『アウトレイジ 最終章』(2017年、日本)――75点。3番目に好きなアウトレイジ最新&最終章


『アウトレイジ 最終章』(2017年、日本)――104min
監督:北野武
脚本:北野武
音楽 鈴木慶一
出演:ビートたけし、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、大杉漣、松重豊、白竜、光石研、原田泰造、中村育二、津田寛治、池内博之、塩見三省、岸部一徳・・・Etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

久々に日本の映画館へ行きました。
世界の北野の新作を見るために…。

◎あらすじ
山王会と花菱会の一大抗争が終結し、大友は日韓に強大な影響力を持つフィクサー張会長を頼り、韓国へと渡る。ある時、花菱会の幹部・花田が滞在中の韓国でトラブルを起こし、張会長の手下を殺して日本へと逃げ帰ってしまう。これが引き金となり、張会長率いる張グループと内紛を抱えた花菱会が一触即発状態に。そんな中、いくつもの怒りを抱えた大友は手下の市川を伴い、日本へと舞い戻ってくるのだったが…。
<allcinema>

感想は、なんていうか、アウトレイジシリーズの中で、3番目に好きな作品でした。

つまり、ゴットファーザー3のような感想です。

ただ、うまく韓国と日本との関係を描けていて、特に最初の20分、JEJU島が登場する場面は思わずニヤリとしました。

北野映画に、ハングルが飛び交う町並みが。いい雰囲気で、ソナチネのような雰囲気もいい。沖縄どまりだった北野武がとうとうJEJU島まで国際化している点が。

俳優が第二の人生であるという、リアル経営者である金田の、貫禄ある雰囲気。とにかく全員、貫禄あり、ピエール瀧など新キャラクターも迫力あります。

 

今度は花菱の内乱みたいな話になり、前作で迫力ある演技を見せた塩見さんですが、今回は神経質な役になり、やつれた印象。

全員、なんだかんだ年とったなあという残念感が少しありました。5年の歳月ですから。

てか、やっぱまたこのオチなの?というガッカリ感があり、とにかく退廃的で、シリーズの勢いを含めて、出演者の年齢やしわの深さも含め、どんどん衰退してるなという感想です。

やっぱり、もうちょっと若い人らが活躍してくれないと、ちょっと2012年に比べて、若さが足りなすぎて、竜三と7人のコブンみたいな雰囲気が否めない。

新井や桐谷とかみたいなキャラが必要だったかなと。

今作の原田泰三の役どころも謎過ぎたし、突っ込みどころは多い。

ただ、大杉連の元証券マンの役どころは非常によかったと思います。北野組常連なので、貫禄を感じました。終わりの死に方も非常になんか、イメージするだけで痛くて怖い。

全体的に、国際化してるヤクザ経済の面が描かれてて、世界の北野の現代に対する風刺みたいな表現も感じて、決して悪くはありません。

罵倒の名台詞もあります。絵的に冴えてる表現も。

「ただの素人やないか!」

あと、「200万でどうだ?」「おまえそれウォンじゃねえだろうな、円で用意しろ」みたいなやり取りも印象的で、罵倒の中にユーモアも感じる一面もあり、よかったです。

なので、シリーズ3番目に好きな一作ということで。

Kojiroh

『この世界の片隅に』(2016年、日本)――75点、火垂るの墓以来の傑作戦争アニメ映画


『この世界の片隅に』(2016年、日本)――128min
監督:片渕須直
脚本:片渕須直
原作:こうの史代『この世界の片隅に』
主題歌 コトリンゴ「みぎてのうた」
出演:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔・・・

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

同名コミックの映画化で、ミニシアター系にして異例のヒットをして、各方面で絶賛される、噂の戦争映画。第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞。

公開後は口コミが広まり、15週連続で興行ランキングのトップ10入り。第90回キネマ旬報トップテンで「となりのトトロ」以来となるアニメーション作品での1位を獲得するなど高く評価された。

