『デッドエンド 暗戦』(1999年、香港)―6.0点。アンディラウのための軽快ノワール映画


『デッドエンド 暗戦』(1999年、香港)―90min
監督:ジョニー・トー
脚本:ヤウ・ナイホイ、ローレンス・クロチャード&ジュリアン・カーボン
出演:アンディ・ラウ、ラウ・チンワン、ヨーヨー・モン、レイ・チーホン、ホイ・シウホン

【点数】 ★★★★★★☆☆☆☆/ 6.0点

ツタヤの良品発掘コーナーにて取り上げられていた、ジョニートー監督による初期の一作。なかなかこの時代の作品はこうした特集で改めて発掘されないと見ることができないのでレンタルにて鑑賞。

ずばり、90%アンディラウの映画であった。

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◎あらすじ
末期ガンで余命数週間と宣告されたチャン(アンディ・ラウ)は、ある目的のため完全犯罪を計画。彼はまず、大手金融コンサルタント会社に押し入り、人質をとってビルの屋上に立てこもる。人質解放の交渉人として重犯課のホー刑事を指名したチャンは、“これは、ゲームだ。72時間以内にオレを逮捕しろ”と宣言し、厳重に警備された現場から姿を消してしまう。ホーは独自に追跡を始め、チャンの目的が復讐だという事を知る。<Goo映画より>

香港ノワールとしては『インファナル』よりも前の初期の作品になるが、屋上での決死、寡黙に笑う謎めいたアンディ・ラウの姿がとにかくクール。

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後に『MAD』で強烈な演技を見せるラウ・チンワンも主軸に固める。
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時限爆弾、限られた時間内での頭脳戦と肉弾戦。
よくできてはいると思うが、ずばり一言、馬鹿馬鹿しい(笑
ノワール系にしては少しマイルドすぎて、いまいち緊張感もなく、若干のぐだぐだ観がある。

どんでん返しや色々な伏線があり、サスペンスとしてはアイディアも面白い部分があるが、香港映画らしい馬鹿っぽさがちょいと個人的には冷めてしまった。

だが「バスの中だけ恋人」の有名なシーンはインパクト大。
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この映画のすべてはここにあると思える。むしろこのバスの中でのエピソードをもっと拡張して上映すべきだったのかもしれない。逃走中の犯人が検問を逃れるためにヘッドフォンを一緒に聞くことで急速に距離が縮まる。切ないが、このシーンがやはり最も独創的で輝いている場面だった。

あと脇役でのホイ・シウホンの相変わらずのぬひょんとしたカエルみたいな顔で間抜けな上司を演じる姿がジョニートーの映画らしくてなんだか微笑ましかった。

というわけであんまり書くことがないが、部分的には面白かったが全体的にはちょっと幼稚すぎたかな。でもアンディはカッコイイ。サングラスがよく似合うThe香港ガイ。

やはり筆者は、香港ノワールでハードボイルド色が強い作品の方が好みである。

kojiroh

『スカイライン-征服-』(2010年、アメリカ)―6.0点。宇宙人侵略クソ映画の最先端


『スカイライン-征服-』(2010年、アメリカ)―94min
監督:コリン・ストラウス 、グレッグ・ストラウス
脚本:ジョシュア・コーズ、リアム・オドネル
出演:エリック・バルフォー、スコッティー・トンプソン、ブリタニー・ダニエル etc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆☆/ 6.0点

『世界侵略:LA決戦』と同時期に制作されて、内容的にも酷似しているとのことで訴訟問題にもなっている話題のクソ映画。

予算は『世界侵略~』の1/10にも関わらず、色んな過去のパニック侵略映画のパロディというかパクリの寄せ集めのような内容にクソ映画通な人は絶賛する映画を筆者もレンタルにて鑑賞。

