『凶悪』(2013年、日)―80点。その名の通り、悪い男たちの名演


『凶悪』(2013年、日)―128min
監督:白石和彌
脚本:高橋泉、白石和彌
原作:新潮45編集部編『凶悪 -ある死刑囚の告発-』
出演:山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴・・・etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

評判がいいここ1~2年の邦画として、「凶悪」があったので、レンタル屋で目に付いて借りてみた。

新潮45編集部の取材記録を綴った『凶悪 ある死刑囚の告発』を基に描くクライム・サスペンス。主演は「鴨川ホルモー」の山田孝之。共演にピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴。

監督は「ロストパラダイス・イン・トーキョー」の白石和彌。

◎あらすじ
 ある日、スクープ雑誌『明潮24』に死刑囚の須藤純次から手紙が届く。それは、判決を受けた事件の他に、彼が関わった誰も知らない3つの殺人事件について告白するものだった。須藤曰く、彼が“先生”と呼ぶ首謀者の男が娑婆でのうのうと生きていることが許せず、雑誌で取り上げて追い詰めてほしいというのだった。最初は半信半疑だった記者の藤井修一。しかし取材を進めていく中で、次第に須藤の告発は本物に違いないとの確信が深まっていく藤井だったが…。
<allcinema>

ずばり、出演者の迫真の凶悪な演技に思わず舌を巻いた。

リリーもいいけど、特にピエール瀧は一世一代レベルの名演じゃないですかね。

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そして若松幸二の下で映画を学んだ、白石監督の才気もうかがわせる。

アウトレイジじゃないけど、みんな悪い。

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山田孝之は、いわゆるグッドフェローズのレイリオッタのポジションだ。

凶悪事件を起こす主犯2人の生き様は本当にもう、異様なほど凶悪。『冷たい熱帯魚』のでんでん顔負け。

しかし、そんな凶悪事件を、高齢化社会の日本の問題と重ね合わせ、保険金殺人、高齢者の殺人、土地の転売などと結んでおり、凶悪ながらも共感性の高い一作となっており、文学的であさえある。普通に国際映画祭の出品も納得です。

それにしても昨今の邦画は、資金を賭けた映画はしょぼいものばかりで、スペクタクルのような映画は作れないので、演技人の迫力や、暴力やセックス、映画の演出力とか小回りを利かせたような、いわゆる「迫真の劇」のような映画ばかりだなと感じる。

園シオンなどの台頭などもあり、邦画の秀作はこの手のものばかりであり、良くも悪くもスケールは小さくなっていて、同じような顔ぶればかりにもなりがちで、この凶悪あたりで、いわゆる「凶悪映画」のピークを迎えるのかなと、余談ながら感じた。

kojiroh

『スティーブ・ジョブズ』(2013年、米)―75点。死後だからこそ描ける?秀逸起業映画


『スティーブ・ジョブズ』(2013年、米)―122min
監督:ジョシュア・マイケル・スターン
脚本:マット・ホワイトレイ
出演:アシュトン・カッチャー、ジョシュ・ギャッド、アーナ・オライリー、ダーモット・マローニー、マシュー・モディーン、J・K・シモンズ、ルーカス・ハース

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

2011年、56歳の若さでこの世を去ったアップル創業者スティーブ・ジョブズの波瀾万丈の人生の伝記ドラマ。

2年前の作品だが、レンタル屋で目に付き、今更ながら鑑賞。

◎あらすじ
大学を中退しゲームメーカーに就職したスティーブ・ジョブズは、たびたびトラブルを引き起こす厄介者だった。1976年、そんなジョブズは、自分と同じようなはみ出し者の友人たちを集めて“アップルコンピュータ”を設立する。その後アップル社はヒット商品を連発、わずか4年で株式の上場に成功する。しかし彼の独裁的な経営は多くの敵をつくり、ついには自分の会社から追い出されるという皮肉な結果を招いてしまうが…。
<allcinema>

さて、非常にスピーディーな展開で、無駄がなく、よくできていると感じた。
起業系の映画の中ではかなり秀逸な方じゃないかな?
とにかくスピード感が素晴らしい。
ねちっこい人間関係も含めて無駄なく描く。

ウルフオブウォールストリートもそうだが、最初30分の、ガレージからの起業シーン――アメリカンドリームな起業ドラマに非常に興奮した。

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個性豊かな仲間たちと、起業、出資者、そして一気に栄光へと駆け抜けるっ!