能年玲奈から改名したのんが主人公すず役でアニメ映画の声優に初挑戦した。

◎あらすじ
第2次世界大戦下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前向きに生きようとするヒロインと、彼女を取り巻く人々の日常を生き生きと描く。昭和19年、故郷の広島市江波から20キロ離れた呉に18歳で嫁いできた女性すずは、戦争によって様々なものが欠乏する中で、家族の毎日の食卓を作るために工夫を凝らしていた。しかし戦争が進むにつれ、日本海軍の拠点である呉は空襲の標的となり、すずの身近なものも次々と失われていく。それでもお、前を向いて日々の暮らしを営み続けるすずだったが……。

<映画.com>

さて、非常に感情輸入できた。

実はわたし、広島出身なので、ローカルな土地勘が非常にわかる。呉もよく知っている。そのため、何やら故郷がえらく全国展開しており、楽しめました。

評判になるだけのことはあるクオリティで、穏やかな主人公の戦時中の生活が垣間見れて、ディティールが細かく、保存食の作り方や、闇マーケットでの食料の調達など、戦時中はこういう世界だったのかと、興味深かったです。

ある種、ドキュメンタリー風でもあり、こうした戦争ドラマが全国ヒットすることが驚き。君の名はもそうだが、独特なキャラクターのかわいさがあるからか、家族でも見れるアニメになってますね。

映画としてよくできており、火垂るの墓以来に面白い戦争映画かもしれません。

 

それにしても、戦争体験のシェア、そして反省、平和教育として本作のような映画を見ることは重要だと思うが、何よりなんでこんなバカな勝てもしない戦争をしてしまったのだろうかと、そうした戦争の大きな意思決定の失敗による、日本人の気質さえ感じてしまう。

現代では経済戦争で、シャープや東芝が大失敗しており、海外へ進出して投資を失敗して本体が解体されるなど、まさに二次大戦のような大失敗をする名門大企業も出てきており、そうした事件と先の戦争がだぶって見えてしまった。

焦土作戦が塩漬けのようなもので、最後の新型爆弾はロスカット執行のような事件に思えた。

結局は、こうした穏やかな庶民が一番最後には敗戦のケツぬぐいをすることになる。

この世界の片隅には、そうした大失敗と損失を、ぼーっとしてるが穏やかな人々が暖かく包んでくれるような存在に安らぎを感じ、なんだか優しい気分になれるが、こういう庶民を傷つけないために、権力者や責任ある人々は安易な意思決定でリスクを軽視してはいけないと、大きな教訓にもなりえる映画だと思いました。

 

kojiroh

『聖の青春』(2016年、日本)――75点。伝説の棋士の映画


『聖の青春』(2016年、日本)――128min
監督:森義隆
脚本:向井康介
原作:大崎善生
出演:松山ケンイチ、東出昌大、リリー・フランキー、竹下景子、染谷将太、安田顕、柄本時生、北見敏之、筒井道隆・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

飛行機の中で映画を探していたら、新作ラインナップに何気にあったので、鑑賞してみた。

実話の若く死んだ将棋棋士の物語ーー難病と闘いながら将棋に人生を賭け、29歳の若さで亡くなった棋士・村山聖(さとし)の生涯を描いたノンフィクション小説を、松山ケンイチ主演、監督は「宇宙兄弟」の森義隆、脚本を「リンダ リンダ リンダ」の向井康介。

◎あらすじ
幼い頃から腎臓の難病・腎ネフローゼを患い、入退院を繰り返した村山聖は、入院中に何気なく父から勧められた将棋に心を奪われる。師匠との出会い、そしてプロ棋士として羽生善治ら同世代のライバル棋士たちと死闘を繰り広げ、まさに命を削りながら将棋を指した村山聖の壮絶な一生が描かれる。羽生善治とは「東の羽生、西の村山」と並び称された村山。

<映画.com>

ほとんど前知識なしで見たのだが、主人公の型破りな人生と、それを埋める脇の俳優陣の層の厚さにも惹かれて、かなり面白く鑑賞できた。

リリーフランキーや染谷、安田ケンなど、日本映画を代表する顔ぶれが脇を固める。

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脇役がどれも秀逸で、映画としては非常によくできていると思いました。

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汚部屋での将棋と漫画とジャンクフードの生活。これが彼の求めた青春だったとは・・・何かを突き詰める人間の集中力、強い意志というものを実にユニークに、かつ現実的に表現できていたと感じた。