ずばり、クソ過ぎて笑えるほどクソだった……。

◎あらすじ
ある日、ロサンジェルス上空にいくつもの巨大な飛行物体が飛来する。そこから発せられた青い光は人類を次々と吸い上げていった。さらに、巨大飛行物体から大量の巨大生物が放たれ、人々を次々と襲い始めた。為す術なく逃げまどう人類。やがて、ようやく軍隊が現われ、必死の抵抗を試みるが…。<ALLcinemaより引用>

ふーむ、ヴィジュアルイメージはカッコイイね。ハイセンスな青い光と字体。んで最後の音楽もクールだね。

この屋上からの青い閃光がとどろくシーンはわりと見もの。

まあしかし、ほんとにオリジナリティ0。あらゆるエイリアン、侵略系の映画のパクリと言うかもはやパロディ。

誕生日パーティーの盛り上がりから急展開でパニックに陥るところなんかは『黒バーフィールド』のオマージュだし、エイリアンの造詣なんかも、飛行機が突っ込んで爆破するとこなんかも、もろ『インディペンデンス・デイ』。宇宙人ミュータントが部屋の中を探るシーンなんかはもろ『宇宙戦争』。

ヘリの墜落シーンはなんだろうね、「ブラックホーク~』なのか、『クローバーフィールド』のラストだろうか、とにかく既視感あるシーンが多くて笑えた。

しかし驚くべきは、この主人公たちは脱出しようとするが、結局のところビルからほぼ一歩も別の場所に移動してねえ! 部屋と屋上と駐車場と、ちょっと屋外、あとはThe end的な、全然動いてないな。この手の侵略映画にしては引きこもり過ぎである。

軍人が主役だった『LA決戦』とはまったく別で、ごく普通の少しリッチな庶民の視点で侵略パニックが動く。まあこの視点の置き方が独自性あるかもしれないが、『クローバーフィールド』的でもあるし、ぶっちゃけ庶民が視点なので、そんなに目新しく面白い状況に追い込まれるわけないのでストーリーとして面白みはあんまりないが、ある種の現実感はあるかもしれない。


だが結局、青い光で惹かれるあのバーサーカー状態はなんだったのだろうか?感染?洗脳?結局、何も分からず、何も解決せず、ただ征服されましたというマジで身も蓋もないお話。(ネタバレ?w)

しかし鑑賞後に突込みを乱打できる映画こそ、クソ映画の殿堂なのかもしれない。つーかボス気取りだったテリーが死ぬのあっけなすぎ。んでその後出てくるボス気取りのおっさんって誰?w あと最後の最後に今更目覚めてどうすんだよ?笑 とにかく笑った。

ぶっちゃけそこまでよくできているわけでもないし、退屈でもあり、すっごい子供騙しです。過去の名作のパロディとしか思えないが、でもマジでやろうとしている心構えには笑えます。なぜか愛せるクソ映画でした。

あと9億円足らずでこんな大スペクタクルっぽい映画を作れた点を評価したいと思います。+0.5点。てことで。

kojiroh

『ファイナル・デッドサーキット』(2009年、アメリカ)―6.5点。ベタベタに死が迫るホラーコメディ


『ファイナル・デッドサーキット』(2009年、アメリカ)―84min
監督:デヴィッド・R・エリス
脚本:エリック・ブレス
出演:ボビー・カンポ, シャンテル・ヴァンサンテン, アンドリュー・フィセラ, クリスタ・アレン, ヘイリー・ウェブ etc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆/ 6.5点

『ファイナルデスティネーション』シリーズの初3D作品にして最大のヒット作になった一作。3Dにて、死が迫ってくる、人気サスペンスホラー映画。だが個人的にはコメディな映画で、人の死にっぷりに不謹慎ながらも盛大に笑うことができる稀なシリーズであり、全部シリーズ鑑破しようと思い、まず手にしたのが第四作。