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しかし起業物語以上に、独裁者としてのスティーブジョブズの姿を赤裸々に描いていることが素晴らしいなと思った。

日本企業顔負けのパワハラのごとく社員をクビにする、完ぺき主義、理想主義者のジョブズの暴走をここまで描いていることが、彼の死後だからこそなのか、けっして彼を肯定した描いていない部分に、本作の魅力を感じる。

独裁者としてのカリスマ性を熱演しており、権力闘争から、人間としてクズの部分を前面に押し出し、会社から追放されるシーンに至るスピード感はいいですね。本当に。

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経営者にはサイコパスが多いとよく言われるが、まさにそれを象徴するかのような人物、スティーブジョブズ。天才だが、狂人。モラルがなく、障碍者スペースに駐車するシーンなどのディティールもいい。

ただ、スピード感を優先したのか、少し説明不足になっているのが残念なところ。

もっと、アイポッドではなく、アイフォンから、死に至るまでを見ていたかった。

人間としてのジョブズを嫌いになる要素満載ですが、起業系ドラマ好きには必須の秀逸な起業映画かなと思いました。

Stay foolish・・・彼だからたまたま成功できたってだけなんだろう、きっと。本当に彼の成功法則には再現性がないなとただただ思わされる。

kojiroh

『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(2013年、米)―85点。カンヌグランプリ・コーエン兄弟監督最新作


『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(2013年、米)―104min
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:オスカー・アイザック、キャリー・マリガン、ジョン・グッドマン、ギャレット・ヘドランド、ジャスティン・ティンバーレイク etc

【点数】 ★★★★★★★★☆/ 8.5点

第66回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを獲得し、第86回アカデミー賞には撮影賞と録音賞にノミネートされた、コーエン兄弟の最新作。

ニューヨーク・グリニッジ・ヴィレッジのフォーク・シーンで活躍したデイヴ・ヴァン・ロンクをモデルに描く音楽ドラマ。

◎あらすじ
1961年、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ。音楽に対してだけは頑固で、それ以外のことにはまるで無頓着なしがないフォーク・シンガーのルーウィン・デイヴィス。金も家もなく、知人の家を転々とするその日暮らしの日々を送っていた。そんなある日、泊めてもらった家の飼い猫が逃げ出してしまい、成り行きから猫を抱えたまま行動するハメに。おまけに、手を出した友人の彼女からは妊娠したと責められる始末。たまらず、ギターと猫を抱えてニューヨークから逃げ出すルーウィンだったが…。

<allcinema>

ずばり、音楽好きなら堪らない傑作です。

音楽映画というカテゴリで見ると、ここ10年ぐらいでも最高峰じゃないか?

ルーウィンデイビス――彼の存在に、最初からひきつけられる。

特に秀逸なのが、猫ですね。猫映画のカテゴリでも、最高峰じゃない?こんなに猫をモチーフに、もはや重要な助演として猫がくる映画は初めて。

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この主人公は、一言でいうと、音楽しかできないクズ。
人の家を転々としてあげくには女を妊娠させたり、しかし生きるのに必死で、そんな主人公の駄目っぷりが、コミカルなんだが、現実の音楽シーンのつらさも感じさせて、ささるものがある。

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オスカーアイザックのヒゲづらの、不器用なシンガーの姿は本当に、最後は他人事とは思えないものがあった。どんな世界にも、才能あっても不器用でもがいて荒む、彼のような姿には共感性がある。