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将棋のことはよくわからない筆者ですが、羽生との対戦シーンの緊張感は舌を巻く迫力。何か将棋の神が降りているような、すごいものがあった。

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映画としての完成度だけでなく、村山という人物の人生を見るだけでも十分価値がある一本であり、かつ日本映画の顔が多数出演しているので、将棋と映画が好きな人なら必見かと思います。

将棋棋士なんて虚業のようなものかと思っていたが、食うか食われるかの厳しい世界なのだと感じられる。

尚、わたしは主人公が増量した松山ケンイチだということに気付かず、エンドロールでびっくりしました。それで+5点で、78点ってところですかね。将棋には今も今後も興味はありませんが、面白い世界だと勉強になりました。

以上、主演がだれかとか、前知識ない方が楽しめる一本かと思います。

kojiroh

『オアシス スーパーソニック』(2016年、イギリス)――75点。Oasisの歴史と未来への警告ドキュメンタリー


『オアシス スーパーソニック』(2016年、イギリス)――128min
監督:マット・ホワイトクロス
製作総指揮:リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー、アシフ・カパディア、ジュリアン・バード、ジョセフ・バリー・Jr.
出演:リアム・ギャラガー、ノエル・ギャラガー・・・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

2009年に解散したイギリスのロックバンド「オアシス」のドキュメンタリー。

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リアム&ノエル・ギャラガー兄弟への新たなインタビュー、バンドメンバーや関係者の証言、名曲の数々をとらえた貴重なライブ映像、膨大なアーカイブ資料・・・オアシスファンにはたまらないドキュメンタリー映画で話題を呼んでいて劇場に見に行きました。

◎あらすじ
1991年に兄ノエルが弟リアムのバンドに加入して「オアシス」が結成されてから、2日間で25万人を動員した96年の英ネブワースでの公演までの軌跡を追った。ギャラガー兄弟と、「AMY エイミー」でアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞したアシフ・カパディアが製作総指揮に名を連ね、「グアンタナモ、僕達が見た真実」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したマット・ホワイトクロスが監督を務めた。
<映画.com>

すごいスピード展開でオアシスのスーパーソニックのようなデビューの軌跡をたどってくれて、興奮しました。

野暮でワイルドな口調のリアムのインタビューと、言葉は汚いが知的な側面をも見せるノエルの、対照的な兄弟のインタビューを交えて繰り広げられる音楽ストーリーにはファンではなくても音楽好きなら楽しめるでしょう。

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ともかく、この仲が悪くて、育ちが悪い、労働者階級層の公団に住んでためちゃくちゃな兄弟が一緒になって3年以上下積みして、一気に爆発したんだろうなと、オアシスがなぜ最速でデビューできたのか十分納得できる映画になっていた。

ノエルは猫型、リアムは犬のように一人ではいられずと、ノエル自身が語っていたシーンがこの兄弟の特徴を最も表してるなと、ノエルの知的なインタビューにはたびたび関心。ソングライティングだけではない、彼こそキーマン。みんな重要ではあるが。

個人的には成功ストーリーで終わってしまったが、その後の解散の話までストーリーを伸ばしてほしかった。

今後もおそらく再結成はなさそうだが、
ノエルの最後の方の、
「自分たちがインターネット登場後の最後の世代で、それゆえ公共団地出身のバンドマンになれた、今後、そういう労働者階層から自分たちのようなバンドがでないだろう」

と、危機感を持った警告をかましており、
ノエルはインターネットによって誰でも評価される時代なんかなく、逆に格差が広がっているとも言いたそうな口ぶりであり、インターネット全盛期の音楽シーンを否定的に語っている部分が最も本作のメッセージだった。

それを伝えるために、彼らはこの映画を作ったのだろうと感じる。

ともかく、ロック音楽好きな人は間違いなく楽しめる映画です。

PS Live foreverが、本作で素晴らしさが一番伝わってきたナンバー。

kojiroh

『後妻業の女』(2016年、日本)――70点。高齢化社会コメディなサスペンス映画。


『後妻業の女』(2016年、日本)――128min
監督:鶴橋康夫
脚本:鶴橋康夫
出演者:大竹しのぶ、豊川悦司、尾野真千子、長谷川京子、水川あさみ・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