サーキット会場で壮大なクラッシュを冒頭からフルテンションで見せてくれる。

◎あらすじ
大学生のニックは、恋人ローリたちとサーキット場を訪れ、白熱するカーレースを楽しんでいた。だがそのさなか、突然恐ろしい予知夢を見てしまう。それは、1台のレースカーによるクラッシュをきっかけに後続車が次々と巻き込まれ、コース上は火の海となり、さらに車体の残骸やタイヤが突っ込んだスタンド席も惨劇の舞台と化す、というまさに地獄絵図だった。そして、予知夢から覚めたニックはすぐさまローリたちを強引に会場の外へ連れ出すと、はたして予知夢通りの大惨事が発生する。何とか危機を脱したニックら9人の生存者たち。しかしその後、彼らは次々と怪死を遂げていく…。<All cinema引用>

とりあえずベタベタな展開。
何回かシリーズ観ている人にとってはもう鉄板の流れ。予知夢を見て、事故から逃れる。残酷な死に方から逃げられたと思いきや、次々と異変が起きる。そして死が迫ってくることに気付き、なんとか逃れようとする…。

とにかく美容室から洗車、プールの配水管まで、多彩な死のアイディアは残酷なようで斬新で笑えるほど。金がかかっているだけであり、冒頭のサーキットが爆発するところも非常に迫力がある。

ふっとんだタイヤで首チョンパな惨殺。エグイがアメリカンジョークのような。
エスカレーターにての巻き込まれ惨殺はひどく痛い。

グロくてスプラッターなんだが、それでも全体的に笑える。
特にトラックの運転手が、自らのトラックに体を引っ張られて炎上するシーンには思わず爆笑してしまった。モノが勝手に落ちたり、椅子が壊れかけていたり、ファンが落ちそうになってたり、「ありえねえだろ!?www」と毎度のごとく突っ込みたくなる。

死に方自体は今まで以上に大げさで、かつ爆笑してしまうネタが多く、エンタメ寄りになっていると思った。全体的には短くすっきり収まっているのでサクッと観れる。全然深くて重い映画でもないので、アメリカンな馬鹿な死に方を笑って見るにはいいシリーズ映画である。

だが、個人的にはイマイチ盛り上がりに欠けるところがある。
なにより死の宣告者・トニードットが出演してないのも残念。B級映画に欠かせないベタなフラグがイマイチである。死の宣告があいまいで、Googleで死の連鎖を調べただけで終わらせては、なーんかねえ。

やっぱり3Dなので映画館で観るべき映画なのかもしれない。ショッキングな惨殺死体が飛び散るようなシーンや爆発の迫力などは、やはりビデオでは体感できないのかも。その意味で、一つアトラクション的なホラー映画の一つの境地なのかもしれない。

まあ、回数を重ねるごとに、こうしたお決まりの物語シリーズは色褪せて感じるものだよねえ……。まあクソ映画なんだが、ベタさとグロさに笑えたからよしとしよう。

kojiroh

『インシディアス』(2011年、アメリカ)―6.5点、10年代のエクソシスト


『インシディアス』(2011年、アメリカ)―103min
監督:ジェームズ・ワン
製作:ジェイソン・ブラム 、スティーヴン・シュナイダー 、オーレン・ペリ
脚本:リー・ワネル
出演:パトリック・ウィルソン、ローズ・バーン、タイ・シンプキンス、リン・シェイ etc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆/ 6.5点

『パラノーマル・アクティビティ』と『ソウ』というゼロ年代を代表するホラー映画の生みの親の製作者2人がタッグを組み、ヒットを記録した話題の映画『インシディアス』。

ぶっちゃけ「パラノーマル~」とかあんまり趣味でもないのでそんなに期待はしてなかったが、映画ブロガーなどの評価も高いので一度見てみたいと思い、レンタルにて鑑賞。

所感、陳腐かつ効果的な音響、タイトルの出し方などが、かつてのB級ホラーの名作を思い出させる、まあまあよくできた作品だった。

◎あらすじ
3人の子どもを持つ若い夫婦ジョシュとルネ。新居に引っ越して早々、様々な不気味な現象に悩まされる。そしてある日、小学生の長男ダルトンが梯子から落ちて昏睡状態に陥ってしまう。しかし、身体のどこにも異常はなく、原因は不明のまま。屋敷自体が呪われていると考えた夫婦は、すぐに再度の引っ越しをするが、そこでも同じように怪現象は続く。もはや医者もさじを投げたダルトンを救うため、霊媒師や牧師にも助けを求めるジョシュとルネであったが…。<All cinemaより引用>

前置きが少し長いが、いつなにが起きるか分からない不気味な雰囲気はやはりさすが。ホラー映画としてのツボを押さえた、現代版エクソシストであるといえる。小道具も面白く、メトロノーム、カメラ、とにかくオカルト映画の雰囲気を盛り上げる設定が満載で、マニアにはたまらないのではないか。

そして「ソウ」のジェームス・ワンが監督だけあって、過去の秘められた謎など、トリッキーな物語構成には驚かされた。


何といっても、リン・シェイが出てきてから面白くなった。彼女のキャラの立ち方が抜群で、文句なしに彼女の演技がMVPだと思うほどはまり役。このお祓いのプロが自宅へやって来て奮闘する展開は、まさに中途半端に神父が来ては逃げて行った『パラノーマル~』の続編というか発展系のようにも思える。

こうして振り返ると、確かにキャッチコピーのうたい文句どおり、パラノーマルの自宅撮りのオカルト性と、ソウのサスペンス性が上手く融合して生まれた秀作であるように思える。ラストシーンのどんでん返し感なんかもまさに『ソウ』。ジェームス・ワンらしい映画で、安易なハッピーエンドに導かないハリウッドっぽくない所がいい。

とは言っても筆者はやはりおカルト系の映画はあまり趣味ではなかったです。まあ一見の価値ぐらいはある、好きな人はツボる映画なんじゃないか。

kojiroh

『シックスティ・ナイン 6ixtynin9』(1999年、タイ)―6.5点。才気漂う新鋭的タイ映画


『シックスティ・ナイン 6ixtynin9』(1999年、タイ)―114min
監督:ペンエーグ・ラッタナルアーン
脚本:ペンエーグ・ラッタナルアーン
出演:ラリター・パンヨーパート、タッサナー・ワライ・オンアーティットティシャイ etc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆/ 6.5点

6が、9になる。
よくネタになる世界共通の数字遊び。If 6 was 9.こんな曲もあったなと思い出すような、6と9を間違えたことによるタイのサスペンス映画が本作。鬼才、ペンエーグ・ラッタナルアーンの長編第二作にして、タイのタランティーノと形容され、国際的にも評価を得た出世作。

カルト映画な本作を、筆者は渋谷のツタヤで発見して早速鑑賞。

◎あらすじ
ファイナンス会社の秘書として働くトゥムは、ある朝突然リストラされる。ショックから自殺まで考える始末。その翌朝、彼女のアパートのドアの前に段ボール箱が置かれていた。中にはなんと100万バーツの大金。その金はヤクザの運び屋が9号室に届けるハズの金で、たまたま彼女の部屋の番号札のクギが外れて6が9になっていたための間違いだった。そうとは知らずに喜ぶトゥムだったが……。(All cinemaより引用)

『エルマリアッチ』を思い出すような、低予算かつ自主制作の臭いがする映画だが、よくできたサスペンスだった。

ドアの前のショットがこれほど印象的な映画はなかなかない。奇抜なアイディアと現実感のない、現実と幻想・妄想が入り混じるシーンが、何が本当なのか観客を惑わす。

漫画のような展開で次々と死体の山が築かれる。明るい物語でないが妙に笑えるのが、タイ人の「マイペンライ」なノリなのだろうか。タイ王国が好きな筆者としては非常に楽しめる映画であった。