「金の匂いがまるでしない」と切り捨てられるシーンが、個人的にはかなりいい。

60年代のアメリカの世界観の再現もいい。ギブソンを弾きながらレコーディングする光景も、古臭いフォークやカントリー、レコード。最後までなぞのままのルーウィンの相棒など・・物語の構成、も秀逸ですね。

ルーウィンだけでなく、日常の不安や悩み、徒然なることをフォーク、歌に乗せる人々の姿は心を打つものがあった。

冒頭のシーンが最後に引き継がれるラストは個人的にはかなり好きだ。

そんなわけで、カンヌグランプリが納得の音楽映画でした。

だがやはり、なんといっても猫ですね、最初から最後まで。

kojiroh

『マチェーテ・キルズ』(2013年、米)―45点。クソ映画化が加速したマチェーテ続編


『マチェーテ・キルズ』(2013年、米)―108min
監督:ロバート・ロドリゲス
脚本:カイル・ウォード
原案:ロバート・ロドリゲス、マルセル・ロドリゲス
原作:キャラクター創造 アルバロ・ロドリゲス
出演:ダニー・トレホ、ミシェル・ロドリゲス、ソフィア・ベルガラ、アンバー・ハード
アントニオ・バンデラス、キューバ・グッディング・ジュニア、ウォルトン・ゴギンズ
ウィリアム・サドラー、デミアン・ビチル、メル・ギブソン etc

【点数】 ★★★★☆☆☆☆☆/ 4.5点

「グラインドハウス」内のフェイク予告編から映画化を成し、前作は豪華キャストを集めて成功した、B級バイオレンス・アクションの続編。

主演、ダニー・トレホ、映画初出演となるレディー・ガガ、ミシェル・ロドリゲス、アントニオ・バンデラス、ジェシカ・アルバ、メル・ギブソン、カルロス・エステベスという超豪華共演で描き出す。

評判微妙だったので劇場ではなくレンタルで鑑賞したのだが・・・。

◎あらすじ
ある日、マチェーテのもとにアメリカ大統領から直々の依頼が来る。内容はメキシコのイカれた男“マッドマン”を抹殺してほしいというもの。しかし、マッドマンの心臓はワシントンに狙いを定めたミサイルと連動しており、心臓が止まると発射される仕組みになっていた。それを解除できるのは、世界一の武器商人ヴォズだけ。そのため、マッドマンを生きたままアメリカに連れて行くことに。しかし、そんなマチェーテとマッドマンを、懸賞金目当ての連中が次々と襲いかかってくる。

<allcinema>

クソ映画過ぎてビックリした。

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大統領と世界滅亡への巨大な陰謀からはじまり、もはや宇宙かいっ!!w

メキシカンなノリで、ミッシェルロドリゲス姉さんは好きだし、トレホの動きが硬いが無敵っぷりなマチェーテの存在感は独特でキャラクターは面白いが・・・、

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この役がレディーガガである意味ナシ。くそ配役もいいとこです。なんで本人出演オファーOKしたんやろ?

おっぱいマシンガン。これやりたいだけの、ネタやろ、これ。ぜんぜん強くないザコキャラだし。

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はっきりいって、これだけいい面子を集めて、これだけクソでつまらない映画を作ってしまったなんて・・・歴史の残る、俳優の浪費じゃないかなと。

レディーガガだぜ?
メルギブソンだぜ?