※リアルタイム映画評

黒川博行の「後妻業」を、大竹しのぶと豊川悦司の共演で映画化。「愛の流刑地」「源氏物語 千年の謎」の鶴橋康夫が監督、小夜子役を大竹、柏木役を豊川が演じ、尾野真千子、長谷川京子、永瀬正敏らが共演。

映画館での予告編でよく見て、インパクトがあったので、気になって飛行機の中で視聴してみました。

意外とコメディとしてもリアル高齢化社会ドラマとしても見ごたえあり。

◎あらすじ
結婚相談所主催のパーティで知り合い、結婚した小夜子と耕造。2年後に耕造は死去するが、娘の朋美と尚子は、小夜子が全財産を受け継ぐという遺言証明書を突きつけられる。小夜子は、裕福な独身男性の後妻となり、財産を奪う「後妻業の女」で、その背後には結婚相談所所長の柏木の存在があった。一方、父親が殺害されたと考える朋美は、裏社会の探偵・本多を雇い、小夜子と柏木を追いつめていく。

<映画.comより>

ずばり、見ごたえあるコメディタッチのサスペンス映画。

こちらも、現代の高齢化社会の中で必要悪のような存在を実写かしており、映画のデキというより、このビジネスについての描写が見れてことが面白かったです。

後妻業ビジネスのディティールを、被害者、探偵、そして3つの巴のような構造で、大阪を舞台に展開されて、一見の価値は間違いなくある現代チックな映画です。

主演の大竹しのぶもいいですが、トヨエツです。なんと言っても、関西弁をしゃべるトヨエツに痺れる。
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今、トヨエツはこんな渋い演技をするんだと、素直に楽しめました。カネのやりとりや質屋、北新地での夜遊びなど、ディティールが非常に楽しめるビジネス映画でもある。

つるべいのサオ師の役柄や、脇役も冴えており、
「日本中が札束にもうとった・・・」の堅気じゃないかたり口など、
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かつ大阪文化前面に押し出しているので、関東圏の身としては大阪ノリが楽しめてよかったなあと。

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ただ一度みたらもうお腹一杯で、映画としてはなかなかサスペンスタッチで盛り上がる部分もありましたが、イマイチ展開が微妙だなと。

このテーマと貫禄ある演技人の活躍は一見の価値ありなので、後妻業ビジネスに興味ある方は必見です。

kojiroh

『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(2016年、アメリカ)――75点、20年ぶりのクソ映画超大作


『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(2016年、アメリカ)――120min
監督:ローランド・エメリッヒ
脚本:ニコラス・ライト、ジェームズ・A・ウッズ(英語版)、ディーン・デヴリン、ローランド・エメリッヒ、ジェームズ・ヴァンダービルト
原案:ディーン・デヴリン、ローランド・エメリッヒ、ニコラス・ライト、ジェームズ・A・ウッズ
出演者:リアム・ヘムズワース、ジェフ・ゴールドブラム、ジェシー・T・ユーシャー(英語版)、ビル・プルマン、マイカ・モンロー、セーラ・ウォード、ウィリアム・フィクナージャド・ハーシュ、ブレント・スパイナー、ヴィヴィカ・A・フォックス、 シャルロット・ゲンズブール、アンジェラベイビー・・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

この日のために、20年待ってました!!

ウィルスミス出世作の、1996年に製作・公開され、世界中で大ヒットしたSFパニック超大作「インデペンデンス・デイ」の20年ぶりの続編。制作費1.60億ドルの今年最高傑作&大作のSFスペクタクル映画がやってきた。

監督は、前作と同じく巨匠ローランド・エメリッヒ。

戦闘機パイロットの主人公ジェイク役を「ハンガー・ゲーム」シリーズのリアム・ヘムズワースが演じ、ビル・プルマン、ジェフ・ゴールドブラムら前作から続投。

このたび、クソ映画人友達と一緒に、劇場に見に行きました。

○あらすじ
エイリアンの侵略を生き延びた人類は、共通の敵を前にひとつにまとまり、回収したエイリアンの技術を利用して防衛システムを構築。エイリアンの再来に備えていた。しかし、再び地球を目標に襲来したエイリアンの兵力は想像を絶するものへと進化しており、人類は為す術もなく、再度の絶滅の危機を迎える。
<映画COMより引用>

