『凶悪』(2013年、日)―80点。その名の通り、悪い男たちの名演


『凶悪』(2013年、日)―128min
監督:白石和彌
脚本:高橋泉、白石和彌
原作:新潮45編集部編『凶悪 -ある死刑囚の告発-』
出演:山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴・・・etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

評判がいいここ1~2年の邦画として、「凶悪」があったので、レンタル屋で目に付いて借りてみた。

新潮45編集部の取材記録を綴った『凶悪 ある死刑囚の告発』を基に描くクライム・サスペンス。主演は「鴨川ホルモー」の山田孝之。共演にピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴。

監督は「ロストパラダイス・イン・トーキョー」の白石和彌。

◎あらすじ
 ある日、スクープ雑誌『明潮24』に死刑囚の須藤純次から手紙が届く。それは、判決を受けた事件の他に、彼が関わった誰も知らない3つの殺人事件について告白するものだった。須藤曰く、彼が“先生”と呼ぶ首謀者の男が娑婆でのうのうと生きていることが許せず、雑誌で取り上げて追い詰めてほしいというのだった。最初は半信半疑だった記者の藤井修一。しかし取材を進めていく中で、次第に須藤の告発は本物に違いないとの確信が深まっていく藤井だったが…。
<allcinema>

ずばり、出演者の迫真の凶悪な演技に思わず舌を巻いた。

リリーもいいけど、特にピエール瀧は一世一代レベルの名演じゃないですかね。

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そして若松幸二の下で映画を学んだ、白石監督の才気もうかがわせる。

アウトレイジじゃないけど、みんな悪い。

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山田孝之は、いわゆるグッドフェローズのレイリオッタのポジションだ。

凶悪事件を起こす主犯2人の生き様は本当にもう、異様なほど凶悪。『冷たい熱帯魚』のでんでん顔負け。

しかし、そんな凶悪事件を、高齢化社会の日本の問題と重ね合わせ、保険金殺人、高齢者の殺人、土地の転売などと結んでおり、凶悪ながらも共感性の高い一作となっており、文学的であさえある。普通に国際映画祭の出品も納得です。

それにしても昨今の邦画は、資金を賭けた映画はしょぼいものばかりで、スペクタクルのような映画は作れないので、演技人の迫力や、暴力やセックス、映画の演出力とか小回りを利かせたような、いわゆる「迫真の劇」のような映画ばかりだなと感じる。

園シオンなどの台頭などもあり、邦画の秀作はこの手のものばかりであり、良くも悪くもスケールは小さくなっていて、同じような顔ぶればかりにもなりがちで、この凶悪あたりで、いわゆる「凶悪映画」のピークを迎えるのかなと、余談ながら感じた。

kojiroh

『深夜食堂』(2015年、日本)―75点。中華圏での人気も納得のコミック映画


『深夜食堂』(2015年、日本)―119min
監督:松岡錠司
脚本:真辺克彦、小嶋健作、松岡錠司
出演:小林薫、高岡早紀、柄本時生、多部未華子、余貴美子、筒井道隆、菊池亜希子、田中裕子、不破万作、綾田俊樹、オダギリジョー etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点
*リアルタイム映画

香港や台湾でも人気のある映画・深夜食堂。
安倍夜郎の漫画が原作。小林薫主演の人気深夜TVドラマ初の劇場版。

別に日本ではぜんぜん知らなかったが、昨今ブームな孤独のグルメと並んで有名なドラマであり、その映画版が意外と面白いといううわさを聞き、ANAに乗ったら機内映画が用意されていたので鑑賞することにした。

◎あらすじ
夜も更けた頃に営業が始まるその店を、人は“深夜食堂”と呼ぶ。メニューは酒と豚汁定食だけ。それでも、客のリクエストがあれば、出来るものなら何でも作るのがマスターの流儀。そんな居心地の良さに、店はいつも常連客でにぎわっていた。ある日、店に誰かが置き忘れた骨壺が。どうしたものかと途方に暮れるマスター。そこへ、久々に顔を出したたまこ。愛人を亡くしたばかりの彼女は、新しいパトロンを物色中のようで…。上京したもののお金がなくなり、つい無銭飲食してしまったみちる。マスターの温情で住み込みで働かせてもらう。料理の腕もあり、常連客ともすぐに馴染んでいくが…。福島の被災地からやって来た謙三。福島で熱心にボランティア活動する店の常連あけみにすっかり夢中となり、彼女に会いたいと日参するが…。
<allcinema>