こんだけの豪華キャストをよくここまで浪費したなと。日本で言うと、「IZO」みたいな。

退屈な上にクソ過ぎて笑えて来ましたが、ある意味ですごい俳優の浪費なので、友達と一緒にネタで見るにはいいかもね。

とりあえず、この映画の続編がこれ以上作られることはないだろうと断言せざるをえないレベルのクソ映画でした。ああ、映画館で見なくてよかった。

kojiroh

『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015年、米)―80点。ターミネーターシリーズの正真正銘の新起動


『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015年、米)―126min
監督:アラン・テイラー
原作:Characters by (ジェームズ・キャメロン、ゲイル・アン・ハード)
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ジェイソン・クラーク、エミリア・クラーク、ジェイ・コートニー、J・K・シモンズ、ダイオ・オケニイ、マット・スミス、コートニー・B・ヴァンス、イ・ビョンホン etc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

※リアルタイム映画評

Terminator Genisys

友人と一緒に株主優待券を使って映画を見に行こうとなり、迫力あり予算も沢山使っている系の超大作見ようという展開になり、前評判もなかなかよく、ジェームスキャメロンも絶賛しているターミネーターの最新作を見ることにした。

●あらすじ
 2029年、機械軍との壮絶な戦いを繰り広げていた人類は、抵抗軍のリーダー、ジョン・コナーの活躍により劣勢を挽回、ついに勝利を手にしようとしていた。追い詰められた機械軍は、ジョンが存在した事実そのものを消し去るため、殺人サイボーグ、ターミネーターを1984年に送り込み、ジョンの母サラ・コナーの抹殺を図る。これを阻止するため、抵抗軍側はジョン・コナーの右腕カイル・リースが自ら志願して過去へ向う。ところが1984年に辿り着いたカイルは、いきなり新型ターミネーターT-1000に襲われる。その窮地を救ったのは、タフな女戦士サラ・コナーと敵のはずのターミネーターT-800だった。実はこの世界は、既にカイルの知る過去とは別のタイムラインを進んでいたのだった。
<allcinema>

さて、ずばり、ぜんぜん期待してなかったのでビックリした。

面白いやん!これ!!
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中学生のころ、ターミネーター2にはまって、エアガンとか買って友人とサバゲーしたりしてたので、このT1000の復活は思わずニヤリ。2015-07-16_210228

なぜ韓国のイビョンホンなのかは謎すぎる。
が、これはこれでそれなりにハマっているかなと。

どこかこの、アジョシ的なおじさんと、それに育てられた娘って設定はデジャブだが、ターミネーターがついにその領域に入ったかなと、これは名案だなと。

それにしてもスピード感があってよかった。映画館でみるには最適。

大スペクタクルアクションの連続であった。

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敵が無敵すぎて興ざめなところがあったが、お約束な展開も多数あるが、初めから終わりまで、退屈することなく見れました。

てか、本作はとにかく、アイディアがすばらしいなと。

これはキャメロンの知恵なのだろうが。タイムとラベルを交錯させて、現代に近い2017年へ繋がるくだりは素晴らしいアイディアなと、個人的には意表を突かれた。しかし矛盾は感じない流れで、これこそ正当な「三作目だ!」とキャメロンがうなるのも納得。

さて政治家になってしまってすっかり迫力ないかなと思われるアーノルドシュワルツネッガーだが、いい。オールドタイプのターミネーターT800だが、いい。

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人間らしくなっており、演技も渋さと声の彼ぐらいも深みを感じる。

クリントイーストウッド的な渋さが出てきて、いい。
しゃがれてしまった声がいいのだ。
古いファンだからついつい、ラストの展開には涙が潤んできた。
「・・・My sarah Coner」

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個人的にはヒーローとヒロインがイマイチではあった。

主演の2人は特に美男美女でもなく、何で選ばれたかよくわからない、初期のリンダとマイケルビーンの2人の方がよかったが、まあ現代っぽいポップさはあるか。

しかし冒頭の展開から、過去の焼き直し的なものかと思って全然期待していなかったので、地味に感動してしまった。

最近のハリウッド映画のスペクタクルとしての迫力もさることながら、ジェネシスという存在と審判の日を結びつけるかんじが、高度ネット社会の現代と、スマホや管理下社会への痛烈な風刺も感じさせられ、やはり大衆娯楽映画ながら、現代社会を表現しているメッセージ性が個人的にはかなり楽しめた。