相変わらずクソ映画ノリが連続して、大いに笑いました。ベタベタな敵対関係の仲間と、奇跡的に一緒に生き延びて、偶然的すぎるストーリー展開で人類の未来が開かれてゆく過程は突っ込みどころ満載で楽しかったです。

キャストも豪華。 シャルロット・ゲンズブールが登場しててびっくり。こんなハリウッド商業大作に出演するんだなと。

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QQでの通話、中国の牛乳、最高責任者、そしてヒロイン、アンジェラベイビーと、中国資本の飛躍にも本当にびっくりした。中国が大手スポンサー? いまやヒロインは中国系っていう時代なんだなと。超美人なので文句なしですが。

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しかし、前作より巨大な敵の出現により、世界がめちゃくちゃになるシーンの迫力には驚かされました。これぞ、映画館でみる映画です。そして中国人観光客の表情もシリアスで笑えました。

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ネタバレになりますが、96年のインディペンデンスデイは本当に大傑作クソ映画で、テレビ放映で見て、盛大に笑わせていただいた一作。特にラストに大統領が演説と共に自ら出動するシーンは爆笑しました。

今回も、同じく爆笑必須なシーンが満載で、ローランドエメリヒッヒ監督のクソ映画は本当に外すところが無くて安定感ある。

とにかく、前大統領もばっちり登場し、中国資本の進出なども映画に描かれており、非常に現代を象徴する描写も多く、大変楽しく鑑賞できました。

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大統領が「女」という設定があり、そのオチも、ある種、未来を予言しているような内容もある、政治色も匂わせる、非常に興味深い一作。

クソ映画としては堂々の95点作品です。

次回作も控えているそうなので、クソ映画ですが、また劇場に足を運ぼうと思います。

kojiroh

『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(2016年、アメリカ)――75点。新しい形の戦争ドキュメンタリー


監督:マイケル・ムーア
製作:マイケル・ムーア、ティア・レッシン、カール・ディール
製作総指揮マーク・シャピロ
出演:マイケル・ムーア・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

今年はドキュメンタリー映画が秀逸。今年公開のドキュメンタリーで注目の一作、「ボウリング・フォー・コロンバイン」や「華氏911」のマイケル・ムーアによる「世界侵略」をテーマにしたドキュメンタリー作品。

軍事戦争ではなく、アイディアを奪いに行く形の”戦争”とは・・・。

◎あらすじ
度重なる侵略戦争が良い結果にならなかったというアメリカ国防総省幹部からの切実な悩みを持ちかけられたムーア。そこでムーアは、自身が国防省に代わり、「侵略者」となって、世界各国から「あるモノ」を略奪するために出撃することを提案。ムーアは空母ロナルド・レーガンに搭乗し、ヨーロッパを目指すが……。
<映画.comより>

うーん、ずばり、本作は優れたグローバル社会のドキュメンタリーであり、多様な国の社会実験的なかたちで成り立ったライフスタイルを記録している。

映画というより、情報番組的な面白さだ。

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相変わらず巨体、なんでこんな太ってんだといつも突っ込みたくなる。だが貫禄が出ているなあと。

さてアメリカ高額医療を批判した『シッコ』にも通じるが、あれと違うのは、本作はほぼ単独でムーアが世界へ出ていること。

被害者とストーリーを進めていったシッコとは、また少し意味が違う。

が、本作が提供する情報は実にユニークで、世界は広いのだなと、広い視野を持てる、自国の閉鎖性や問題点に悩んでいる人が見たら、非常にすっきりし、それこそ多くの発見がある映画であろう。
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それにしてもオーガニックで昼にフランス料理とか長期休暇豊富なイタリアとか、土日勤務厳禁なドイツとか、自然主義的な生き方ができているんだと、多様化とグローバリゼーションで潤って成長してきたアメリカが筆頭とした多国籍企業に批判的な構図にも思える。

コカコーラを休職のときに飲んでいるムーアの姿がなんだかブラックジョークに感じた。

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イタリアで昼になると一斉に帰宅し、家族と食事をする光景なんかも、同じ先進国でも仕事と人生の関わり方がこんなに違うのかと興味深い一本だった。言語上では知っている内容でも、映像化してみてみるとまた違う発見がある。