うーん、出来のいい深夜のコアなドラマってかんじだが、かなり見やすくポップな要素も内包していて面白かった。何か心に触れてくるものがある。
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独特な言葉遣いで淡々と料理を作る小林薫の姿には、なんというか硬派な男の姿を感じる。

いくつかのエピソードを2時間の枠につなげていて、編集というか脚色もなかなかよくできていると思った。

卵焼きが本当に美味しそうにできていて、まあこういう食堂があるなら言ってみたいなと思える。豚汁の料理シーンとか、うーん、この世界観はどこか病み付きになるものがある。2015-06-27_130225

常連客の脇役陣や警官など、サブキャラクターの造形がいいのかもしれない。

シンプルで単純な話で、深夜食堂の常連客と、たまに来るよそ者の抱えた悩みを食堂を通じて解決したりするだけなのだが、心の闇をどこか共有する場としてのこの食堂の存在そのものが興味深いのだよなあと。

震災や現代の貧困など、女性の視点が多いながらも今の日本の闇をライトに描いていて、そこが評価すべきところかもしれない。

まあ飛行機で見るレベルの映画では、これぐらいがベストだなと思いました。

でもやっぱり、音楽と夜の食堂の世界観がいいですね、ああ卵焼き食べたい。

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kojiroh

『闇金ウシジマくん』(2012年、日本)―70点、意外とよくできた人気コミック映画版


『闇金ウシジマくん』(2012年、日本)―129min
監督:山口雅俊
脚本:福間正浩、山口雅俊
原作:真鍋昌平
出演:山田孝之、大島優子、林遣都、 崎本大海、やべきょうすけ、片瀬那奈、岡田義徳、ムロツヨシ etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

ウシジマくんのような暗黒小説のような漫画が、コンビニコミックでも出回るブームになったのは、よく考えると2012年あたりの深夜ドラマ化と映画化だったなと思います。

さて、ツタヤに夜な夜なビデヲを借りに行ったら、ロングセラー的な場所に並んでいたのが映画版牛島くん。そいえば見てなかったので、手軽にドラマを見る感覚でレンタルしました。

○あらすじ
ウシジマは、10日で5割(トゴ)、1日3割(ヒサン)という法外な金利と情け容赦ない取り立てで知られる伝説の闇金。フリーターの鈴木未來(ミコ)は、パチンコ狂いの母親がウシジマから借金をしたばかりに、利息の肩代わりをするハメに。やがて高額バイトを求めて“出会いカフェ”に通い、客とのデートを重ねるようになる。一方、ミコの幼なじみでイベントサークルの代表を務めるチャラ男、小川純(ジュン)。野望に燃える彼は、一世一代のイベントを企画し、その資金調達のためにウシジマのもとを訪ねるが…。
<allcinema>

さて、所感、意外とよくできてて面白かったです。

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キャストが意外と豪華で楽しかったですねえ。
主演の山田もツボだし、AKBの大島とか、これが始めてまともに見たぐらいだったんですが、なかなか想像よりも真剣にやってる感じで、彼女が売れた理由も少し感じた。

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出会いカフェを映像化している意味で、現代っぽい社会現象を描いていて一見の価値あり。

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新井の肉マムシ役も快演ですが、はまってます。

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脚色がなかなか秀逸で、原作そのままの設定かと思ったら、2つほどのエピソードをうまくつなげていて関心しました。なんていうか、チカラが入ってますね。これは流行ります。

原作ほど暗黒ではなく、深夜ドラマもそうだが、うまく設定を女性キャラをいれ、やべきょうすけの役どころなどで基本はダークだが笑いを誘う。この微妙な空気感が商業映画としても成り立たせてますね。

冒頭の金持ちパーティーでの演出なんかは原作にないものだが、それっぽくてよくできてるなぁと。

「お金を楽に手に入れることで、その感謝の気持ちを失うこと、それと引き換えに金銭を得ている」・・・みたいな台詞とか、コマ回しもいいなと。

特にこれ以上書くことはないっすけど、原作が好きな人でも楽しめる内容でした。続編も見てもいいですが、評判悪いので多分見ないかなあ。

kojiroh

『龍三と七人の子分たち』(2015年、日本)―70点。前代未聞の高齢者コメディ


『龍三と七人の子分たち』(2015年、日本)―111min
監督:北野武
脚本:北野武
音楽:鈴木慶一
編集:北野武
出演:藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

※リアルタイム映画評

「アウトレイジ ビヨンド」以来の北野武監督の最新作!
久々であり、監督ばんざい以来のコメディ映画ということで、かつ高齢化社会の現代をテーマにしているので、予告をみて待ちに待った一作を満を持して劇場へ向かった。