200億円かかってない程度の制作費ながら、なかなか秀逸なターミネーター最新作だった。きっと大ヒットして、続編もどんどんできるだろう。

ただ本作がかなりデキがよく感じるので、これ以上のクオリティは期待できないかなあという感想です。

kojiroh

『マラヴィータ』(2014年、米=フランス)―80点、巨匠のオマージュ満載のクライムコメディ


『マラヴィータ』(2014年、米=フランス)―111min
監督: リュック・ベッソン
脚本:リュック・ベッソン、マイケル・カレオ
原作者: トニーノ・ブナキスタ
製作:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ、ミシェル・ファイファー、ディアナ・アグロン、トミー・リー・ジョーンズetc

【点数】 ★★★★★★★★☆☆/ 8.0点

スコセッシの製作とリュック・ベッソン監督。
主演はロバートデニーロ。これ以上にない黄金コンビ。

希少なベッソンの監督作がでたこともまったく知らなかったので、友人から情報をキャッチしてレンタル屋へ足を急いで鑑賞した。

◎あらすじ
フランス・ノルマンディ地方の田舎町に引っ越してきたブレイク一家。一見ごく普通のアメリカ人家族と思いきや、主のフレッドはなんと元マフィアのボス。敵対するファミリーのボスを売ってFBIの保護証人プログラムを適用され、家族とともに世界各地を転々とする日々を送っていた。監視役のFBI捜査官スタンスフィールドから地元コミュニティに溶け込めと忠告されるも、ついつい悪目立ちしてしまうフレッド。おまけに妻と2人の子どもたちもかなりのトラブルメイカー。そんな彼らの潜伏場所が仇敵にバレるのは時間の問題。ほどなく一家のもとには、フレッドの首を狙う完全武装の殺し屋軍団が送り込まれてくるのだったが…。
<allcinema>

うーん、この組み合わせだけでもスコセッシの黄金時代の映画が好きな筆者は無条件に萌えるわけだが、黄金コンビは形だけでなく、コメディ映画としてもよくできていると思う。

アンタッチャブルだったデニーロがこんな引退生活とは、いや、とにかく色々ツボ。デニーロも演技が楽しそうだなあと感じる。

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しかし本当に過去のアメリカ映画へのオマージュがちりばめられ、かつアメリカ映画とは違ったフランスのセンスで描かれたコメディドラマである点が、なかなか切り口として斬新だと感じた。

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家族4人のキャラクター造形もいいですね、キャスティングも。それぞれのエピソードが耕作しつつも、監視役のトミーリージョーンズの渋い脇役陣もさえている。

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特に好きなのが、間違えて「グッドフェローズ」が流れるシーン。その後のスピーチ。いや、これはツボだった。古いファンから新しいファンまで、お約束のような場面がありつつも、クライムコメディとしてよくできているなあと。アメリカじゃなくてフランスが舞台だからこそですかね。

ラストへ向けての盛り上がりとクライマックスは個人的にかなりデキがいいと感じる。

演技陣から製作まで、とにかく楽しそうに作ってできた秀作でした。

kojiroh

 

 

 

『深夜食堂』(2015年、日本)―75点。中華圏での人気も納得のコミック映画


『深夜食堂』(2015年、日本)―119min
監督:松岡錠司
脚本:真辺克彦、小嶋健作、松岡錠司
出演:小林薫、高岡早紀、柄本時生、多部未華子、余貴美子、筒井道隆、菊池亜希子、田中裕子、不破万作、綾田俊樹、オダギリジョー etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点
*リアルタイム映画