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しかし、非常識でガラパゴスだといわれるアメリカであるが、未だに世界の中心を担う存在であり、それは欧州とは違った形での長時間労働を従事している人が多いからなのかもしれないとも。

そしてムーア監督のように、自国のダメなところを拾い上げて改善する意識を持って世界に映画として発信できるメディアの役割を担える人物がいる時点、やはりアメリカは日本のような閉鎖的な国よりも全然常識的で素晴らしい国だなと比較してしまった。

ともかく、世界を股に駆けてアイディアを奪いに行く行動を、戦争や侵略とたとえてコミカルに独自の視点で映画を進める、そのアイディアこそ本作のベース。

だが結局、そのアイディアの根源は、もうすでにある、「幸せの青い鳥」のようなものだった。旅人が最後にいたる結論のような内容。

多くの情報、様々な社会実験で多様な社会が構成されているが、根底にあるものは、既に過去にあったものだった、的な。

正直、テレビドキュメンタリーでいいじゃん、と思える内容ではあるが、これを劇場映画にできる業こそ、ムーアなのだなと思わされた。

ともかく、多様化、グローバリゼーション、そうしたものを振り返って原点回帰して、新しい時代の材料(アイディア)を探そうと言う、この2016年、EU離脱や大統領選などで、時代の転換期にありそうな時期に、必要とされる映画だなと感じた。

kojiroh

『アイアムアヒーロー』(2015年、日本)――75点、ゾキュン映画初体験


監督:佐藤信介
脚本:野木亜紀子
原作:花沢健吾 『アイアムアヒーロー』
出演:大泉洋、有村架純、長澤まさみ、吉沢悠、岡田義徳、片瀬那奈、片桐仁、マキタスポーツ、塚地武雅、風間トオル、徳井優・・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

花沢健吾の大ヒット・ゾンビ漫画の映画化。

国際映画祭でも観客賞を受賞、大泉洋、有村架純、長澤まさみの豪華キャストによるゾンビパニック・アクション大作。監督は「GANTZ」「図書館戦争」シリーズの佐藤信介。

クソ映画人の推奨を受けて劇場へ足を運び鑑賞。

なかなか笑えて手に汗握れる秀逸なゾンビ映画で驚いた。

◎あらすじ
漫画家アシスタントとして最低な日々を送る35歳の鈴木英雄。ある日、徹夜仕事から帰宅した英雄は、異形の姿に変貌した恋人に襲われかける。辛くも逃げ出した英雄は、同じように異形の者が人々を次々と襲い、襲われた人間もまた異形の者へと変貌していくさまを目の当たりにする。やがてそれは“ZQN(ゾキュン)”と呼ばれ、謎の感染パニックが日本中で起きていることが分かってくる。標高が高いところは感染しないという情報を頼りに富士山を目指した英雄は、その道中で女子高生の比呂美と出会い、ひょんな成り行きから一緒に行動を共にするのだったが…。
<allcinema>

平穏な冴えないオタク漫画家の日常が、一変してサバイバルアクションへ。

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日本のゾンビ映画でこんなに本格的なものが出てきたのかと、邦画のゾンビ映画史の歴史を作ったかもしれないと思った。(筆者は邦画ゾンビ映画初体験。)

それにしても本映画はゾンビ映画好きのつぼを全部押さえたようなデキ。

噛むと感染してゆき、すぐにゾンビ化して暴走する走るゾンビもいる雰囲気は、「28日後・・・」に近い。

そうだ、本作は28日後系列のゾンビだ。
猛烈な怒りウイルスのごとく変貌して飛び掛ってくる、走ることもできる、肉体によってはジャンプすることもできる、なかなか強いゾンビである。ゾキュンか。

ストーリーの流れとしても、28日後的かもしれない。
やはり、島国の国でゾンビ映画を作るとこういう風になるかと。

ただショッピングモールの変わりにアウトレットモールが登場する場面は、『ゾンビ』を思い出して興奮した。韓国ロケによる、日本映画としては異色なゾンビスペクタクルではないか。

