『アンジェラ Angel-A』(2005年、仏)―80点。美しい天使の映画


『アンジェラ Angel-A』(2005年、仏)―90min
監督:リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン
製作:リュック・ベッソン
出演者:ジャメル・ドゥブーズ、リー・ラスムッセン・・・etc
【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

鬼才、リュックベッソンの、2000年代始めての監督作品。
パリを舞台に全編モノクロ映像で撮り上げた異色のラブ・ストーリー。
主演は「アメリ」のジャメル・ドゥブーズとスーパーモデル、リー・ラスムッセン。

ベッソンが、『アメリ』的なフィーリングで作ったとも言える一作。

◎あらすじ
パリに暮らすアンドレはギャング絡みの借金が原因で48時間後には殺されてしまう運命に陥ってしまう。絶望してアレクサンドル三世橋からセーヌ河を見下ろすアンドレ。何も思い残すことはないと覚悟を決めた矢先、隣に現われた美女が、いきなり川に飛び込んだ。思いもよらぬ事態に、とっさにアンドレも後を追い無我夢中で彼女を助け出す。これがきっかけで、この絶世の美女アンジェラは、戸惑うアンドレをよそに、彼の後を付いて回るようになるのだった…。
<allcinema>

天使に関する映画。
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『素晴らしきかな、人生』を思い出す作品。
天使は実在する!?と信じたくなるほど、この作品の天使は美しい。

いや、美女っていう意味で。このモノクロ映画特有の存在感に惹かれる。そして長身。

しかし、なんでこのブ男なダメ人間にこんな美女が手となり足となりくっついてゆくのか、それは彼女が天使だから・・・

本作はラブストーリーではなく、ファンタジーコメディですね。
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ありえない設定、幼稚であり、etc、本作はフランスでも批判された部分があるが、
筆者としては、これは傑作です。

こんな美女とダメ男がくっつくのは、人間と天使という設定でなければ、逆に不自然であるからこそ、本作のストーリーは自然に感じる。

アメリのようなノリでパリを舞台にラブコメディを作ったこと、
そして、演出でジャンプカットのようにスピーディーに進む監督の演出が冴えまくっているなと、天使をモチーフにしたようなショットや、セーヌ川を渡るシーンの演出には特にうなりました。スピーディーかつコミカルで90分で収めたことは、いい仕事でしょう。

そして主演の二人、コミカルにしゃべりまくるジャメル、イエスマンで、美貌を駆使してスーパーマンのようになんでも解決してしまう寡黙なリーさん。『続・夕日のガンマン』のトゥッコとブロンディの役どころを思い出します。

しかしこれは、現代人へのメッセージ、ウソばかりついて借金ばかりして、自分をだましながら生きている邪悪な男の魂の浄化する仮定を描いており、
人と欺かない、疑わない、愛の大切さを、美しいパリとリーさんと共に描いた点が素晴らしいと思いました。

そう考えると、天使のような存在によって、邪悪な魂の浄化劇を、レオンからずっと描いてきているのかもしれない。

心を病んだ現代人が見るにはいいセラピーになりえる映画である意味で、わたしは本作は素晴らしいと思います。

ただ・・・ややネタバレになるが、本作のラストにはがっかりでした。

前編を通してモノクロのパリの世界が幻想的で美しく、ラストシーンも、下手なオチではなく、レオン的な、なんともやるせないが現実的な結末に期待していたのだが――妄想のような天使劇を肯定するようなラストには、ベッソン、どうしちゃったのさ!!