香港や台湾でも人気のある映画・深夜食堂。
安倍夜郎の漫画が原作。小林薫主演の人気深夜TVドラマ初の劇場版。

別に日本ではぜんぜん知らなかったが、昨今ブームな孤独のグルメと並んで有名なドラマであり、その映画版が意外と面白いといううわさを聞き、ANAに乗ったら機内映画が用意されていたので鑑賞することにした。

◎あらすじ
夜も更けた頃に営業が始まるその店を、人は“深夜食堂”と呼ぶ。メニューは酒と豚汁定食だけ。それでも、客のリクエストがあれば、出来るものなら何でも作るのがマスターの流儀。そんな居心地の良さに、店はいつも常連客でにぎわっていた。ある日、店に誰かが置き忘れた骨壺が。どうしたものかと途方に暮れるマスター。そこへ、久々に顔を出したたまこ。愛人を亡くしたばかりの彼女は、新しいパトロンを物色中のようで…。上京したもののお金がなくなり、つい無銭飲食してしまったみちる。マスターの温情で住み込みで働かせてもらう。料理の腕もあり、常連客ともすぐに馴染んでいくが…。福島の被災地からやって来た謙三。福島で熱心にボランティア活動する店の常連あけみにすっかり夢中となり、彼女に会いたいと日参するが…。
<allcinema>

うーん、出来のいい深夜のコアなドラマってかんじだが、かなり見やすくポップな要素も内包していて面白かった。何か心に触れてくるものがある。
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独特な言葉遣いで淡々と料理を作る小林薫の姿には、なんというか硬派な男の姿を感じる。

いくつかのエピソードを2時間の枠につなげていて、編集というか脚色もなかなかよくできていると思った。

卵焼きが本当に美味しそうにできていて、まあこういう食堂があるなら言ってみたいなと思える。豚汁の料理シーンとか、うーん、この世界観はどこか病み付きになるものがある。2015-06-27_130225

常連客の脇役陣や警官など、サブキャラクターの造形がいいのかもしれない。

シンプルで単純な話で、深夜食堂の常連客と、たまに来るよそ者の抱えた悩みを食堂を通じて解決したりするだけなのだが、心の闇をどこか共有する場としてのこの食堂の存在そのものが興味深いのだよなあと。

震災や現代の貧困など、女性の視点が多いながらも今の日本の闇をライトに描いていて、そこが評価すべきところかもしれない。

まあ飛行機で見るレベルの映画では、これぐらいがベストだなと思いました。

でもやっぱり、音楽と夜の食堂の世界観がいいですね、ああ卵焼き食べたい。

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kojiroh

『ブエノスアイレス』(1997年、香港)―60点。伝説的ゲイ映画@香港


『ブエノスアイレス』(1997年、香港)―96min
監督:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ
製作:ウォン・カーウァイ
音楽:ダニー・チョン
撮影:クリストファー・ドイル
出演:レスリー・チャン、トニー・レオン、チャン・チェン etc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆☆/ 6.0点

HAPPY TOGETHER―原題。
ゲイ映画として有名な香港映画。舞台はブエノスアイレス。
監督はウォンカーウェイで超豪華なメンツ。
香港通な筆者だが、そいえば見てなかったのでレンタル屋で見つけて鑑賞。

●あらすじ
南米アルゼンチンへとやってきた、ウィンとファイ。幾度となく別れを繰り返してきた2人は、ここでも些細な諍いを繰り返し別れてしまう。そして、ファイが働くタンゴ・バーで再会を果たすが…。
<allcinema>

即興的で成り行きで香港の地球の裏側にきてしまったゲイカップル。
イケメン2人のラブシーン満載です。よくこんな映画作ったなと、商業的にありかいこれ、さすが自由国家・香港。

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しかし個人的に中華権のゲイ映画なら、スプリングフィーバーの方がだいぶ上の水準を言っているように感じる。