あらすじ
70歳になる高橋龍三は、かつては“鬼の龍三”と呼ばれて誰もが恐れた元ヤクザ。しかし引退した今は、息子家族のもとで肩身の狭い思いをしていた。そんなある日、オレオレ詐欺に引っかかった龍三。元暴走族の西が若い連中を束ねて“京浜連合”を名乗り、詐欺や悪徳商法で荒稼ぎしていると知っては、もはや黙ってはいられない。そこで龍三は、それぞれにわびしい老後を送る昔の仲間7人を呼び集め、“一龍会”を結成して京浜連合成敗に立ち上がるのだったが…。
<allcinema>

冒頭から70歳を超えるじじいのアップから幕を開ける。
しがれた声とスローな会話、子供みたいに感情が激しく、うーん、ジジイって先がないから最強であるが、本当に最低だなと、老いの醜さと滑稽さをここまで前面に押し出した映画は、かなりの前衛的というか実験的な一作だ。

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もちろん、コメディであり、漫才であり、狂言役者のようなジジイたちの姿には何度も笑わせられた。

やることがなくて暇をもてあます高齢者が、飲食店で賭け事に興じたり、競馬場で絶叫して書けたりするギャンブルシーンがあったり、右翼団体の活動したりと、これはコメディを超えて高齢者のむなしい現実をある意味で露骨に描いている。

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またそんな虚しい高齢者から搾取しようとする、水道除菌や羽毛布団の詐欺っぽいビジネスだったり、そんなものを新興詐欺集団と絡めて描いていて、興味深かった。

オレオレ詐欺から始まり、デモ鎮圧、闇金の取立てから、暴対法によってやくざがいなくなり、取締りの難しい現代の新ヤクザ集団の暴走などを、コメディとしてではなく、メッセージ性を持ってドキュメンタリーのように描いたような意図さえ感じる。

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個人的には寸借詐欺師の中尾彬がいいですね。
前作アウトレイジビヨンドからそうだが、北野映画で滑稽な役回りを演じるには冴えている。

全般的にだが、やはり世界の北野は本当に役者を使うのがうまい。男限定で、本作も女はぜんぜん登場しないし水商売の安っぽい女ばかりしか描かない(けない)のが北野武という監督なのだが、それはそれでひたすら男を描けばいいのかなといつも思う。

みんな生き生きと迫力ある演技をしていて、言葉の掛け合い一つ一つにしても、じいいVS京浜連合の柄の悪い男たちとコントのような「コノヤロー」「バカヤロー」なまじな掛け合いをしていて、相変わらずその罵倒し合う口論シーンの迫力は北野映画ならではだなと。

特に初めて起用した安田ケンがピカイチっすね。

こんな悪い役をやってるような人じゃないので、意外な起用だったが、こんな生き生きした悪い演技が冴えていたなと。むさくるしいジジイより、もっと彼の登場シーンを増やして欲しかった。

本作はちょっとじじいが2時間も暴走している映画なので、
はっきりいって面白かったが、もうしばらく高齢者を見たくなくなるほどの「老い」の醜さを感じてしまった。

同窓会で、よぼよぼの100歳の先生と70歳の生徒が集まるシーンなんかは爆笑もので、上も下も高齢者になってるこの日本の姿は笑えたが、いくらなんでも偶然鉢合わせが多すぎて不自然に感じたりも。

あと脚本もちょっとホステスと龍三と詐欺集団がマンションではちあわせするシーンなんかはちょっと無理あるなと興ざめしたところ。

もっと無駄なシーンなくしてシンプルに90分にすればかなりいい映画だったなという所感。60点ぐらいですが、この挑戦心には+10点です。

高齢化社会の現代、見る価値ある映画だったが、じじいの姿はしばらく見たくありません笑 若いってすばらしいっ!

kojiroh

『地獄でなぜ悪い』(2013年、日本)―50点、雰囲気だけで中身は支離滅裂な園監督


『地獄でなぜ悪い Why don’t you play in hell?』(2013年、日本)―130min
監督:園子温
脚本:園子温
音楽:園子温、井内啓二
撮影:山本英夫
出演:國村隼、堤真一、二階堂ふみ、友近 etc

【点数】 ★★★★★☆☆☆☆☆/ 5.0点

「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」の園子温監督が20年前に手がけたオリジナル脚本を基に作り、第70回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門で公式上映、上映後は7分間のスタンディングオベーションなど、国際舞台で評判よさそうだったのでレンタルで鑑賞したのだが・・・。