まあ観客を喜ばせたくて制作した映画らしいので、追い詰められてモテモテ状態になる主人公に自己投影する人が多く、それによって生きる希望を見出せる一作にしたかったというオチがあるのかもしれないが・・・しかし、やはりラストはなんだなああ。

アンジェラ、エンジェルA・・・ある天使の物語ってとこですね。

kojiroh

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『マラヴィータ』(2014年、米=フランス)―80点、巨匠のオマージュ満載のクライムコメディ


『マラヴィータ』(2014年、米=フランス)―111min
監督: リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン、マイケル・カレオ
原作者: トニーノ・ブナキスタ
製作:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ、ミシェル・ファイファー、ディアナ・アグロン、トミー・リー・ジョーンズetc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

スコセッシの製作とリュック・ベッソン監督。
主演はロバートデニーロ。これ以上にない黄金コンビ。

希少なベッソンの監督作がでたこともまったく知らなかったので、友人から情報をキャッチしてレンタル屋へ足を急いで鑑賞した。

◎あらすじ
フランス・ノルマンディ地方の田舎町に引っ越してきたブレイク一家。一見ごく普通のアメリカ人家族と思いきや、主のフレッドはなんと元マフィアのボス。敵対するファミリーのボスを売ってFBIの保護証人プログラムを適用され、家族とともに世界各地を転々とする日々を送っていた。監視役のFBI捜査官スタンスフィールドから地元コミュニティに溶け込めと忠告されるも、ついつい悪目立ちしてしまうフレッド。おまけに妻と2人の子どもたちもかなりのトラブルメイカー。そんな彼らの潜伏場所が仇敵にバレるのは時間の問題。ほどなく一家のもとには、フレッドの首を狙う完全武装の殺し屋軍団が送り込まれてくるのだったが…。
<allcinema>

うーん、この組み合わせだけでもスコセッシの黄金時代の映画が好きな筆者は無条件に萌えるわけだが、黄金コンビは形だけでなく、コメディ映画としてもよくできていると思う。

アンタッチャブルだったデニーロがこんな引退生活とは、いや、とにかく色々ツボ。デニーロも演技が楽しそうだなあと感じる。

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しかし本当に過去のアメリカ映画へのオマージュがちりばめられ、かつアメリカ映画とは違ったフランスのセンスで描かれたコメディドラマである点が、なかなか切り口として斬新だと感じた。

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家族4人のキャラクター造形もいいですね、キャスティングも。それぞれのエピソードが耕作しつつも、監視役のトミーリージョーンズの渋い脇役陣もさえている。

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特に好きなのが、間違えて「グッドフェローズ」が流れるシーン。その後のスピーチ。いや、これはツボだった。古いファンから新しいファンまで、お約束のような場面がありつつも、クライムコメディとしてよくできているなあと。アメリカじゃなくてフランスが舞台だからこそですかね。

ラストへ向けての盛り上がりとクライマックスは個人的にかなりデキがいいと感じる。

演技陣から製作まで、とにかく楽しそうに作ってできた秀作でした。

kojiroh

 

 

 

『グランドイリュージョン』(2013年、米=仏)―70点。マジシャン強盗4人組 VS FBI スタイリッシュなだましドンデン系映画


『グランドイリュージョン』(2013年、アメリカ=フランス)―116min
監督:ルイ・ルテリエ
脚本:エド・ソロモン、ボアズ・イェーキン、エドワード・リコート
原案:ボアズ・イェーキン
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、ウディ・ハレルソン、メラニー・ロラン、アイラ・フィッシャー、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点
※リアルタイム映画評

原題、Now you see me.
「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグが、天才マジシャン集団のリーダーを演じるエンタメ・クライム・サスペンス。

マーク・ラファロ、ウディ・ハレルソン、メラニー・ロラン、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン・・・豪華な共演者と引き連れて、フランスの映画監督ルイ・ルテリエが描く傑作・・・との友人からの推薦があって、筆者は劇場にて鑑賞した。
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●あらすじ
“フォー・ホースメン”を名乗る4人組のスーパー・イリュージョニスト・チームが、大観衆が見守るラスベガスのステージで前代未聞のイリュージョン・ショーを披露する。なんと、遠く離れたパリの銀行を襲い、その金庫から320万ユーロという大金を奪い取ってしまったのだ。一夜にして全米中にその名を轟かせたホースメンだったが、FBIとインターポールの合同捜査チームは、すぐさま強盗容疑で身柄を拘束する。しかしトリックを暴くことができず、証拠不十分のまま釈放を余儀なくされる。そこで捜査チームは、元マジシャンのサディアスに協力を要請し、ホースメンのさらなる犯行の阻止とその逮捕に全力で取り組むのだが…。
<allcinema>