ウォンカーウェイの映画って当たり外れでかいんすよね。即興がほとんどみたいな内容で、脚本は手抜きというかあるようでないもの。

この手の映画製作は好き嫌いと当たり外れがでかい。
案の定、トニーレオンの語り口で、香港の裏側のブエノスアイレス+ゲイっていう設定はすばらしいのだが、それ以上のものがあるかというと少し微妙。

いいシーンはすばらしいと唸るシーンは多いのだが、積み重ねたタバコや、モノクロでのゲイベットシーン、言葉をレコーダーに吹き込む場面、足元で反転する香港など、日常の中の何気ないシーンが印象に残る。

とりあえずゲイのいざこざはいくら伝説的俳優のレスリーチャンでもおなかいっぱいです。

kojiroh

『闇金ウシジマくん』(2012年、日本)―70点、意外とよくできた人気コミック映画版


『闇金ウシジマくん』(2012年、日本)―129min
監督:山口雅俊
脚本:福間正浩、山口雅俊
原作:真鍋昌平
出演:山田孝之、大島優子、林遣都、 崎本大海、やべきょうすけ、片瀬那奈、岡田義徳、ムロツヨシ etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

ウシジマくんのような暗黒小説のような漫画が、コンビニコミックでも出回るブームになったのは、よく考えると2012年あたりの深夜ドラマ化と映画化だったなと思います。

さて、ツタヤに夜な夜なビデヲを借りに行ったら、ロングセラー的な場所に並んでいたのが映画版牛島くん。そいえば見てなかったので、手軽にドラマを見る感覚でレンタルしました。

○あらすじ
ウシジマは、10日で5割(トゴ)、1日3割(ヒサン)という法外な金利と情け容赦ない取り立てで知られる伝説の闇金。フリーターの鈴木未來(ミコ)は、パチンコ狂いの母親がウシジマから借金をしたばかりに、利息の肩代わりをするハメに。やがて高額バイトを求めて“出会いカフェ”に通い、客とのデートを重ねるようになる。一方、ミコの幼なじみでイベントサークルの代表を務めるチャラ男、小川純(ジュン)。野望に燃える彼は、一世一代のイベントを企画し、その資金調達のためにウシジマのもとを訪ねるが…。
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さて、所感、意外とよくできてて面白かったです。

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キャストが意外と豪華で楽しかったですねえ。
主演の山田もツボだし、AKBの大島とか、これが始めてまともに見たぐらいだったんですが、なかなか想像よりも真剣にやってる感じで、彼女が売れた理由も少し感じた。

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出会いカフェを映像化している意味で、現代っぽい社会現象を描いていて一見の価値あり。

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新井の肉マムシ役も快演ですが、はまってます。

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脚色がなかなか秀逸で、原作そのままの設定かと思ったら、2つほどのエピソードをうまくつなげていて関心しました。なんていうか、チカラが入ってますね。これは流行ります。

原作ほど暗黒ではなく、深夜ドラマもそうだが、うまく設定を女性キャラをいれ、やべきょうすけの役どころなどで基本はダークだが笑いを誘う。この微妙な空気感が商業映画としても成り立たせてますね。

冒頭の金持ちパーティーでの演出なんかは原作にないものだが、それっぽくてよくできてるなぁと。

「お金を楽に手に入れることで、その感謝の気持ちを失うこと、それと引き換えに金銭を得ている」・・・みたいな台詞とか、コマ回しもいいなと。

特にこれ以上書くことはないっすけど、原作が好きな人でも楽しめる内容でした。続編も見てもいいですが、評判悪いので多分見ないかなあ。

kojiroh

『龍三と七人の子分たち』(2015年、日本)―70点。前代未聞の高齢者コメディ


『龍三と七人の子分たち』(2015年、日本)―111min
監督:北野武
脚本:北野武
音楽:鈴木慶一
編集:北野武
出演:藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

※リアルタイム映画評

「アウトレイジ ビヨンド」以来の北野武監督の最新作!
久々であり、監督ばんざい以来のコメディ映画ということで、かつ高齢化社会の現代をテーマにしているので、予告をみて待ちに待った一作を満を持して劇場へ向かった。