80%以上は原作の力だとは思うが、高校生美女と出会った冴えない引きこもりの男が、ショットガンをぶっぱなすB級エンタメ映画としての完成度は驚くほど高い。

脇役も揃っていて、名俳優たちがこぞってゾンビ映画に出演したいと思って自発的に協力したのではないかと思えるデキ。豪華である。

塚地なんかが、あんな脇役ででるんだなと。
徳井優、あと岡田義徳も。脇役の冴え方もいい。

とにかく、ニートが飛躍できる時代が来たと興奮し、2chの掲示板を頼りに動いていく様はかなり完成度の高く現代風な和製ゾンビ映画になったと。

大泉洋も、こんな汚い映画の主演をはって、はまり役になっているとは、ゾンビ映画の並が本作から再ブームになるといいなと思った次第。2016-06-02_183301

本当に主人公のダメダメさがうっとおしくもなる映画であったが、ペキンパーのわらの犬のように暴力に目覚める優しい男の狂気があるような気がして、ショットガンを構える大泉洋は、近年のアクション邦画でのベストショットかもしれない。2016-06-02_183531

ただし、やはりもっと続きがほしい、オチがもう一つ欲しいなと思った次第でした。

ただこの脚力満載のゾンビなどの描き方なんかは、今までにない感じだなあと関心しました。ロレックスの時計で笑えるシーンもあれば、タクシーのカーアクションのようなパニック要素もあり、女子高生もいて、シリアスアクションもあり、盛り沢山で、ゾンビ映画好きには一見の勝ちあり。

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本家アメリカのゾンビ映画にはその意味では叶いませんけど、邦画ゾンビ映画では最高峰ではないかな。

続編を待望したい珍しい一本・・・次は劇場までは行かない気がしますが。

kojiroh

『オデッセイ』(2015年、アメリカ)―75点、前代未聞の火星サバイバル映画


『オデッセイ』(2015年、アメリカ)――141min
監督:リドリー・スコット
脚本:ドリュー・ゴダード
原作:アンディ・ウィアー『火星の人(英語版)』(ハヤカワ文庫SF)
出演者:マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ、マイケル・ペーニャ、ショーン・ビーン、ケイト・マーラ、セバスチャン・スタン、アクセル・ヘニー、キウェテル・イジョフォー

【点数】 ★★★★★★★☆☆/ 7.5点

※リアルタイム映画評

The martin――オデッセイ。

りドリースコット監督&マッドデイモン主演、製作費1億ドルの大作。そして興行収入は6億ドル近く世界中で大ヒットしている模様。アカデミー賞も7部門受賞と評価も高い。

そんなわけで、インターステラぶりの、SF超大作を劇場にて鑑賞。

◎あらすじ
人類3度目となる火星の有人探査計画“アレス3”は、いきなり猛烈な砂嵐に見舞われ、ミッション開始早々に中止を余儀なくされる。さらに、クルーの一人で植物学者の宇宙飛行士マーク・ワトニーが、撤収作業中に折れたアンテナの直撃を受けて吹き飛ばされ行方不明に。事故の状況から生存は絶望視される中、リーダーのメリッサ・ルイスは他のクルーを守るため、ワトニーの捜索を断念して急ぎ火星から脱出する。ミッションの行方を見守っていた地球でもNASAのサンダース長官が、ワトニーの悲しい死を全世界に発表する――。ところが、ワトニーは奇跡的に命を取り留めていた。しかし、通信手段は断たれた上、次のミッション“アレス4”が火星にやってくるのは4年後。残っている食料はどんなに切り詰めても絶望的に足りない。そんな状況にもかかわらず、決して希望を失うことなく、目の前の問題を一つひとつクリアしていくワトニーだったが…。

<allcinema>

宇宙系サバイバル映画の大スペクタクルとして話題のオデッセイ。2016-03-09_134341

地球の70億人が彼の帰りを待っているというキャッチコピーだけ分かっていれば予備知識として十分だと思います。予備知識が無いほうが、いかに前代未聞の火星サバイバルゲームを攻略するかが楽しめると思います。

マッドデイモンが主演のSF大作、ゼログラヴィティ的な匂いを感じていましたが、全然違いました、もっと科学的な映画です。火星描写は間違った部分があるらしいが。

原作がいいのでしょう、さまざまなアイディア&科学を駆使して生き延びる姿は新鮮で、驚きがありました。

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黒人というかインド系のキウェルキウェテル・イジョフォーの演技が個人的には冴えていると思いました。