タランティーノ的なユーモアと爽快なタッチ、入り組む複数の人物とエピソード。

タイの文化を取り入れつつヒッチコックやデ・パルマ、タランティーノ的な映画に挑戦したことは評価できる。カギや足、電話など、極端なズームアップのショットはなかなか。黒電話のベルが鳴り、リボルバーを口に入れるシーンなんかは一級だ。

この作品全体の空気観なんかはいいのだが、しかしやはり脚本があまりにも漫画すぎるというか現実感なさすぎて、登場人物もアホすぎる。ギャグのようなレベルなのだが人が死にすぎるし、なーんかどっぷりこの世界にはまる事はできないサスペンスだったか。

といっても印象的な場面も多く、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督の才気を十分に感じる傑作であることは疑いようが無い。最後のこの一文の挿入なんかはセンスを感じた。

“神様が贈り物をくださる時は、同時にムチもお与えになるものだ” 
――トルーマン・カポーティー(小説家)

※参考 インタビュー@『ヘッドショット』東京国際映画祭
http://2011.tiff-jp.net/news/ja/?p=4597

kojiroh

『クローバーフィールド』(2008年、アメリカ)―6.5点。怪獣パニックPOV映画という新領域


『クローバーフィールド』(2008年、アメリカ)―85min
監督:マット・リーヴス
脚本:ドリュー・ゴダード
出演者:マイケル・スタール=デヴィッド、マイク・ヴォーゲル、オデット・ユーストマン、リジー・キャプラン、ジェシカ・ルーカス、T・J・ミラー etc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆/ 6.5点

ハリウッド映画ながら比較的少ない予算と、POVによるフェイクドキュメンタリーの形式で作られてヒットを記録した新鋭的娯楽映画の大作。クソ映画としても評判のいい一作を筆者はレンタルにて鑑賞。

所感、ずばりゴジラ系怪獣映画×宇宙戦争系パニック映画×『ブレアウィッチ』系POV映画。こう言えば分かりやすいかもしれない。


◎あらすじ
ニューヨーク、マンハッタン。ある夜、仕事で管理職への就任が決まり日本へ栄転となったロブを祝うため、アパートの一室で送別パーティーが開かれていた。ところがそのさなか、外で突然爆音が響き渡る。ロブたちが屋上へ出てみると、街の一部で爆発炎上している凄惨な光景が広がっていた。さらに、間もなくその惨禍は彼らにも及び、一瞬にして街一帯がパニック状態となる。そして、人々はこの事態を引き起こした元凶でおよそ地球上には存在し得ない巨大な怪物を目の当たりにするのだった…。(All cinemaより引用)

退屈な冒頭のごちゃごちゃと、突如として襲い来るパニックには、『宇宙戦争』を彷彿させる。なんでこの事件にこの主人公たちを選んだのか、なかなか微妙な登場人物たち。ぐだぐだになる人間関係がなんか笑えるようで、このような大スペクタクルにしてはしょぼい主役だとも……。


しかし自由の女神の首が振り落とされるシーンや、怪獣が暴れ周り、ブルックリン橋が落ちるシーンなど、なかなか大迫力でアイディアも面白い。ニューヨークがここまで盛大に破壊されるとは。

どこかであったような設定、逃げ惑う人々のパニック感などはどこかで見たような既視感を覚えるが、だがそれをこの手法で、さらには怪獣映画のように仕上げた点は、B級であるが非常に新鮮で楽しめた。

結局、「あれ」がなんであったか分からずにストーリーは終わる。後味は悪く、「その後、一体どうなったの?笑」と突っ込みたくなってしょうがない。政府の陰謀? 超常現象? それっぽいフラグを立てておきながら観客を放置プレー。そんなダメ映画なんだがそのクソ路線をPOVという方法で革新的に描いたことは、本作が観るに値する映画である大きな要因だ。