さて非常にスタイリッシュで、マジックシーンはなかなか秀逸。
ラスベガスの町でマジック。ショーを展開する場面なんかは映画館で見ると非常に迫力がある。

相変わらず早口でまくし立てるように口と頭をフル回転させてるジェシー・アイゼンバーグ。
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彼の人生の中で、最もイケメンな役柄かなと。しかし本作では主演というより、主演の1人と、あまり存在は大きくない。ゾンビランドでのウディとの絡みなんかも、過去の作品を思う出させる。

本作はマジシャン集団とトリックを見破るモーガンフリーマン、そしてFBIの3つ巴の戦い。

だが残念ながら助演の存在感の方が大きくて、貫禄負けしてました。
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深いしわでトリックを見破る場面なんかは面白い。
特に前半のスピード感は非常にエキサイティングだった。

あとメラニー・ロレン。彼女がいい味だしていた。イングロリアス以来に見ましたが。
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マークラファロも主演レベルで目立ってます。
むしろ助演が秀逸すぎてそっちに感情輸入してしまった。

あれ?フォースメンが主役のはずでは・・・まあ面白かったからいいけど、しかし本作は最後がダメだった。

ネタバレぎりぎりのところで曖昧に結論を言うと、
本作は非常にベタでもあるタイプのどんでん返し系映画である。

しかし、そのどんでん返しさのこじつけ感、意表はつかれたがそれがあまりにも不自然で、矛盾っぽくて、非常にがっかりだった。
むしろこのどんでん返しなかった方が面白くて自然だったんじゃないかと。

てわけで前半1時間ちょっとは80点なデキだったが、最後がちょっとねえ・・・、「スティング」とか王道どころのドンデン返し映画に比べると不自然で違和感というか矛盾さえ感じる。昨今のドンデン系作品で言うと、「シャッターアイランド」の方がよくできてたし、「インセプション」ほど複雑に計算されて観客に謎を提示するような拘りもない。

しっかし最初からおかしいとおもってたんだよなあ。
三下の脇役だったはずのあの人が主演レベルで目立ってたし、
バカの振りして最後はMost intelligent!ってのは、こいつどんだけ役者なんだよwwwという、ちょっと無理がありますね、僕は納得できませんでした。

「計算されつくしただまし」にしてはあまりに安易なオチがちょっと残念です。
こりゃ、二重の意味でミスディレクションだぜよ!

そんなわけで、本作のスピード感や世界観やキャラやマジックのヴィジュアルイメージがよかったのでより勿体無かったかなと・・・誰が主演かよくわからない映画だが、アイゼンバーグより、フランスのメラニー・ロランが個人的には主役です。

いや、彼女のフレンチな美しい演技を見れただけでももちろん、満足なんです。

とりあえず昨今のスターが演技合戦してるので、見ごたえある一本ではありました。

kojiroh

『アーティスト』(2011年、フランス)―6.0点。古きアメリカ映画への届かぬ憧れ


『アーティスト』(2011年、フランス)―100min
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
脚本:ミシェル・アザナヴィシウス
音楽:ルドヴィック・ブールス
出演:ジャン・デュジャルダン 、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェルetc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆☆ / 6.0点

第84回アカデミー賞作品賞受賞、さらには監督賞(ミシェル・アザナヴィシウス)、主演男優賞(ジャン・デュジャルダン)など5部門を受賞した、今年一番の話題作が『アーティスト』。

この時代のサイレントを観れるなんて、さらにはそれがオスカーに輝くなんて、一体どんな映画なのかと筆者は期待を胸にして鑑賞した。

さて舞台は1927年、ハリウッド。
サイレント映画のスター、ジョージは、彼に憧れる女優の卵ペピーと出会い、彼女に優しくアドバイスをおくる。そんな中、時代はセリフのあるトーキー映画へと大きく変わっていく。しかしジョージは、自分は芸術家だと主張してサイレント映画に固執、瞬く間にスターの座から滑り落ちる。そんなジョージとは逆に、ぺピーは時代の波に乗ってスターの階段を駆け上っていく…。