●あらすじ
ヤクザの組長・武藤は、獄中にいる最愛の妻・しずえの夢を叶えようと躍起になっていた。それは娘のミツコを主演に映画を製作するというもの。しかし、肝心のミツコは男と逃亡してしまい、映画が出来ないまま、いよいよしずえの出所まで残り数日となってしまう。そこで武藤は、手下のヤクザたちを使って自主映画を作ることを決断する。そして何とかミツコの身柄を確保し、映画監督だという駆け落ち相手の橋本公次に、完成させないと殺すと脅して映画を撮影するよう命じる。ところがこの公次、実は映画監督でもなければミツコの恋人でもないただの通りすがりの男だった。それでも監督として映画を完成させなければ彼の命はない。そんな絶体絶命の中で出会ったのが、自主映画集団“ファック・ボンバーズ”を率いる永遠の映画青年、平田。一世一代の映画を撮りたいと夢見てきた平田は、ここぞとばかりにミツコに執着する敵対ヤクザ組織の組長・池上まで巻き込み、ホンモノのヤクザ抗争を舞台にした前代未聞のヤクザ映画の撮影を開始してしまうのだが…。
<allcinemaより>

テロップは面白い。予告編もすばらしく楽しそう。豪華キャストだし、監督も世界の園だし、こっりゃあ面白くないわけない!!!!・・・と期待したが、グダグダでびっくりしました。

この園監督は冷たい熱帯魚がピークで、それ以降はどんどん馬鹿になっている気がしてしょうがない。

内輪でいつも同じようなメンツ。

神楽坂も毎回のように使うし、エロい女と結婚して馬鹿になったんじゃないか?と疑うレベル。

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叫んだり絶叫したり、誇張しすぎで役者をこき使ったような演技も、毎回同じようなパターンでそろそろ飽きる。最初はそりゃあ物珍しかったが。

ただいつもとは違う国村や友近の起用はなかなかセンスを感じ、堤とかもいい味だしてた。逆にこれだけいい俳優使ってこのデキは・・・園信者しか絶賛してないんじゃない?

二階堂ふみのエロい雰囲気も、ヒミズとはずいぶん違ってびっくりしました。もはやこの映画は彼女のための映画かなと。こんなにセクシー美人だったかと思うほど演技もキレがあり、映りもよかった。脚本通り、彼女のための映画になっている。

しかしストーリーはもうあるようでないというか、あまりにも脚本の完成度が低いなと、お粗末で、ラストへいくにつれガッカリしました。何が20年越しなの? これ本人の自己満足とコンプ解消のために書いただけのシナリオじゃね?

安直でまったくひねりのないオチ。ほぼ妄想物語みたい。

安易な血しぶきが過剰で、まったくリアリティのない暴力描写、キューブリックのシャイニングをパロったような安易な血だまりのスライディングも幼稚に感じた。

前置きも無駄に長い。この中身のない映画に130分の価値はないです。90分で十分。予告編が一番面白かったパターンの映画です。

今の映画がぜんぜん面白くなくてクズみたいな映画が多くて・・・まさにお前のこの映画じゃないか!w

深夜ドラマレベルの映画でしかないが、なんで本作が海外で評価されるのかよくわかりませんねえ。過去の秀作にだまされてるんじゃないかな、みんな。

才能というのは枯れるものだなとつくづく感じた残念な一本でした。

豪華キャストで見ごたえはありましたが。あと音楽とか、作風や雰囲気時代は悪くなかったですけどねえ。

深夜ドラマを見るかのごとく流し見するなら悪くない、映画館で見る価値のない映画でした。

kojiroh

『幸福の黄色いハンカチ』(1977年、日本)―80点。和製ロードムービーの元祖&最高傑作


『幸福の黄色いハンカチ』(1977年、日本)―108min
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
音楽:佐藤勝
出演:高倉健、武田鉄矢、桃井かおり、倍賞千恵子 etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

2014年11月の名優、高倉健の追悼キャンペーンってことで、いまだに見たことがなかった昭和の名作「しあわせの黄色いハンカチ」をこの機会に鑑賞したのでレビューします。

◎あらすじ
刑期を終えた中年男が、行きずりの若いカップルとともに妻のもとへ向かう姿を描いた“健さん”主演のロード・ムービー。北海道網走。夢だった新車を買って北海道をドライブする欽也は、途中女の子をナンパし、ふたりで旅を続ける。ある時、ひょんなことから出所したばかりの中年男・勇作と出会い、旅をともにすることに。やがて、ふたりは勇作から“自分を待っていてくれるなら、家の前に黄色いハンカチを下げておいてくれ”と妻と約束したことを打ち明けられる……。あまりにも有名なラストは“あざとい”と感じながらも涙せずにはいられない感動作。
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はい、ずばり、和製ロードムービーの元祖にして最高傑作じゃないでしょうか。
笑いあり、涙あり、さらにわたしの大好きな観光大国・北海道が舞台。もう文句なしでわたし好み。この時代も北海道旅行はやってたのね。

