最適ですね。

最後にはアトキンソンが料理を作るシーンも見れらし、丁度ミスタービーンをもう一度見たくなるような一作だった。

Written by kojiroh