最後の自画撮りのところまで、そっくりそのままブレアウィッチの手法で、パロディ的にも思えるが、この大スペクタクルを舞台にPOV映画にしたことはマニアにはたまらない一作であろう。

kojiroh

『NANA』(2005年、日本)―6.5点。豪華キャストによる雰囲気見事なコミック映画


『NANA』(2005年、日本)―114min
監督:大谷健太郎
脚本:大谷健太郎、浅野妙子
出演者:中島美嘉、宮崎あおい、 松田龍平、成宮寛貴、平岡祐太、丸山智己、松山ケンイチ、玉山鉄二、サエコ、伊藤由奈  etc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆/ 6.5点

社会現象を巻きおこす話題となった人気漫画NANAの映画。ちょっと昔ながら、レンタル屋でビデオを探していたらなんか目に付いたので、今さらながら鑑賞してみることに。

中島美嘉と宮崎あおいが主演し、中島美嘉が歌った主題歌『GLAMOROUS SKY』は原作者の矢沢あいが作詞、L’Arc〜en〜Cielのhydeがメンバー初の楽曲提供による作曲・プロデュースが話題になり、大ヒットを記録したこともあり、一度は見て追うこと、この手の映画は筆者の趣味ではないが、意外と面白かった。


◎あらすじ
小松奈々は、彼氏と一緒にいたいがために東京へやってきた。大崎ナナは、歌で成功したい夢を抱えて東京へやってきた。新幹線の隣同士に座った2人の「ナナ」は、偶然、引越し先の部屋で鉢合わせし、一緒に暮らすことになる。趣味も性格も正反対の2人の共同生活が始まった。ナナは新しいバンドメンバーを加え、昔の仲間とバンド活動を再開する……。(Goo映画より引用)

筆者は原作を読んだことがないので、先入観なしで楽しめた。
なんとなくだが原作の雰囲気は知っているので、それを考えるとこの映像化はキャラとキャストの吊り合いであったり、美術の雰囲気であったり、世界観はなかなか忠実にできていて完成度が高い気がした。


中島美嘉のロックな化粧とルックスでタバコをふかしつつ、電車の中で二人のナナが出会うシーンなどはその凸凹っぷりもさることながら、印象に残っているシーンだ。ライブであったり、音楽の道を歩む大崎ナナの姿はやはりカッコイイ。


真っ白な白塗りの家にロックなにーちゃんねーちゃんが集まる家のシーンもクールだと思った。純粋な若者の青春映画としても面白いし、なにより登場人物の多様さ、そのキャストの豪華さは、今ではもはや実現不可能だと思えるほど。

松田龍平、松山ケンイチ、成宮、玉山、さらにサエコまで出ているとは驚き。今となってはかもしれないが、出演者がみんな当たりすぎ。そして主題歌までラルクのHydeとか、奇跡的なメンツで作られた秀逸なコミック映画であることは疑いようが無い。

脚本的にはやはり完結的な物語ではなく、シリーズモノを連想させるないようなんで、エンディングには少し微妙なところがあり、テレビドラマ的ではある。が、この世界観と豪華出演陣、Hydeの名曲を拝むだけでも見る価値は十分にある一本であろう。

kojiroh

『処刑人2 』(2009年、アメリカ)―6.0点。帰ってきた愛すべき馬鹿映画


『処刑人2 』(2009年、アメリカ)―117min
監督:トロイ・ダフィー
脚本:トロイ・ダフィー
出演者:ショーン・パトリック・フラナリー、ノーマン・リーダス、クリフトン・コリンズ・Jr 、ジュリー・ベンツ、ジャド・ネルソン、ボブ・マーリー etc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆☆/ 6.0点

口コミで話題をよんだカルト作『処刑人』から10年、待望の続編『処刑人2』!
劇場で見に行こうかとも当時は悩んだが、結局のところレンタルで借りて夜な夜な鑑賞するというオチにはなったが、あれから10年後をどう描くか楽しみにしていざ処刑人ワールドへ。


