『モンガに散る』(2008年、台湾) ―5.0点、台湾黒社会・ほろ苦い青春物語

『モンガに散る』(2008年、台湾)141min
監督・脚本・編集:ニウ・チェンザー
出演:イーサン・ルアン、マーク・チャオ、マー・ルーロン、リディアン・ヴォーン、クー・ジャーヤン

【点数】
★★★★★☆☆☆☆☆ / 5.0点

台湾で年度No.1を記録し、数々の快挙を成し遂げ、社会現象を巻き起こした話題作、ということで期待を持って見た一作が『モンガに散る』だ。若手監督、ニウ・チェンザーによる台湾の黒社会に生きる若者達の友情と絆、そして待ち受ける哀しい運命―、を描いた大作だ。

舞台は1986年、台北一の歓楽街・モンガに越してきた高校生の“モスキート”(マークチャオ)は、校内の争いをきっかけに、モンガ一帯の権力を握る、廟口(ヨウカウ)組の親分の一人息子“ドラゴン”と“モンク”(イーサン・ルアン)に気に入られ、彼らが率いるグループの5人目として迎えられる。「指は5本そろって拳になる」と、最初は極道の世界に戸惑いつつも、モンガの街で青春を謳歌していくのだが、5人の若者はモンガと大陸の激動に飲まれてゆく…。

さて、台湾の1986年の歴史を描いたような作品であり、一大叙事詩とも呼べる。香港の黒社会とはまた違ったハードボイルドさがあり、非情ながらも人情あふれる物語になっている。テンポもよく、台湾の町並みや夜の街、または台湾特有の幽玄な山々での修行舞台などが美しく描かれていて、台湾黒社会がどういうものがわかる。

構成もしっかりしていて楽しめるよくできた作品ではある。主演のイーサン・ルアンの演技も渋い。

しかし、どうも主役のモスキート演じるマークチャオに感情輸入できなかった。彼はキャラ的にもビジュアル的にも、なんか愚鈍でどんくさい。個人的な感情の問題なのだが、映画を見ていて、彼の立ち居地にイライラしてしまったのである。

仲間に連れられて売春宿で童貞を捨てた女性への想いなども、なんだか青臭くて、やたらとそうしたシーンの回しがくどくて、面白い作品なのだがイライラ不快になってしまう場面があり、どうも個人的にはこの作品の世界に入りこめなかた。

決して悪い作品ではないのだが、僕の性には合わなかったかな。黒社会の若造の青臭い話よりも、香港ノワールのようなハードボイルドさに惹かれる筆者としては、ということでした。

Written by kojiroh

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『珈琲時光』(2003年、台湾=日本) ―6.0点。東京の日常と電車を描いた映像作品

『珈琲時光』(2003年、台湾=日本) 103min
監督:侯孝賢
出演:一青窈、浅野忠信、小林稔侍、余貴美子、萩原聖人

【点数】
★★★★★★☆☆☆☆ / 6.0点

一青窈、浅野忠信、主演。台湾の名匠、侯孝賢(ホウ・シャウシェン)監督が贈るあまりにも豪華に思える日本を舞台にした台湾合作映画。監督自信がリスペクトを贈る小津安二郎へのオマージュを込めたコアな作品が本作『珈琲時光』である。

『東京物語』を意識したローアングル、そしてワンシーンをほとんどカットせずに長回しする映像感覚が印象的で、さらに御茶ノ水や有楽町など日本の都内を舞台にしてJR山手線など東京の電車を美しく描いている点は圧巻。

台湾人でもある一青窈の初主演でもあり、東京のわびしいアパートで生活しているシーンや、フリーライターとして仕事っぷりなど、生活を感じられて親しみを持てて、いい味を出している。浅野忠信とのコラボレーションもいい。古本屋での淡々としている日常的な会話や、マックブックでイラストを見せるシーン、そして珈琲を飲む。東京の都会人の洗練された日常、とでも呼べるモノを醸し出している。長くて単調で退屈とも言えるが、構図や会話の間など、即興的なようでよく練られていて興味深いシーンの連続である。