この2012年に、まさかサイレントの映画の新作を観ることができるなんて不思議な体験んだ。過去にチャップリンなどのサイレント映画にはまったことのある私は、このたび久しぶりに無音の映画を味わう喜びを思い出し感動した―、という部分もあった。しかしそれ以上に、この時代にサイレント作ったにも関わらずこんなもんなの?という「期待外れ」な想いの方が残念ながら大きかった。

ジョージとペピーの主演の二人の名コンビぶりがセリフがない無音の状態にでも伝わってきたり、犬の名演が楽しめたりと見所が多くて、もちろん完成度の高い映画ではあるが、前評判や多くの受賞など、評価が過剰な部分があり、期待して観たのでその失望感が個人的にはひどかった。


涙腺を刺激されるような王道なよさはもちろんあったんだけどね、最後に何がやりたかったのかも分かるのだが、しかしやはり50年前でも作れた映画だという気がしてならず、それならばチャップリンのサイレントでも見た方がよっぽど有意義な時間になったのではないかという考えを拭い切れなかった。

それにしても、過去の焼き直しを今さらやった映画が評価される理由がよくわからない。

この作品がアカデミー賞を取れた理由は単純で、決定権のある選考員が古くて頭が固いおじさん連中になっていて、現代を描いた作品よりも古きよきを思い出させてくれる作品の方が好まれることが想像できた。自分にとってはそんな典型的な一作でしかなかったのがちょっと残念な受賞作であった。

さらにタイトルもいかんね。なにがどういうところが「アーティスト」だったのか? 時代に翻弄される芸術に生きる人間を描きたかったという意味なのか? それにしてはなんだか陳腐なタイトルで、最後までよく意図が分からないこの後味の悪さ。個人的なことだが―、監督の趣味映画の枠を超えているとは思えないというのが正直な感想であった。

Kojiroh

『ゴーストライター』(2010年、フランス=ドイツ=イギリス) ―8.5点。巨大な陰謀と現代社会を”ゴースト”の視点から暴く


『ゴーストライター』(2010年、フランス=ドイツ=イギリス)124min
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロバート・ハリス、ロマン・ポランスキー
原作:ロバート・ハリス
出演者:ユアン・マクレガー、 ピアース・ブロスナン、オリヴィア・ウィリアムズ、キム・キャトラル、ティモシー・ハットン、トム・ウィルキンソン、ジェームズ・ベルーシ、ロバート・パフ、ジョン・バーンサル、ティム・プリース、イーライ・ウォラック

【点数】
★★★★★★★★☆ / 8.5点

※リアルライム映画評

「知りすぎた男(ゴースト)―」
カンヌ映画祭グランプリ『戦場のピアニスト』で有名なポーランドの巨匠、ロマン・ポランスキー監督、ユアンマクレガー主演で送る本作『ゴーストライター』。ポランスキ監督の久しぶりの長編でもあり、さらにはベルリン映画祭で監督賞を受賞している秀作とのことで筆者は新宿武蔵野館へと足を運んだ。


あらすじは単純で、元英国首相のアダム・ラングの自伝小説の執筆を依頼されたゴーストライターが、仕事を進めてゆき、彼の人生を深堀りすればするほど、やがて大きな疑惑に遭遇し、政界を揺るがす巨大な陰謀に巻き込まれてゆく…。


文字通り単純な話だ。陳腐とも呼べるほど単純。
しかし、物語の展開が異常なほどテンポがよく、冒頭からぐいぐい引き込まれる。スピーディーで緊張感があり、時にユーモアをも感じさせる。その手法は過去の傑作・『チャイナタウン』をも彷彿させる。陳腐なサスペンスの王道の手法で描かれる作品であるが、そこに描かれているのは間違いなく現代だった。