国際的な映画で、インド人の活躍、そして中国系アメリカ人と、祖国中国での宇宙ビジネスの発展の様子も垣間見えて、今の時代がどんなものか感じられた。

世界の優秀な頭脳が彼の生還を見守る一連の流れは非常に面白かったです。クライマックスへの進み方も、やや長いけれども、商業的な娯楽映画としては完璧なフローだったなと。

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ジェシカジャスティンってThe 知的な西洋人って顔であり、インタステラに続き、宇宙が似合う女ですね。

それにしても、『ゼログラビティ』同様、映画館で見たから迫力ありました。

宇宙映画は、暗闇と無音の恐怖を体感しやすいので、映画館でみると評価があがるなと感じる昨今。レンタルだったら、70~75点の映画だったかなと思います。

kojiroh

『シン・シティ 復讐の女神』(2014年、アメリカ)―70点。遅すぎた続編、時間の残酷さを感じる傑作


『シン・シティ 復讐の女神』(2014年、アメリカ)―103min
監督:ロバート・ロドリゲス、フランク・ミラー
脚本:フランク・ミラー、ロバート・ロドリゲス、ウィリアム・モナハン
原作:フランク・ミラー『A Dame to Kill For』
出演:ミッキー・ローク、ジェシカ・アルバ、ジョシュ・ブローリン、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、ロザリオ・ドーソン、ブルース・ウィリス、エヴァ・グリーン、パワーズ・ブース、デニス・ヘイスバート、レイ・リオッタmジェイミー・キング、クリストファー・ロイド、ジェイミー・チャン、ジェレミー・ピヴェン、クリストファー・メローニ、ジュノー・テンプル・・・etc

【点数】 ★★★★★★★☆☆☆/ 7.0点

映画革命だ!と騒がれた、2005年のシンシティ。

Sin City: A Dame to Kill For

9年ぶりの続編、新作。一部キャストは変更あるが、フランクミラーとロドリゲス監督の共同作品。予算は80億円近くかけた、ジェシカアルバに続き、豪華キャストな作品であるが・・・なんと50億以上の赤字をたたき出した失敗作であり、バッシングも厳しい。

前作のファンなのだが、筆者は劇場へ行くのを忘れてたのでレンタルで鑑賞。

◎あらすじ
場末のストリップバー“ケイディ”で踊るダンサーのナンシー。愛する者を奪われた悲しみを胸に、復讐の炎を燃やしていた。ケイディの常連客で、心優しき野獣マーヴは、そんな彼女をそっと見守り続けていた。一方、しがない私立探偵のドワイトは、自分を裏切った元恋人エヴァの魅力に抗えず、罠と気づきながらも彼女の計画に加担してしまう。そんな中、街を我が物顔で牛耳るナンシーの仇、ロアーク上院議員は、大胆不敵な流れ者のギャンブラー、ジョニーとの大勝負に興じていたが…。
<allcinema>

さて、モノクロの世界観は相変わらず、迫力あります。

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ただ、前作からあまり進化はしていないなあという所感。退化はしてないが。

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ずばり、面白いです。ミッキーロークもキャラが強くてかっこいい。

フランクミラーの台詞が前作と同様、冴えてる。この語り口はハードボイルドでしびれる。

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だが、前作とほとんどテンションは変わらない。シナリオはよくできており、エヴァグリーンと、その護衛のキャラなど楽しめるが、やはり前作とキャラが変わっていることがガッカリ。

ドワイトがジョッシュブローリンっていうのもダメ。クライブオーウェンでしょ、やっぱ。

一番は、ミホがデヴォン青木ではないこと。中国人になっててがっかりです。いや、前作を見てなかったらよかったんだけど。彼女の出産まで待てなかったのなあ。

ギャンブルシーンなど、随所に前作匹敵する冴えた演出はあるが、、

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9年という時間はちょっとあまりにも遅すぎた。

たいして進歩してないから、前作が前編で、近作が後編ってかんじですね。

でも十分に映画としては面白いです。70点ですが、前作の2~3年後でかつキャストが同じなら、80点以上の映画でした。

kojiroh