予備知識なしで見たので、昭和の時代に東京からフェリーで車を移動してロードムービーを成し遂げるという、冒頭からのテロップが素晴らしくスピーディーかつ、昭和の経済発展の勢いをも感じさせる。
デフレ世代のわたしとしては、こんな時代があったのかと非常に興味深かった。
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2014-11-24_192731マツダのこの赤い車がまじで最後はかわいく思えてくる。

小道具がいいですね。赤い車、黄色いハンカチ、イカれたハットとグラサン。

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この時代の人間は勢いがあったのかなあ。
武田鉄也の若さと、狂言役者のような饒舌でスケベで間抜けな役回りが、隠し砦の三悪人的でもある。しかし、このキャラは今の時代では再現難しいなあと、本当に興味深かった。
桃井かおりも若いっすねえ。どもったおどおどした感じの役柄も、この時代ならでは?
何より高倉健が渋すぎるぜっ!
寡黙なアニキキャラがいい。
不器用で、男は黙って・・・的な。
はっきりした顔立ちと、顔のしわが「男」を語ってくれる。

出所後のビールとラーメンをほおばるシーンの迫力も印象的。

まあ作品としては、山田監督のカメラワークもさえていて、ズームアップを多用した手法や、車の中からの視点などを巧みに使っていて、見ごたえあります。

とりあえず昭和の高度成長期の勢いと感じさせる、ロードムービーとして文句のつけようのない傑作ですねえ。フルっぽいっちゃ古っぽいですが・・・、

しかし物価が上がっているインフレの好景気の中、ラーメンの値段が360円→400円にあがっているとか、細かい描写がその時代を感じさせてくれる。

日本は昔、インフレで、その時代はこういうかんじで感情的だが人情味がある、男が強い、女を守ってやる系のパワフルな時代だったんだなあと。

今は不況でデフレで人間関係は希薄で、男女平等、てか女が強くなりすぎな、少子高齢化時代。ああ、この映画は海外リメイクさせるような傑作だが、今の時代に似たようなものを作っても今は昔、うけないだろうなあ。面白いけども。

というわけで高倉健も素晴らしい演技を見せてくれますが、高倉健以上に、この時代を描写したことのほうが興味深かった一作です。

Kojiroh

『隠し砦の三悪人』(1958年、日本)―戦国時代と黄金と美女を巡るスペクタクル


『隠し砦の三悪人』(1958年、日本)―139min
監督:黒澤明
脚本:菊島隆三、小国英雄、橋本忍、黒澤明
音楽:佐藤勝
撮影:山崎市雄

出演:三船敏郎、千秋実、藤原釜足、藤田進、志村喬、上原美佐・・・etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

七人の侍や羅生門、用心棒などの名作に隠れてあまり注目されないが、黒澤の中期の傑作として、ジョージルーカスにも多大な影響を与えたとされる『隠し砦の三悪人』。

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●あらすじ
黒澤明監督が戦国時代を舞台に描く娯楽活劇時代劇の傑作巨編。敗軍の将が世継ぎの姫と隠し置いた黄金200貫とともに、敵陣を突破する。次々と遭遇する絶体絶命の危機を間一髪で切り抜けていくアイデアの数々に脱帽。また、群衆シーンの迫力や走る馬の疾走感など黒澤演出も冴え渡る。妙に色っぽい雪姫と狂言回し的な百姓コンビの3人が世界のミフネに負けない存在感を見せてくれる。この百姓コンビが、後に「スターウォーズ」の“C-3PO”“R2-D2”のモデルとなったことはあまりにも有名な話。
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所管、驚いた。
この時代にこのような映画技術と手法をふんだんに盛り込んだ作品があったとは。
ロードムービー的要素や、国越えの脱出劇的要素、槍と槍との一騎打ち、騎馬戦、姫と黄金を守る旅、滑稽で欲張りでよくしゃべる2人組と1人の強い男、そして美女の王女。