ネット社会が普及しているし、テロが社会問題になっている時代背景が描かれている。それを手がかりに巨大な陰謀が説かれていくストーリーには現実味があり、緊張感がある。


本作のストーリーはネタバレになるのであまり深くは言及しないが、闇の権力の部分が極めて現実的に描かれており、単なるフィクションとは思えないほど現代に対するメッセージがあると感じ、身震いするデキであった。

ロマンポランスキー監督は、巨大な権力や陰謀に巻き込まれる人間を描くのが本当に上手い。特にその無力な一般市民からの視点が皮肉でもあり秀逸だ。

けっして新鋭的な目新しい手法はない作品だが、それでもこんなに面白いとは、色んな意味で期待を裏切ってくれる秀作サスペンスである。

Written by kojiroh

『ミックマック』(2009年、フランス) ―6.5点。現代的風刺の妙にリアルなファンタジー

『ミックマック』(2009年、フランス)Micmacs à tire-larigot 105min
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
脚本:ジャン=ピエール・ジュネ、ギョーム・ローラン
出演:ダニー・ブーン、ドミニク・ピノン…フラカス、ヨランド・モロー、ジャン=ピエール・マリエール、ジュリー・フェリエ、ミッシェル・クレマド、マリー=ジュリー・ボー、オマール・シー、アンドレ・デュソリエ、ニコラ・マリエ

【点数】
★★★★★★☆☆☆ / 6.5点

『デリカテッセン』、『アメリ』などの話題作で有名な鬼才、ジャン・ピエール・ジュネ監督の最近作が、つい先日、公開されたことを知り、アメリフリークの筆者は前評判も高いことだったので見に行ったのが2010年9月、新宿の「とうきゅうスクエア」である。

あらすじは、レンタルビデオ店で働くバジルが、発砲事件で流れ弾を頭に喰らい、摘出されないまま頭の中に残ってしまった。そのせいで彼は全てを失ってしまったのだが、スクラップ工場の仲間と知り合うことで新たな人生を歩み始めることになる。そしてある日、頭の中の銃弾を作った会社を発見し、彼は工場の仲間と共に軍需企業へのイタズラ(復讐)を企てるのだが…。

本作でもジュネ監督特有のスピーディーにカワイくもある世界の切り取り方が冴えていた。新鮮で、個人的には夢物語を見ている気分になれてすごく好きだ。ブラックでフランス的甘美さのあるユーモアが満載の世界が広がっている。

ジュネ映画お馴染みのドミニク・ピノンが出演していることも、ファンにはニヤリとしてしまう展開だ。

そしてファンタジーと現実社会が融合している不思議な物語である。事件に巻き込まれて銃弾が頭に残った主人公は仕事を失いホームレスになるのだが、そのへんが雇用難のフランスの現状を感じさせられる。ホームレスながら仲間と楽しく愉快に暮らすのだが、変に風刺が効いていてシュールな話だ。

そんな社会の底辺的な立場の人々ながらも愉快な仲間たちと一緒に社会的な影響を及ぼすような壮大なイタズラを仕掛ける構成は、『スティング』を思い出させるような、悪人をハメる物語だ。

随所に情報社会やテロリズム問題などの現実的な風刺を盛り込んでいて、監督のメッセージ性を感じる。

高度に発展した社会の先には、情報化社会のネットワークによって、悪い行いをする人間は滅びていく運命があり、それを政治的な権力によってではなく、ホームレスのような下位にいる人々からでも、巨大な利権に立ち向かう力を持ちうる、というメッセージだ。

とは言っても話ができすぎているので正直、ありえねーろ!と突っ込みたくなるファンタジーで終わっているかなとも思ってしまう。

よくできたいい映画ではある。メッセージもある。しかし、本作は結局は『アメリ』の焼き直し感が否めない。

男性版、『アメリ』を現代のネット社会でやったらどうなるか、みたいな。高校生の時に『アメリ』を見たときのような衝撃はなかったことが少し残念でもある。

『アメリ』未見の人が見た方が面白い映画なのかもしれないが、『アメリ』で試みたシュールで可愛いユーモアとフランスの現代への風刺は既に完成してしまったので、やはり焼き直し止まりかなと思った。

Written by kojiroh