あらすじ
70歳になる高橋龍三は、かつては“鬼の龍三”と呼ばれて誰もが恐れた元ヤクザ。しかし引退した今は、息子家族のもとで肩身の狭い思いをしていた。そんなある日、オレオレ詐欺に引っかかった龍三。元暴走族の西が若い連中を束ねて“京浜連合”を名乗り、詐欺や悪徳商法で荒稼ぎしていると知っては、もはや黙ってはいられない。そこで龍三は、それぞれにわびしい老後を送る昔の仲間7人を呼び集め、“一龍会”を結成して京浜連合成敗に立ち上がるのだったが…。
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冒頭から70歳を超えるじじいのアップから幕を開ける。
しがれた声とスローな会話、子供みたいに感情が激しく、うーん、ジジイって先がないから最強であるが、本当に最低だなと、老いの醜さと滑稽さをここまで前面に押し出した映画は、かなりの前衛的というか実験的な一作だ。

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もちろん、コメディであり、漫才であり、狂言役者のようなジジイたちの姿には何度も笑わせられた。

やることがなくて暇をもてあます高齢者が、飲食店で賭け事に興じたり、競馬場で絶叫して書けたりするギャンブルシーンがあったり、右翼団体の活動したりと、これはコメディを超えて高齢者のむなしい現実をある意味で露骨に描いている。

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またそんな虚しい高齢者から搾取しようとする、水道除菌や羽毛布団の詐欺っぽいビジネスだったり、そんなものを新興詐欺集団と絡めて描いていて、興味深かった。

オレオレ詐欺から始まり、デモ鎮圧、闇金の取立てから、暴対法によってやくざがいなくなり、取締りの難しい現代の新ヤクザ集団の暴走などを、コメディとしてではなく、メッセージ性を持ってドキュメンタリーのように描いたような意図さえ感じる。

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個人的には寸借詐欺師の中尾彬がいいですね。
前作アウトレイジビヨンドからそうだが、北野映画で滑稽な役回りを演じるには冴えている。

全般的にだが、やはり世界の北野は本当に役者を使うのがうまい。男限定で、本作も女はぜんぜん登場しないし水商売の安っぽい女ばかりしか描かない(けない)のが北野武という監督なのだが、それはそれでひたすら男を描けばいいのかなといつも思う。

みんな生き生きと迫力ある演技をしていて、言葉の掛け合い一つ一つにしても、じいいVS京浜連合の柄の悪い男たちとコントのような「コノヤロー」「バカヤロー」なまじな掛け合いをしていて、相変わらずその罵倒し合う口論シーンの迫力は北野映画ならではだなと。

特に初めて起用した安田ケンがピカイチっすね。

こんな悪い役をやってるような人じゃないので、意外な起用だったが、こんな生き生きした悪い演技が冴えていたなと。むさくるしいジジイより、もっと彼の登場シーンを増やして欲しかった。

本作はちょっとじじいが2時間も暴走している映画なので、
はっきりいって面白かったが、もうしばらく高齢者を見たくなくなるほどの「老い」の醜さを感じてしまった。

同窓会で、よぼよぼの100歳の先生と70歳の生徒が集まるシーンなんかは爆笑もので、上も下も高齢者になってるこの日本の姿は笑えたが、いくらなんでも偶然鉢合わせが多すぎて不自然に感じたりも。

あと脚本もちょっとホステスと龍三と詐欺集団がマンションではちあわせするシーンなんかはちょっと無理あるなと興ざめしたところ。

もっと無駄なシーンなくしてシンプルに90分にすればかなりいい映画だったなという所感。60点ぐらいですが、この挑戦心には+10点です。

高齢化社会の現代、見る価値ある映画だったが、じじいの姿はしばらく見たくありません笑 若いってすばらしいっ!

kojiroh