ずばり、このプロットというか舞台設定が斬新である。
3人組の躍動感あるトリオはすごい。キャラクター描写がたくみなのだ。

三船の存在感も多大で、馬に乗ってカタナを上げて騎馬戦を展開するあのシーンの迫力もすばらしい。2014-07-19_1731032014-07-19_172638

が、それ以上に千秋実、藤原釜足の百姓2人組の滑稽なキャラクターは映画史に残るレベルで、ジョージルーカスにも影響を与えている。

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本当に本作は、レオーネ監督の『続・夕陽のガンマン』の、ブロンディとトゥッコのコンビを彷彿させる。この映画がなければ誕生しなかったのではないかと思える。

あと雪姫の強いキャラクターも黒澤映画にしては珍しい。
特に野宿して横たわるシーンの構図と妖艶さは名シーンだなと。

佐藤勝の印象的なテーマと共に繰り広げられるロードムービー、合戦あり、決闘あり、お祭り騒ぎから銃撃戦まで。七人の侍を超える大スペクタクルじゃないかっ!

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溢れんばかりのアイディアが、ある意味、実験的に盛り込まれている本作であるが、商業的にも評価的にも他の名作に隠れて目立たない。個人的にはすばらしいが、盛り込みすぎて消化不良な感じもする。

幕切れも妙にあっけなく、大スペクタクルにしては西部劇のような終わり方が少し残念かなとも思う。ロケが難航したり予算がかかりすぎたりと問題が多かったので、おそらく黒澤としては物足りない一作だったのだろうと推測。

しかし、本作が目指したものが、個人的には『続・夕陽のガンマン』に受け継がれたきがする。南北戦争の間で強欲な3人の男たちが黄金を奪いあう戦いを繰り広げるというプロットが似ている。戦国時代の巨大な戦いの間で揺れる本作と。『続~』は女っけ0だが、狂言的な百姓2人の滑稽なやりとりを交えて黄金を巡るスペクタクルが展開されるプロットは多くの模倣を生んだのかもしれないと思った。

The hidden forest、隠し砦の三悪人。
タイトルもまた言い得て妙だが、この三悪人とは一体、誰のことなのか。
百姓・六郎太・姫?

普通に考えたら利用するものされる者ってことで、六郎太・太平・又七だろうが、 本作の人々は意外と残虐非道な悪人はいないなと思った。ただ、隠し砦の三悪人という言葉のセンスは素晴らしいです。

kojiroh

『用心棒』(1961年、日本)―ウェスタン的、痛快娯楽時代劇の元祖


『用心棒』(1961年、日本)―110min
監督:黒澤明
脚本:黒澤明、菊島隆三
音楽 佐藤勝
撮影:宮川一夫
出演者:三船敏郎、仲代達矢、山田五十鈴・・・etc

【点数】 ★★★★★★★★★☆/ 9.0点

セルジオレオーネとイーストウッドによるマカロニウェスタンの元祖・『荒野の用心棒』の元ネタとして有名な、黒澤と三船の黄金コンビが作った痛快娯楽時代劇、『用心j棒』。

久しぶりにDVDで見て、今の時代でも色あせることないこの作品のレビューを書こうと思い立つ。

●あらすじ
やくざと元締めが対立するさびれた宿場町。そこへ一人の浪人者がやってくる。立ち寄った居酒屋のあるじに、早くこの町を出ていった方がいいと言われるが、その男は自分を用心棒として売り込み始める。やがて男をめぐって、二つの勢力は対立を深めていく……。ハメットの『血の収穫』を大胆に翻案、時代劇に西部劇の要素を取り込んだ娯楽活劇。後にマカロニウェスタン「荒野の用心棒」としてパクられた逸話はあまりにも有名である。桑畑三十郎が名前を変えて活躍する姉妹篇「椿三十郎」も製作されている。
<allcinema>

流れ者、桑畑三十朗。このキャラクター設定は多くの映画に影響を与えたのではないかとも思う。

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北野映画の『座等市』にも、もろこの設定の影響を感じる。
北野監督が言っていたが「黒澤の映画は完璧だ、ミスショットが1枚もない」と。すべてが絵画のようで、フィルム1枚1枚を見ても、完璧らしい。

確かにそううなずけるほど、羅生門もそうだが、本作『用心棒』の宮川一夫の撮影はすばらしい。

墓屋がハイエナのようにつきまとっておべっかする、カメラワークと躍動感、そして犬が手をくわえて走ってくる画面の泥臭さとユーモラスな雰囲気なんて特にすばらしいと思う。

流れものと野暮な男たち。まったく女っけのない映画だが、その泥臭い重厚感と、時にユーモアが飛び交う本作のセンスは、マカロニウェスタン的である。それはレオーオが引用したかどうかは分からないが、無口で強い男が野暮でおしゃべりな男たちを翻弄するように戦いを仕掛けるスタイルは、マカロニウェスタンで演じるイーストウッドにも影響を与えたのだろう。