◎あらすじ
コナーとマーフィーのマクマナス兄弟とその父ノアの3人が、イタリアン・マフィアのボス、ジョー・ヤカベッタを処刑してから8年。逃亡先のアイルランドでひっそりと暮らしていた彼らのもとに、兄弟のよく知るボストンの神父が殺害されたとの報せが入る。それは、何者かによる兄弟への挑発的なメッセージだった。さっそくボストンへと向かった兄弟。実は、彼らをおびき寄せたのは、ボストンでの勢力を回復させたヤカベッタ・ファミリーのボスにして、かつて兄弟が処刑したジョー・ヤカベッタの息子コンセイシオだったのだが…。(Allcinemaより引用)

オープニングから処刑人復活するべく、ヒゲをそり落として戦闘モードに入る兄弟。このベタで馬鹿っぽいノリがB級でいいです。新キャラのクリフトン・コリンズ・Jrも交えて悪人をやっつける戦闘シーンも前作よりもなんかユーモラスに。

聖書を読んで硬貨を落とす。
ボストンではすっかり英雄になった「セイント」は警察内部でも指示されていて、とにかくやりたい放題。前作と同じく、特に深く何かをいうネタもない類の馬鹿映画ではあるが、しかし前作とほぼ同じようなノリで、このバカで楽しそうな雰囲気を再現したところは、やはり愛せる映画である。(冗長でよくできた映画とは言えないと思うが)

とりあえず前作のデフォーと同様の存在感で、ジュリーベンツがFBIの捜査官役でいい味を出している。

「やっぱり彼等よ!」
キレのいい英語で現場検証して処刑人の殺人事件を再現してゆくシーンなんかは、「なんでそこまでわかるの?w」と突っ込みたくなるが、なかなか笑える。

つっても前作の方が世界観が新鮮だったこともあるので、やはりデキはいいかなと思えてしまう。なんとも微妙な続編であったが、また「3」が出たら今度は劇場に見に行ってあげたくなる不思議と可愛らしく思える映画なのであった。

kojiroh

『サイドウェイ』(2004年、アメリカ)―6.0点。シュールな凸凹コンビのロードムービー


『サイドウェイ』(2004年、アメリカ)―130min
監督:アレクサンダー・ペイン
脚本:アレクサンダー・ペイン、ジム・テイラー
原作:レックス・ピケット
出演者:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ヴァージニア・マドセン、サンドラ・オー etc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆☆ / 6.0点

アカデミー賞の脚本賞を受賞したアレクサンダーペイン監督作品。
アメリカでよくありそうな、結婚を控えた男が最後のバカンスを楽しむというベタな内容を、小説家志望の内気な相方と共に描いた、ハートフルというかジュールというか、とにかく笑えるロードムービー。

あらすじは、
教師をしているマイルスはバツイチで小説家志望。ワイン通のマイルスは親友のジャックの結婚前、二人でカリフォルニア州サンタバーバラ郡のワイナリー巡りに出かけて、独身最後のひと時を極上のワインとゴルフで楽しもうとする。しかしジャックは女をひっかけることしか頭になく、現地で2人の女性と交友を深めることになるのだが…。

ワイン、女、そして人生を探す旅。いかにもTHE アメリカ。小説家志望の内気な中年とプレイボーイのしがない俳優。水と油のようなコンビっぷりであるが、頓珍漢なことを旅中に重ねてゆく姿には引き込まれると思わずニヤリ。米国チックな出会いと笑いが散りばめられて楽しめる。


旅によって内気なマイルスと遊び人のジャックは出会いに動かされて次第に今までの自分から変わってゆく――というベタな物語でもなんでもなく、本作ではただひたすら現状の悪習慣が変わらずにくすぶってゆく中年2人のダメな姿を面白おかしく描く。そこがダメダメだがシュールなのだ。