ワンシーンが10分にも及び、会話の間や無言のシーンでもカットせずに長回しする映像感覚は、独自の緊張感があり、退屈でもあるのだが病み付きになるような温度がある。創意工夫の見られる電車のシーンの演出などは、監督の技巧であり、ここまで日本の電車を芸術的に描いた作品はなかなかないのではないかと思う。

決して一般受けはするような作品ではないが、カルト的な中毒性のある作品である。このラインナップはかなり豪華なので、ファンの人なら一見の価値ありだろう。また、台湾と日本との繋がりや親しみさえも感じられる。そう、日本と台湾との距離感のようなものを描いているとも言える。それの近さがなんだか心地いい。

しかし、それ以外の人には、見るのは辛いかもしれない。物語として見るにはなかなか難解な映画でもあるので、雰囲気や世界観、映像美を楽しむ、映画というよりある種の映像作品として見るべきなのかもしれない。

(Written by kojiroh)

『台北の朝、僕は恋をする』(2009年、台湾=アメリカ) ―7.0点。台湾、台北のお茶目な描き方


『台北の朝、僕は恋をする』(20009年、台湾=アメリカ)85min
制作:ヴィム・ベンダース
監督:アーヴィン・チェン
出演:ジャック・ヤオ、アンバー・クォ 、ジョセフ・チャン、トニー・ヤン、クー・ユールン

【点数】
★★★★★★★☆☆☆ / 7.0点

巨匠、ヴィム・ベンダースが制作していることで話題の台湾映画が本作。国際映画祭にも出展されていて、前評判も上々な一作だった。台湾の若手アーヴィン・チェン監督による新しい台湾映画の波、ともいわれる。

あらすじは、フランスへ留学に行ってしまった彼女のことが忘れられない主人公(ジャック・ヤオ)が書店でフランス語を学び、書店の店員スージー(アンバー・クオ)と親しくなる。そしてフランスへ行こうとするために裏の仕事をしようと奮闘する一夜を描くドタバタ劇、である。

一言で表すとこの映画は台北の街をユニークな描いている作品である。スクーターや夜市など台湾独自の文化的なシーンも主軸に添えていて興味深い。

書店でのシーンなど色彩も豊かで、台湾流のオシャレセンスも感じさせる。なんというか、フランス的なセンスを台湾に輸入したような色彩感覚で、モダンジャズチックな音楽も冴えている。今までの台湾映画では見たことのない美しい映画でもあった。

印象深い場面も多く、ファミリーマートでのコンビ二バイトであったり、夜市での地下鉄のMRT、夜の公園、ダンス、ラブホテル、スクーター二人乗り、物語を通して、色んな場所が出てきて、文化的な面白さもあり、見るものを飽きさせない。ワンシーンワンシーンの完成度が高い。そしてファミマ店員の友人、二枚目の警察官など脇役も個性的な役者を使っていて、ファミマのバイトでの恋愛模様などのサブストーリーもコミカルに描いており、笑える展開だった。

しかし、台湾の男女関係、のようなものに触れているようであるが、描き方がなんだか幼稚でもある点は否めない。本作以外でも、台湾映画は男女関係の描き方が未熟なものが多い気がするのだが、文化の違いもあるのだろうか。

ともかく、ヒロイン役がなぜ主人公に惹かれたのか、そうした点が描かれておらず、話に無理があると感じてしまった。また、ヒロインのアンバー・クォはとても可愛らしいのだが、それと主人公のジャック・ヤオがビジュアル的にもあまり釣り合っているように感じず、どうも不自然。違和感があった。

しかし、細かい突っ込みは気にせず、台北の街を描いたコメディ映画、として見ると台湾映画史上過去最高峰の秀作であることは間違いない。長さも85分しかないので軽く見れる。

なので、これから台湾映画をかじってみようという人には相応しいライトな一作ですね。台北に行きたくなること間違いなし。

(written by Kojiroh)