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仲代の演技も、典型的なカタナVsピストルという二元論な戦いだけで落としていない点がいい。単純明快なのだが、この映画の流れは1つ、フォーマットとして多くの模倣を生んだと思う。

ジョンフォードの西部劇ウェスタンを日本へ輸入して時代劇風に加工して、さらにそれがまたマカロニウェスタンみたいな模倣を生んだのかもしれないと思えるほど。

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ラクビーの戦術を模倣して考えられたらしい最後の決闘シーン。
戦いそのものはじれったくなく、どちらかというと一瞬で終わる形の決闘シーンが、単なる単純なチャンバラで終わらない深みがあると思った。

三船の笑いながらピストルに向かってゆくあの表情、すばらしい演技もあり、色んなところでアイディアの宝庫のようなフィルムだなと感じる。テーマとして有名な音楽もすばらしい。

個人的には本作があまりにもすばらしいので、続編の椿三十朗はあまり評価する気にはなりませんねえ。森田監督が織田とリメイクしてたが、相当な駄作らしくて見てませんが、なぜこっちの用心棒をリメイクしなかったのか不思議。

ともかく白黒ながらも完璧なカメラワークで記録された「羅生門」と並び、100年先も名作というか手本として残っていそうな映画だなと思いました。

kojiroh

『羅生門』(1950年、日本)―90点。黒澤×芥川文学 ベネチア受賞作の歴代最高傑作


『羅生門』(1950年、日本)―88min
監督:黒澤明
脚本:黒澤明、橋本忍
音楽:早坂文雄
撮影:宮川一夫
出演者:三船敏郎、森雅之、京マチ子、志村喬 etc

【点数】 ★★★★★★★★★☆/ 9.0点

かつて、2008年にデジタルリマスターが出て劇場へ見に行ったこともある、日本映画屈指の名作。

60年以上前だが、80分弱というフィルムの中に、映画史を変えるようなインパクトのある映像と演出、アイディアを詰め込んだ、ベネチア歴代最高レベルの受賞作であることも納得の一作。

今更ながら歳を重ねてから見返すと、新たな発見や感動があった。

◎あらすじ
芥川龍之介の短編『藪の中』をもとに映像化。都にほど近い山中で、貴族の女性と供回りの侍が山賊に襲われた。そして侍は死亡、事件は検非違使によって吟味される事になった。だが山賊と貴族の女性の言い分は真っ向から対立する。検非違使は霊媒師の口寄せによって侍の霊を呼び出し証言を得るが、その言葉もまた、二人の言い分とは異なっていた……。ヴェネチア国際映画祭でグランプリを受賞した、黒澤明の出世作。

<allcinemaより引用>

ぼろぼろの羅生門と、降りしきる雨。
木片をちぎって火を起こす野暮なシーンもなんだか忘れられない。
雨宿りをしつつ、回想されるその構成も素晴らしい。

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監督の黒澤も素晴らしいが、何と言っても宮川一夫の撮影だ。モノクロで、太陽光を交えて、早坂文雄の音楽で森の中を志村喬が歩いてゆくシーンの迫力、劇場で見たときはさらに圧倒された。

羅生門と藪の中という芥川の傑作2つを旨く入り交ぜた構成も、すごいなと。本当に。2014-05-07_140422

三船の野蛮な盗賊役は、その後の7人の侍の原点とも言える。衣装の肉体の野暮ったさ、しかし鍛えられて男らしいその姿は彼特有の個性だ。

そして京マチ子。この妖艶な演技、そして女の怖さ・・・モノクロでも伝わってくる。2014-05-07_140312

3人の証言から回想し、最後は志村喬・・・もうなんか、ぞっとするものがあった。死後まで引きずる人間のエゴと、視点の違い。この世の伝えるもので、いい加減なものが如何に溢れているのか、この世にはエゴが満ちている。

当たり前な残酷な真実を、単純かつ洗練されたストーリーで90分以内にフィルムに映したのは偉業であろう。

ワンシーンワンシーンがアイディアに満ち、絵画のように完璧な構図になっている。

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映画の技術が進んだ現代、データ量が無数に広がって無限に可能性が広がった。しかし、この羅生門を越える作品が本当の意味で生まれたのか?