マイルスのキャラの内気なじれったさにはイライラしてくるほど。小説家を目指している人間の人生なんてこんなものかと、脚本を書いたペイン監督本人が皮肉っているようにも思える。

本作はそれなりに共感できて引き込まれる部分はあったのだが、

しかし、サンドラ・オーがどう観てもコリア顔で配役に違和感あり、途中、気になってしょうがなかった…。これは監督の奥さんになった背景が影響しているのか。なにやらこのキャスティングが個人的にミスキャストで、世界観に違和感をもたらしているとしか思えない。逆の意味でジャックが彼女に対して「ゴージャス」
と言ってるシーンが笑えてしまったのだが――。

ともかく、監督自身の人生と私情をダイレクトに反映しているのではないかと疑える一風変わった癖のあるロードムービーであった。

kojiroh

『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』(2011年、アメリカ)―6.0点。次なる舞台はタイランド!


『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』(2011年、アメリカ)―102min
監督:トッド・フィリップス
脚本:スコット・アームストロング、トッド・フィリップス、クレイグ・メイジン
音楽:クリストフ・ベック
出演:ブラッドレイ・クーパー、、エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキス、ジャスティン・バーサ、ケン・チョン、ジェフリー・タンバー、ジェイミー・チャンetc

【点数】 ★★★★★★☆☆☆☆/ 6.0点

空前の大ヒットをかましたあの名作が2年の歳月を経て帰って来た!

無名の俳優によって作られたが口コミで大ヒットを飛ばした『ハングオーバー』の続編。今度は東南アジアのタイランドであの名トリオがハングオーバーを巻き起こす!

さてあらすじ。
ラスベガスでの騒動から2年後、フィル(ブラッドレイ・クーパー)、スチュ(エド・ヘルムズ)、アラン(ザック・ガリフィアナキス)、ダグ(ジャスティン・バーサ)はスチュとローレン(ジェイミー・チャン)の結婚式のためにタイを訪れた。トラブルメイカーのアランを渋々ながら同行させ、ローレンの弟のテディ(メイソン・リー)も合流し、前回の反省を踏まえてビール1本だけの乾杯をした。しかし翌朝、一行は見知らぬホテルの一室で目を覚ます…。

まあ前回を見ている人としてはあまりにも同じ展開で、冒頭からフラグ立ちまくり。
案の定、B級な展開でまたしてもハングオーバーで、切断された指、顔のタトゥー、坊主になったアラン、謎のモンキー。


御馴染みのメンツが御馴染みのノリで愉しませてくれる。

がしかし、前作とはちょっと違った新展開を期待したが、前回の中国人チャウ、さらにはマイク・タイソンまで再登場したりと、無理やり前作とテイストを合わせて来た強引さが劣化コピーの匂いを漂わせている。なんというか、前作のファンへのサービスは旺盛なのだがね…。

さらにバカっぷりが以前ほど突き抜けていなく、今回も謎が隠されているのだが、それがドラッグや暴力的な黒社会との関連性が強くなっていて、なんだかバカみたいな陽気さであまり笑えない。

まあ仏教社会&ニューハーフ大国のタイランドで行方不明のテディを探して奔走する姿は面白おかしいのだが、どうも前作よりも真面目すぎるというが、はちゃめちゃな馬鹿さが足りないかなという不完全燃焼感が否めない。

がしかし前作の空気をそっくりそのまま引き継いている上に、3人組の名トリオっぷりは相変わらず冴えている。

さらに個人的にタイランド愛好家の筆者としては、ソイカウボーイのゴーゴーバー街やチャオプラヤ川が舞台として登場しているので、舞台設定の意味では非常に楽しめる一作であった。

やはり行ったことガある自分が好きな国が舞台になっていると、ちょっとダメな映画でも不思議と愛着がわいてくるものだ。

kojiroh