テクノロジーの向上は必ずしも芸術性を高めるわけではない。

むしろ現在は機械を使って色々とできるからこそ、逆に手抜きによる映画が増えている。人件費を削減して、CGで代用し、どうも人間特有の「間」であったり「緊張感」がもたらす迫力が足りないなあと。

そんな映画の原点にして真髄に迫れるものが、羅生門にはあるなと思った。

過去の遺作を見ることで、刺激を受けたい人には、羅生門が手軽に見れるしもってこい。とりあえずデジタルリマスターしてくれた角川と米映画芸術科学アカデミーには感謝です。

kojiroh

『ソラニン』(2010年、日本)―75点。モラトリアムな現代の若者の心を揺さぶる名作コミック映画化


『ソラニン』(2010年、日本)―126min
監督:三木孝浩
脚本:高橋泉
原作:浅野いにお『ソラニン』
出演:宮崎あおい、高良健吾、桐谷健太、近藤洋一、伊藤歩 etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

人気漫画家・浅野いにおの同名傑作コミックの映画化『ソラニン』。
宮崎あおいの主演と、これまで数多くのPVを手掛け、本作が長編映画初メガホンとなる三木孝浩が描く、自分探し系&音楽映画。

ひょんなことから見たら意外に傑作。話題性あって、漫画はちょっと立ち読みした程度でしか知らなかったが、軽音楽部にいたことがある筆者としては共感性の高い一作だった。

●あらすじ
都内の会社に勤めるOL2年目の芽衣子とフリーターでバンドマンの種田。大学時代に軽音サークルで知り合い、付き合って6年になる2人は、多摩川沿いの小さなアパートで一緒に暮らしていた。そんなある日、芽衣子は種田に背中を押してもらう形で、嫌気の差していた仕事を辞めることに。一方、種田はサークル時代の仲間とバンド“ロッチ”の活動を続けるものの、将来の不安と焦りから音楽への思いを押さえ込んでバイトに励むようになっていた。だが、芽衣子にそのことを指摘された結果、バイトを辞めてレコーディングに集中し、デモCDを完成させ、今回のチャンスを掴めなければバンドを解散することを決意。しかし、厳しい現実を突きつけられた種田は、ある日突然、芽衣子に別れを切り出す…。
<allcinema>

さて、別になんともない、自由を求めて会社を辞める、自分のやりたいことをやる、しかし現実は厳しかったという、自分探し系なよくありそうなお話。
しかし、こんなに感受性を揺さぶられるのはなぜだろうっ!

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個人的にこのソラニンの世界はかなり救いのない話で、凡人が自由になりたくて会社を辞めたり仕事をやめたりしても、結局は救いはなく、単調な日常が繰り返されていくだけだ。

しかし日本の会社社会の閉塞感、満員電車、パワハラ、粘着質でウチソト文化な日本の会社社会の描写がうんざりするほどリアル。わびしいアパートでの自由だが不安定な生活なんてのも、下北っぽい。若者の不安を象徴しているかのよう。

まあ人生の限界というか、特に陰湿なサラリーマン業ばかりのこの日本において、本作の主人公のような感情になる人間が多くて共感できるということだろうか。

しかし原作が秀逸である。何よりこれ。

そしてバンド系映画にしては、みんな本当に演奏しているところが一番魅力。バンド音楽の迫力が伝わってくる映像はまさにPV的。

宮崎あおいもNANA以上にハマッてるし、桐谷健太がいい。本当にドラムを叩くからこそ、この世界にハマッてる。サンボマスターの近藤洋一も、これは名演だと思った。

6年間大学生やってる加藤に対して、「だって加藤は普通の奴だもん。これから長くて退屈な人生が待ってるってアイツわかってるし。だからギリギリまで遊ばせてやろうとはおもってるんだよね。」という言葉がすごく本質的に思えた。2014-04-03_1227562014-04-03_122813

本当に音楽をやっている人間だからこそ、このソラニンの世界が分かるのだ。
そしてわたしも音楽やってる人間だからこそ、この世界が分かる。共感できる。軽音楽部の人間の末路はリアルでこんな感じだったりする。まあ面白かった理由はそれだけかもしれないが。

自分の幸せを割り切ろうとして突っ走る種田のシーンは正直、かなり感情を揺さぶられた。

しかしその後、背負うものができた仲間たちの疾走も勇気をもらえるというかなんというか・・・本作を見て思ったことは、自由で背負うものがない無目的な生活よりも、何かを背負って生きてゆく方が素敵だってことだろうか。

まあ、どっちにしても救いはないのだけれど・・・なかなか文学的な一作だなあと、『ソラニン』、意外と楽しめた。2014-04-03_123528

豪華キャストが本気で演奏しているシーンを見るPVとしても魅力的かなと。

kojiroh